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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

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 蓮さんの言葉にハッとする。
 そうだ、これは言ってはいけない類いの話だ。蓮さんを励まそうと、高校時代あまり勉強をしていなかったテツ君もオーナーになれたのだから、今から勉強すれば大丈夫だと伝えたかっただけなのだけれど、テツ君からしたら名誉毀損みたいなものだ。
  
「ど、どうしよう……っ」

 わたわたと慌てる僕を見て、蓮さんが喉の奥で堪えるようにして笑った。

「別に誰にも言わねぇよ」
「あ、ありがとうございます……! ぜひここだけの話ということで……!」
「なになにぃ? ナイショ話~?」
「うわっ!」

 気配なく突然桜季さんが現れて、背後から僕らの間に入ってきたので、思わず間抜けな悲鳴を上げてしまった。

「び、びっくりした……。さ、桜季さん、テレビは終わったんですか?」
「まだやってるよぉ。でもCMだからトイレに来たんだよぉ。ところでここだけの話ってなにぃ?」

 話題をさり気なく逸らしたのに、すぐに話を戻されてしまった。
 目をキラキラと輝かせる桜季さんに気圧される。でも桜季さんに言ったが最後、絶対に言いふらされてしまう……!

「な、なんでもありませんよ! 大したことじゃないですっ」
「えぇ~、大したことないならおれにも教えてよぉ」

 グイと顔を近づけて笑顔で詰め寄ってくる桜季さんに、僕はさらに慌てた。

「あ、えっと、やっぱり大したことあります! なので教えられませんっ」
「あ~、青りんごがおれに嘘吐くなんてショック~。……嘘つきにはお仕置きだよぉ」
「へ?」

 にやりと、なんだか嫌な予感を胸によぎらせる笑みを浮かべると、桜季さんは僕の肩に腕を回した。そしてそのまま後頭部を手で掴ん固定すると、そのまま唇を近づけてきて……――。

「いつまでもホモ設定続けんな」

 蓮さんが泡だらけのスポンジを持った手で桜季さんの頭頂部にゴン、とげんこつを下した。

「痛ぁ! だから暴力反対だってばぁ! というか頭に泡つけないでよぉ」

 桜季さんが唇を尖らせて蓮さんの方を振り返った。

「自業自得だろ。頭洗って来いよ、シャワー貸してやるから。ついでに頭冷やせ」
「もぉ、レンコンのお邪魔虫ぃ」

 頬を膨らませてそう言うと、桜季さんは浴室に向かった。
 視線で桜季さんの背中を見送りながら溜め息を吐くと、蓮さんは目の端を吊り上げて俺に向き直った。

「お前さ、前にも言ったけどもっと警戒心持てよ。あいつお前のことかなり気に入ってるからボケッとしてるとマジでケツ掘られるぞ」
「ケ、ケツですか……」

 言葉のインパクトに思わず自分のお尻を手で撫でた。忠告めいた厳しい声だけれど、いまいちピンとこない。
 首を傾げながら自分のお尻を撫でさする僕に、蓮さんはもどかしそうに舌打ちをした。

「とりあえず、絶対あいつと二人っきりになるな。分かったな?」
「え……、同じ職場でそれは難しいんじゃ……」
「返事は?」
「は、はい……」

 有無を言わせない鋭い目で睨まれ、僕ははいとしか答えようがなかった……。
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