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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

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「ご馳走様でした!」

 桜季さんが作ってくれたご飯を平らげて、僕は両手を合わせて言った。

「桜季さんはやっぱり料理が上手ですね。すごくおいしかったです」

 お店でもおいしい料理を食べさせて貰っているけれど、今日の料理は鶏肉の味噌炒めや小松の和え物など家庭的なもので、それもまたお店のものとは違った温かみのあるおいしさがあった。
 料理の腕に感心して言うと、桜季さんは得意げに笑った。

「ふふふ~、料理はおれの趣味で特技だからねぇ」
「すごいですね。桜季さんと付き合う人はきっと毎日おいしいものが食べれるんでしょうね。あ、でも仕事で料理するから家では作りたくないってよく言いますよね」

 前に、コックや板前の人は家では包丁にも触れない、と聞いたことがある。家でくらい人が作ったものが食べたい、ということだった。

「そういう人もいるけどぉ、おれは好きな人のためなら作ってあげたいなぁ」

 和え物の最後の一口を口に運んで桜季さんが言った。

「優しいですね。桜季さんの彼女さんは幸せでしょうね」
「その代わり他のところで頑張ってもらうけどねぇ」

 意味ありげに言うので僕は首を傾げた。

「他のところ……ああ! 皿洗いとかしてもらうんですね。家事分担してるとお互いに不満が溜まらなそうでよさそうですね」
「そうそう~、おれが溜まらないように頑張ってもらうのぉ」
「おい」

 桜季さんと僕のとりとめのない会話に、なぜか連さんが顔を顰めて割り入ってきた。
 桜季さんは唇を尖らせて連さんの方に向いた。

「なぁにぃ? 青りんごと楽しくおしゃべりしてるところにそんなこわい声で割り込まないでよぉ。あ~、もしかしてレンコン自分だけのけ者にされて僻んでるんでしょ~」
「違うっ。お前の、下ネタの意味を分かってない女の反応を楽しむセクハラ親父みたいなそのにやけ面が不快なんだよ! 今すぐやめろ!」
「ちょっとぉ、人の顔に失礼じゃない~? おれは元々こんな顔だし~。というか今の会話のどこに下ネタがあったぁ? 青りんご分かるぅ?」
「あ、いえ、僕は分かりませんでした。でも不快にさせてしまったなら、すみません」

 桜季さんとの会話を振り返っても下ネタとおぼしきものは思い当たらなかったけれど、もしかすると僕が知らないだけで不快なことを言ったのかもしれない。

「ほらぁ、青りんごもこう言ってるよぉ。あ、レンコンってあれでしょ~? バナナ見ただけで卑猥なこと考える人でしょ~」
「考えるか!」

 ガン、っとテーブルの下で蓮さんが桜季さんの足を蹴った。

「ちょっとぉ、暴力反対~!」
「うるせぇ、テメェが変なこと言うからだろうがっ。あとお前」

 目尻を吊り上げたまま連さんがこちらに向いた。僕は思わず姿勢を正した。

「は、はいっ!」
「お前もセクハラを受けてへらへらしてんじゃねぇよ。そういう態度がこいつを調子に乗らせるんだよ」
「え、あ、はい、すみません……。でも、セクハラなんて……」
「あぁっ?」
「あ、いえ、なんでもないです……」

 反射的に謝ってしまったけれど、別にセクハラなんて受けていない。ただ事実を伝えようとしただけなのに、低い声と鋭い睨みに言葉は封じ込められてしまった。
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