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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

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 結局、寝る場所はジャンケンをして決めた。窓際の布団に桜季さん、真ん中が蓮さん、そして僕は無事、戸に一番近い布団を勝ち取ることが出来た。
 これで何度夜中にトイレに行っても迷惑にはならないだろう、と内心ほっと胸を撫で下ろした。
 桜季さんは不服だったようでジャンケンのリベンジを申し出たけれど、蓮さんにすげなく却下された。



 電気を消して布団に入ってからも、しばらく桜季さんは蓮さんをはさんで僕に話し掛けてきた。
 その度に「うるせぇ!」「さっさと寝ろ!」と、まるでバレーのブロッカーのように桜季さんの言葉を弾き返すのが面白くて、僕は悪いと思いつつも布団の中でこっそりと笑った。
 そんな賑やかな桜季さんだったけれど、眠りにつくのは一番だった。
 寝る寸前まで賑やかだったのに、眠った途端すぅすぅと可愛い寝息以外発さなくなった桜季さんに、本当に子どもみたいだなと微笑ましい気持ちになった。

「……やっと寝た」

 疲労を滲ませた溜め息を吐く蓮さんは、まるで子どもを寝かしつけ終えた母親のようだった。

「お疲れ様です」
「本当に疲れた……。あいつ、普段からうるさいけど、お前が来てさらにテンション上がって手に負えねぇ……」
「な、なんだかすみません……」

 全く僕を責めている風ではなかったけれど、それでも滲む疲労感に謝らずにはいられなかった。

「そういえば、蘭香からさっき無事帰り着いたって連絡があって、お前にお礼を言っておいてくれって」
「いえいえ、僕なんか何もお役に立ってませんから。それにしても蘭香ちゃんはやっぱり礼儀正しいですね」
「まぁな」

 妹を褒められて嬉しいようで誇らしげに蓮さんが笑った。
 本当に蘭香ちゃんが好きなんだなぁと微笑ましい気持ちになる。

「それでもしよければお前に直接お礼を伝えたいから連絡先教えてほしいって言ってるんだけど教えてもいいか?」
「え! いいんですか! ぜひお願いします!」

 普段、連絡先を交換するということが滅多にないので嬉しくなって何度も頷いて快諾すると、蓮さんが苦笑した。

「女子高生と連絡先交換するのがそんなに嬉しいのか」

 からかうように言われ、慌てて首を横に振った。

「違いますよっ、女子高生と連絡先交換するのが嬉しいんじゃなくて、蘭香ちゃんと、交換するのが嬉しいんですっ。だから決してやましい気持ちは……」
「分かってるよ。お前に下心がないことくらい」

 必死に言い募る僕に、蓮さんがふっと柔らかく笑った。

「ちなみに桜季の奴の連絡先も聞かれたけど即断った」
「そ、そんな、心配しすぎじゃ……」

 桜季さんは時々際どい冗談を言うけれど、未成年の女の子に、ましてや蓮さんの可愛い妹さんに手を出すとは思えない。
 けれど蓮さんは「あいつは関わるだけで教育に悪い」と苦々しく言った。それがまるで娘を大事にする父親のような口ぶりで思わず笑った。
 しばらくすると静かに笑いが引いていって、暗闇に沈黙だけが残った。自然な沈黙で気まずさもない。
 このままおやすみを告げて眠りに入ろうとした時、

「……あのさ」

 なだらかな眠りへの流れに逆らうように、どこか決意めいた語気の強さで蓮さんが沈黙を破った。
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