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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?
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「な、何言ってるんだ、蘭香?」
動揺する蓮さんを無視して、蘭香ちゃんは僕の目を真っ直ぐ見てさらに畳み掛けてきた。
「さっきお兄様を懸命に庇う姿を見て、私、思ったんです。お兄様には青葉さんのような人が必要だと」
うっとりと目を細めてそう言うと、蘭香ちゃんは力強く僕の手をとった。
「ですからお願いしますっ。ぜひフリーになった暁にはぜひ蓮太郎兄様と……!」
「ら、蘭香ちゃん?」
冗談にしか思えない内容だけど、キラキラと目を輝かせて迫り来る蘭香ちゃんは真剣そのものだった。
色々と誤解が絡まってとんでもないことになっている……!
どの誤解から解いていこうかと頭を悩ませていると、背後から腕が伸びてきて僕たちを引き剥がした。
「ちょっとぉ、失礼なこといわないでよぉ。おれと青りんごはラブラブなんだからそう簡単に別れたりしないよぉ」
頬を膨らませて、まるでオモチャをとられないようにする子供のように桜季さんは僕をぎゅっと抱きしめた。
桜季さんの言葉に少し怯んだ蘭香ちゃんだったけれど、蓮さんの方を向くと両手で握りこぶしを胸の前で作った。
「お兄様、ライバルは手強いようですが、ファイトです!」
「いやっ、蘭香、お前ものすごい勘違いを……」
「大丈夫です! 私、そういうことに偏見はありませんから!」
笑顔でそう言うと蘭香ちゃんは僕に最後一礼してから部屋を出て行った。
すると葉山さんまでもが「私も応援しています! ファイトです!」と言い残して、蘭香ちゃんの後を追って行ってしまった。
蓮さんはしばらく頭を抱えていたが、顔を上げるとキッと桜季さんを睨み付けた。
「どうしてくれるんだ! お前の変な設定のせいでとんでもない誤解されてしまったじゃねぇか!」
「えぇ~、おれのせい~?」
「お前のせいでしかないだろ!」
蓮さんがこめかみに青筋を立てて怒鳴っていると、
「……お前の性的指向には興味もないし、口出しするつもりはないが、蘭香を巻き込むなよ」
靴下を履き替えたらしい凛太郎さんが靴を履きながら忠告めいた口調で割り入ってきた。
「俺にそんな指向はない」
不愉快そうに顔を顰めて吐き捨てるように蓮さんが答えると、凛太郎さんは鼻で笑った。
「そうだな、あの男と一緒で女好きだからな。……だが、それでも蘭香はお前を好いている。お前を兄として慕っている。それについても俺は口出しするつもりはない。蘭香がまたここに来たいと言えば黙認する。だがな……」
念押しするような強い口調で言って、冷たい目を蓮さんに向けた。
「お前が藤ヶ谷に来ることは許さない。たとえ蘭香がお前も招いたとしてもだ。お前がいると家の空気が悪くなる。……お前はあの家にいらない存在なんだよ」
淡々と告げた凛太郎さんの声は、ただ事実を述べただけという風な侮蔑すら含まれない冷たいものだった。
その言い方に部外者である僕でさえ、胸の底が嫌な感じにざわついた。
なのに蓮さんはやっぱり何も感じていないように無表情だった。
聞き慣れた小言にうんざりするような軽さで蓮さんは溜め息を吐いた。
「……分かってる。あの家には近づかねぇよ。金を積まれたって行くもんか」
「分かっていればいい。あと、これは捨てておいてくれ。こんな汚いもの家に持ち帰りたくないからな」
凛太郎さんはそう言うと、脱いだ靴下が入ったビニール袋を台所のごみ箱に向けて放り投げた。しかし、ごみ箱の縁に当たってビニール袋は床に転がった。
凛太郎さんは小さく舌打ちすると「あとで入れておいてくれ」とだけ言って部屋を出て行った。
動揺する蓮さんを無視して、蘭香ちゃんは僕の目を真っ直ぐ見てさらに畳み掛けてきた。
「さっきお兄様を懸命に庇う姿を見て、私、思ったんです。お兄様には青葉さんのような人が必要だと」
うっとりと目を細めてそう言うと、蘭香ちゃんは力強く僕の手をとった。
「ですからお願いしますっ。ぜひフリーになった暁にはぜひ蓮太郎兄様と……!」
「ら、蘭香ちゃん?」
冗談にしか思えない内容だけど、キラキラと目を輝かせて迫り来る蘭香ちゃんは真剣そのものだった。
色々と誤解が絡まってとんでもないことになっている……!
