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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?
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しおりを挟むえ? え? えぇ!?
こんなに人の顔が近づくことなんて滅多にないので慌てふためいた。その間にも唇が近づいてきて……。
「人の家でイチャつくんじゃねぇ」
「うわっ」
体を桜季さんとは反対側から引かれて僕はバランスを崩してよろめいた。
引っ張られた方を見ると、眉間に皺を寄せた蓮さんが立っていた。
「ちょっとぉ、邪魔しないでよぉ」
唇を尖らせて桜季さんが蓮さんに抗議する。
「うるせぇ。人の家でいつまでもホモごっこ続けてんじゃねぇよ」
「ひど~い! おれたちせっかくレンコンの嘘に合わせてあげようと協力したのにぃ」
「嘘吐け。お前は単に面白がってただけだろ」
「あはは~、まぁその通りだけどさぁ。面白くなきゃこんな面倒ごとに首突っ込まないよぉ」
悪びれる様子なく笑う桜季さんに、蓮さんのこめかみがひくついた。
「テメェ……っ」
蓮さんが何か言い返そうとした時、それを遮るように玄関のドアチャイムが鳴った。
蓮さんは舌打ちして玄関のドアを開けた。
「蓮太郎様! お久しぶりです!」
ドアの向こうには蓮さんの頭ひとつ分は背が高い男が立っていた。
思わず圧倒される快活な声と笑みに蓮さんが少したじろいでいた。
「あ、ああ、久しぶりだな、葉山」
「お元気そうでなによりです! お部屋もきれいに片付けられてますねぇ! いやぁ、感心感心!」
葉山さんはにこにこと笑顔で部屋を見回した。
「凛太郎様に替えの靴下をと頼まれたので買ってきたのでどんな汚部屋かと思えば、全然汚くないではありませんか! 私の家の方がよっぽど汚いですよ! あはははは!」
豪快に笑う葉山さんの手には確かにビニール袋がぶら下がっていて、中から靴下らしきものがのぞいている。
「凛太郎様ー! 靴下買って参りましたー!」
「葉山、うるさい! 聞こえてるっ」
凛太郎さんが顔を顰めて部屋の奥から出て来た。その後ろからついてきた蘭香ちゃんを見て葉山さんは破顔した。
「はははっ! やはり蓮太郎様のお宅にいらしていたのですね! いやぁ、仲の良いことで!」
「葉山さん、すみません。ご迷惑をお掛けしてしまって……」
蘭香ちゃんがしおらしく頭を下げた。
「気になさらないでください! あんな息苦しいほど豪華なホテルにいるより車でドライブの方が性に合っていますから! 正直、あそこから抜け出せてラッキーくらいに思ってますよ!」
「おい」
「はははっ! これは失礼!」
冷たい声と目で咎められても葉山さんは少しも気にした風はなく、快活な笑いでもって受け流した。
す、すごいメンタルの人だ……!
僕だったら萎縮しているに違いない。すごい人だなぁ、と心の中で密かに尊敬する。
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