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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

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「レンコンこわい~。普通に恋人に料理作ってあげるかどうかの話してただけじゃん~。レンコンは作ってあげる派~? ……って、作ってあげられるわけないかぁ」

 大袈裟に肩を竦める桜季さんに、蓮さんの眉間の皺を深めた。
「なんだよその小馬鹿にした言い方は」
「言葉の通りだよぉ。あのもやしだけの冷蔵庫じゃ何も作ってあげられないよねぇ」

 確かに……、と僕は思わず心の中で同感した。
 桜季さんがご飯を作ろうといざ冷蔵庫を開けた時、冷蔵庫の中にはもやしと水しか入っていなかったのだ。
 それで桜季さんが買い足しに出たのだけれど、冷蔵庫を見た時の桜季さんの「またか」といった呆れた表情から、どうやらいつも冷蔵庫の中はあんな感じのようだ。

「レンコンさぁ、いつも言ってるけどもやしだけじゃ栄養たりないよぉ。いつか倒れちゃうよぉ」
「……もやしだけじゃねぇし。水もあるし」

 桜季さんに正論で諭されるのが気に入らないのか、連さんは目を逸らしてボソボソと苦し紛れの反論を口にした。
 桜季さんが大きく溜め息を吐いた。

「水も大事だけど栄養とはまた別問題だからねぇ」
「うるせぇな、お前は俺の母親か」
「これだけ食に無頓着だとない母性も出てくるよぉ」

 肩を竦める桜季さんからは、いつもの茶化す感じはない。料理を趣味と特技と豪語する桜季さんからしたらほっとけないのだろう。
 なんだかんだ言いつつ仲の良い二人に頬が緩む。

「桜季さんがよく料理作りにくるんですか」
「よくってほどじゃないけど遊びに来たときはねぇ。あとは作りすぎたご飯おすそ分けしたりぃ」
「桜季さんって面倒見がいいですよね」

 僕は感心して言った。店でも僕のフォローをしてくれるし、連さんに対してもからかいながらもこうして世話を焼いているし、意外とお兄さんタイプなのかもしれない。

「もしかして桜季さんも妹さんか弟さんがいるんですか」
「いないよぉ。姉貴がひとりだけぇ」
「へぇ、お姉さんがいるんですね」

 意外に思いつつも、だから相手の些細な表情の変化などにも気がつくのかもしれないとも思った。

「きっと桜季さんのお姉さんだから美人なんでしょうね」
「まぁ美人だけど気が強いし肝が据わって中身はおれより男前だよぉ。おれが舌をこれにした時も『蛇じゃん!』って腹抱えて笑ってたしねぇ」

 そう言ってぺろりと二つに割れた舌先を出した。

 確かにこの舌を見て開口一番にそう言って笑えるのは男前かも……。

 僕だったら弟がこんな舌にして帰ってきたらおろおろと慌てふためくに違いない。

「青りんごはブラコンのお兄さんかしっかりした弟がいそうだよねぇ」
「えぇっ! よく分かりましたね」

 ブラコンではないけれど、兄と弟がいることを当てられ驚く。

「ブラコンではないですけど、しっかり者の兄と弟がいます」
「やっぱりぃ。みんな顔は似てるのぉ? 似てたら囲まれてみたいなぁ。青りんごハーレムじゃん~」

 ふふふ~、と組んだ手に顎を乗せて楽しげに笑う桜季さん。
 僕のハーレム……。全くもってときめきも色気もないハーレムだ、と苦笑する。
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