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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?
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「さて立ち話もなんですから中に入ってゆっくりお話を……」
「部屋にも上がってもいないお前が言う台詞じゃないだろっ」
「はははっ! そうですね! では帰りますか!」
葉山さんがそう言うと、蘭香ちゃんの顔が少しだけ曇った。その表情から察したのか、葉山さんはにっこりと笑いかけた。
「大丈夫ですよ! この距離なら今度は私が運転して連れてきてあげますから!」
目を瞑ってウィンクらしきものをして葉山さんが言った。
「葉山さん……っ」
なんて男前なフォローなんだ……!
葉山さんの気遣いに蘭香ちゃんはもちろん、僕も感激した。
「おい、葉山」
眉根を寄せてたしなめるように凛太郎さんが葉山さんを呼んだ。
「はい! 何でしょう! あ! 凛太郎様もその時はご一緒にどうぞ! 一人も二人もかわりませんからね!」
明らかに凛太郎さんの言いたいこととはズレた返答に凛太郎さんはこめかみを引き攣らせたけれど、次には諦めたように溜め息を吐いた。
「……俺はいい。だが絶対に安全運転で行けよ」
「ご安心ください! ゴールド免許ですので!」
得意げに言って胸を張る葉山さんを凛太郎さんは胡乱な目で見たけれど特に何も言わず、靴下が入ったビニール袋を受け取って中を見た。
「蘭香の分がないが」
「いやぁ、コンビニには男物しかなくて! どうもすみません!」
「私はいりません。蓮太郎兄様のお部屋キレイですから」
そう言ってそのまま靴に履き替える蘭香ちゃんに、凛太郎さんはあからさまに嫌そうに眉を顰めた。
足元に注がれる視線を無視して、蘭香ちゃんは蓮さんに向き直った。
「お兄様、色々とご迷惑をお掛けしてごめんなさい。慌ただしく帰ることになりましたけど、今度はゆっくり遊びに来ますね。……その時に本当のお仕事のお話、聞かせてくださいね」
悪戯っぽく笑って言われ、蓮さんは決まりが悪そうに頭を掻きながら「……分かった」と小さな声で答えた。
その返事に満足そうに微笑んだ後、蘭香ちゃんは僕の方を向いた。
「青葉さん」
「え、なに?」
「青葉さんに折り入ってお願いがあるんですけど……」
そう言うと、蘭香ちゃんは言葉を切ってなぜか続きを言い淀んだ。
首を傾げる僕をちらりと窺い見てから、蘭香ちゃんが口を開いた。
「本当に失礼な話なんですけど、もしも、もしもですよ」
「う、うん」
失礼なことは重々承知だけれど言わずにはいられないと言った真剣さを感じて、僕は思わず身構えた。
「……もし桜季さんと別れることがあったら、ぜひ蓮太郎兄様を次の恋人候補にしてくださいっ」
「え?」
思いも寄らない言葉に僕は目を丸くした。しかしそれは僕だけでなかった。
「部屋にも上がってもいないお前が言う台詞じゃないだろっ」
「はははっ! そうですね! では帰りますか!」
葉山さんがそう言うと、蘭香ちゃんの顔が少しだけ曇った。その表情から察したのか、葉山さんはにっこりと笑いかけた。
「大丈夫ですよ! この距離なら今度は私が運転して連れてきてあげますから!」
目を瞑ってウィンクらしきものをして葉山さんが言った。
「葉山さん……っ」
なんて男前なフォローなんだ……!
葉山さんの気遣いに蘭香ちゃんはもちろん、僕も感激した。
「おい、葉山」
眉根を寄せてたしなめるように凛太郎さんが葉山さんを呼んだ。
「はい! 何でしょう! あ! 凛太郎様もその時はご一緒にどうぞ! 一人も二人もかわりませんからね!」
明らかに凛太郎さんの言いたいこととはズレた返答に凛太郎さんはこめかみを引き攣らせたけれど、次には諦めたように溜め息を吐いた。
「……俺はいい。だが絶対に安全運転で行けよ」
「ご安心ください! ゴールド免許ですので!」
得意げに言って胸を張る葉山さんを凛太郎さんは胡乱な目で見たけれど特に何も言わず、靴下が入ったビニール袋を受け取って中を見た。
「蘭香の分がないが」
「いやぁ、コンビニには男物しかなくて! どうもすみません!」
「私はいりません。蓮太郎兄様のお部屋キレイですから」
そう言ってそのまま靴に履き替える蘭香ちゃんに、凛太郎さんはあからさまに嫌そうに眉を顰めた。
足元に注がれる視線を無視して、蘭香ちゃんは蓮さんに向き直った。
「お兄様、色々とご迷惑をお掛けしてごめんなさい。慌ただしく帰ることになりましたけど、今度はゆっくり遊びに来ますね。……その時に本当のお仕事のお話、聞かせてくださいね」
悪戯っぽく笑って言われ、蓮さんは決まりが悪そうに頭を掻きながら「……分かった」と小さな声で答えた。
その返事に満足そうに微笑んだ後、蘭香ちゃんは僕の方を向いた。
「青葉さん」
「え、なに?」
「青葉さんに折り入ってお願いがあるんですけど……」
そう言うと、蘭香ちゃんは言葉を切ってなぜか続きを言い淀んだ。
首を傾げる僕をちらりと窺い見てから、蘭香ちゃんが口を開いた。
「本当に失礼な話なんですけど、もしも、もしもですよ」
「う、うん」
失礼なことは重々承知だけれど言わずにはいられないと言った真剣さを感じて、僕は思わず身構えた。
「……もし桜季さんと別れることがあったら、ぜひ蓮太郎兄様を次の恋人候補にしてくださいっ」
「え?」
思いも寄らない言葉に僕は目を丸くした。しかしそれは僕だけでなかった。
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