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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

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 僕の下着の話については、とりあえず今度三人の休みが重なった時に、ということで話は落ち着いた。
 
「それじゃあ寝よっかぁ」

 スウェットに着替えた桜季さんが小さく欠伸をしながら言った。

「そうですね、お腹もいっぱいになりましたし寝ましょうか。それにしてもこんな風に川の字で寝るなんてすごく久しぶりです」

 在りし日の修学旅行を思い出しながら、三つ並んだ布団を見下ろす。

「あはは~、おれもぉ。じゃあおれが真ん中で、右が青りんご、左がレンコンねぇ~」

 僕の背中を押して居間の戸側に敷かれた布団へ桜季さんが誘導すると、

「おいコラ待て」

 その肩を蓮さんが掴んで引き止める。

「なにぃ? あ、もしかしてレンコンも右がいいのぉ? そっかぁ、右端の方がトイレ近いもんねぇ。それなら仕方ない、レンコンと青りんご交代~」
「いや、そうじゃなくて! なんでお前が普通に真ん中なんだよ!」
「えぇ? レンコン、もしかして自分が真ん中がいいのぉ? 両手に花状態になりたいのぉ?」
「おっさんとパンク野郎しかいない空間でよくそんな言葉が出てくるな……」

 蓮さんが呆れたように言った言葉に僕も苦笑する。
 派手な見た目だけど綺麗な顔立ちをしている桜季さんはともかくとして、僕はどう頑張っても花と称するには無理がある。

「つーか、川の字で寝るんなら、こいつが真ん中だろ」
「え?」

 なぜか真ん中を指定された僕は首を傾げる。

「え~、なんで青りんごが真ん中ぁ? おれ好きなものを人とシェアするのいやなんだけどぉ」

 すかさず桜季さんが頬を膨らませて異を唱える。よほど真ん中が好きらしい。
 僕としても、夜中に起きてトイレに行くことが多いので、できれば真ん中は遠慮したいところだ。

「誰がこんなおっさんシェアするか。川の字に寝るなんだろ? じゃあ背の低いこいつが真ん中だろ」
「え?」

 真顔でもって断言する蓮さんのよく分からない理屈に、桜季さんと僕は思わずきょとんとなった。

「えっとぉ、レンコンそれどういう意味~?」
「だから、川の字だろ? 川の字の真ん中は一番短いから、三人の中で一番背の低いヤツじゃないと川の字にならないだろ」

 空に川の字を指で書きながらそう言う蓮さんの顔は、至極真面目で冗談を言っている風ではなかった。

「レンコンそれマジで言ってるのぉ?」
「あぁ? マジもなにもお前らが川の字って言いだし……もしかしてカワってサンズイの方の河なのか?」

 少し不安げな真顔で聞き返してきた蓮さんに、桜季さんがついに噴き出した。

「はははは! うそでしょ、レンコン! 何その天然発言! マジでウケる~! てかさぁ、そしたら左端の人、めっちゃ反らないといけないじゃん、かわいそぉ」

 お腹を抱えて爆笑する桜季さんにつられて僕も笑ってしまった。

「わっ、笑うなっ!」

 蓮さんが顔を真っ赤にして恥ずかしさを誤魔化すように声を荒げる。けれどどうしても笑いが止まらなかった。
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