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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

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「すごいですね。収入があってもそういう風に考えられて。僕なんか給料が入っただけでついつい財布の紐が緩んじゃいますもん」

 この間の給料日に、普段は買わない映画のパンフレットをつい買ってしまったことを思い出して苦笑しながら言った。

「ホストは稼げる期間が短いからな。年金ももらえるか分からねぇのに無駄遣いできねぇよ」
「もう老後のことまで考えてるんですね……!」

 僕は感心した。自分が蓮君くらいの時に老後のことを真面目に考えたことなんてあっただろうか……。
 正直、今でも老後についてはぼんやりとしか考えてない。

「しっかりしてますね。僕なんて来月くらいまでのことしか考えられてないですよ」
「お前、三十五だろ……。しっかりしろよ」
「うっ……、す、すみません」

 呆れたように言われ言葉を詰まらせると、蓮さんがフッと笑った。

「でもお前はなんやかんや言ってどうにかなりそうだな」
「そうですか? むしろ僕なんかより蓮さんの方がどうとでもなりそうですよ。ホストを引退してもテツ君みたいにオーナーになる道だってありますし」

 人気ホストは引退後、現役時代に得たお金を元手に独立することが多いらしい。
 ナンバーワンホストの座にあぐらをかかず、こうしてシビアに物事を考えられる蓮さんなら経営側にまわってもやっていけるんじゃないだろうかと思った。
 けれど、蓮さんは首を横に振った。

「俺には無理だ。経営は頭良くないとできねぇし。俺、高校もろくに行ってねぇから」

 自嘲気味に言う蓮さんの口元に、凛太郎さんの暴言を聞き流す諦めきった表情が微かに見えた。
 それを吹き飛ばしたくて、少しいつもより大きな声が出た。

「大丈夫ですよ! テツ君と同じ高校でしたけど、テツ君よく授業をサボって、映画同好会の部屋でよく寝てましたし。いつも追試で晴仁と僕で追試対策をよく一緒にしてました」

 教科書を見ながら険しい表情をしていたテツ君を思い出してくすりと笑った。
 テツ君は晴仁のことはなぜかあまり好いていなかったようで、晴仁に解説されると「うるせぇ! 分かってる!」とよく怒鳴っていた。
 でも本当に分からないと僕に訊いてきた。もちろん僕も分からないので、晴仁に僕が聞いてそれをテツ君に教えるという、謎の段階を踏んでいた。

「あ、追試対策と言っても主に教えてたのは晴仁で、僕も一緒に教えてもらってました」
「ふぅん。まぁ確かにお前、教えるの下手そうだもんな」
「あはは、そうですね、教えるのが下手ということもありますけど、そもそも問題を理解していませんでした」
「……その追試対策、お前いる意味ある?」
「あはは、確かに。でもまぁ仲介役としてはたぶん必要だったと思います」
「なんだそれ。というか、そんなことバラしてもいいのか。オーナーに怒られるんじゃねぇの?」
「あ!」
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