どの誤解から解いていこうかと頭を悩ませていると、背後から腕が伸びてきて僕たちを引き剥がした。
「ちょっとぉ、失礼なこといわないでよぉ。おれと青りんごはラブラブなんだからそう簡単に別れたりしないよぉ」
頬を膨らませて、まるでオモチャをとられないようにする子供のように桜季さんは僕をぎゅっと抱きしめた。
桜季さんの言葉に少し怯んだ蘭香ちゃんだったけれど、蓮さんの方を向くと両手で握りこぶしを胸の前で作った。
「お兄様、ライバルは手強いようですが、ファイトです!」
「いやっ、蘭香、お前ものすごい勘違いを……」
「大丈夫です! 私、そういうことに偏見はありませんから!」
笑顔でそう言うと蘭香ちゃんは僕に最後一礼してから部屋を出て行った。
すると葉山さんまでもが「私も応援しています! ファイトです!」と言い残して、蘭香ちゃんの後を追って行ってしまった。
蓮さんはしばらく頭を抱えていたが、顔を上げるとキッと桜季さんを睨み付けた。
「どうしてくれるんだ! お前の変な設定のせいでとんでもない誤解されてしまったじゃねぇか!」
「えぇ~、おれのせい~?」
「お前のせいでしかないだろ!」
蓮さんがこめかみに青筋を立てて怒鳴っていると、
「……お前の性的指向には興味もないし、口出しするつもりはないが、蘭香を巻き込むなよ」
靴下を履き替えたらしい凛太郎さんが靴を履きながら忠告めいた口調で割り入ってきた。
「俺にそんな指向はない」
不愉快そうに顔を顰めて吐き捨てるように蓮さんが答えると、凛太郎さんは鼻で笑った。
「そうだな、あの男と一緒で女好きだからな。……だが、それでも蘭香はお前を好いている。お前を兄として慕っている。それについても俺は口出しするつもりはない。蘭香がまたここに来たいと言えば黙認する。だがな……」
念押しするような強い口調で言って、冷たい目を蓮さんに向けた。
「お前が藤ヶ谷に来ることは許さない。たとえ蘭香がお前も招いたとしてもだ。お前がいると家の空気が悪くなる。……お前はあの家にいらない存在なんだよ」
淡々と告げた凛太郎さんの声は、ただ事実を述べただけという風な侮蔑すら含まれない冷たいものだった。
その言い方に部外者である僕でさえ、胸の底が嫌な感じにざわついた。
なのに蓮さんはやっぱり何も感じていないように無表情だった。
聞き慣れた小言にうんざりするような軽さで蓮さんは溜め息を吐いた。
「……分かってる。あの家には近づかねぇよ。金を積まれたって行くもんか」
「分かっていればいい。あと、これは捨てておいてくれ。こんな汚いもの家に持ち帰りたくないからな」
凛太郎さんはそう言うと、脱いだ靴下が入ったビニール袋を台所のごみ箱に向けて放り投げた。しかし、ごみ箱の縁に当たってビニール袋は床に転がった。
凛太郎さんは小さく舌打ちすると「あとで入れておいてくれ」とだけ言って部屋を出て行った。
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