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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?
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「大好きなお兄様たちだからこそ、私は二人にケンカはして欲しくないんです。二人にはもっと仲良くなって欲しいです」
「蘭香……」
さっきまで顔を険しくしていたのが嘘のように凛太郎さんの目元が和らいだ。
しかし、
「それは無理な話だ」
いい空気を壊すようにすげなく凛太郎さんは首を横に振った。
「ちょ、お兄様! 今この流れでよくその言葉が出て来ましたね!」
「無理なものは無理だ! お前だって嫌いなイクラを今日から美味しく食べろと言われても無理だろ!」
「イクラと蓮太郎兄様を一緒にしないでくださいっ。蓮太郎兄様に失礼です!」
「俺からしたらイクラに失礼なくらいだ!」
少し論点がズレてきた内容で言い合いになっている二人を呆然と見ていると、いつのまにか桜季さんが僕の背後に立っていて、肩に顎を乗せてきた。
「まったく兄妹ケンカにおれたちを巻き込まないで欲しいよねぇ」
やれやれと言った感じで小さく溜め息を漏らす桜季さんに、僕は小さく笑った。
「桜季さんはすごいですね」
「えぇ~、なにがぁ?」
不思議そうに首をこてんと傾げる。
「だって凛太郎さんの本当の気持ちを察して蘭香ちゃんと凛太郎さんを仲直りさせたじゃないですか」
「あれって仲直りしてるのかなぁ?」
イクラと蓮さんのことで言い争っている二人を見て僕は苦笑した。
「確かに仲直りとは違うかもしれないですけど、でも誤解は解けたと思います。僕なんか凛太郎さんの気持ちを察する余裕なんてなくて、ただ自分の気持ちを伝えることで頭がいっぱいで……」
僕は恥ずかしくなって頭を掻いた。
いつもそうだ。表面上のことしか見えず、根底にある問題に気づかない。確か会社勤めの時もそのことで叱られたなぁ……と苦い記憶を思い返していると、
「……おれは青りんごの方がすごいと思うけどなぁ」
「え?」
ぽつりと呟かれて僕は桜季さんの方を見た。すぐ真横にある桜季さんの目が優しくしなった。
「だってさっきもレンコンのすごいところを分かってもらおうとがんばって言葉を尽くしてたでしょぉ? おれは絶対そんなことしないもん。面倒だしぃ、そもそも人のことなんてどうでもいいしぃ」
「え、でも、助け船を出してくれたじゃないですか」
少し冷淡さを含んだ桜季さんの言葉に戸惑いつつ言葉を返すと、くすりと笑われた。
「それは青りんごががんばってたからだよぉ。正直青りんごがいなかったらおれずっと黙ってお菓子の塔をずっと積み上げてたよぉ。いかにも話が通じないプライドの高い奴の相手だなんて金を貰ってもしたくないもん~」
凛太郎さんを見ながらケラケラとひとしきり笑うと「ねぇ、青りんご」と呼び掛けてゆっくりとこちらを向いた。
「どんなにこっちが正しくても、誠意を尽くしても、伝わらない奴ってたくさんいるじゃん。というか世の中そんな奴ばっか。はっきり言ってそんな奴にどんだけ話しても無駄だし、労力の無駄」
いつものように語尾を伸ばさず、淡々と畳み掛けるように言われ僕は戸惑い言葉に詰まった。
そんな僕を見てくすりと笑った。
「なのに青りんごは諦めないんだよねぇ。……おれはさぁ、青りんごのそういうところすごいなと思うし、好きだよ」
「え」
いつもの犬猫に言うような軽いテンションではなく、どこか真面目な声音でそう告げられ目を丸くしていると、
「ふふ、本当に可愛いなぁ」
気づけば笑う吐息が唇をかすめるほど近くに桜季さんの顔が迫っていた。
「蘭香……」
さっきまで顔を険しくしていたのが嘘のように凛太郎さんの目元が和らいだ。
しかし、
「それは無理な話だ」
いい空気を壊すようにすげなく凛太郎さんは首を横に振った。
「ちょ、お兄様! 今この流れでよくその言葉が出て来ましたね!」
「無理なものは無理だ! お前だって嫌いなイクラを今日から美味しく食べろと言われても無理だろ!」
「イクラと蓮太郎兄様を一緒にしないでくださいっ。蓮太郎兄様に失礼です!」
「俺からしたらイクラに失礼なくらいだ!」
少し論点がズレてきた内容で言い合いになっている二人を呆然と見ていると、いつのまにか桜季さんが僕の背後に立っていて、肩に顎を乗せてきた。
「まったく兄妹ケンカにおれたちを巻き込まないで欲しいよねぇ」
やれやれと言った感じで小さく溜め息を漏らす桜季さんに、僕は小さく笑った。
「桜季さんはすごいですね」
「えぇ~、なにがぁ?」
不思議そうに首をこてんと傾げる。
「だって凛太郎さんの本当の気持ちを察して蘭香ちゃんと凛太郎さんを仲直りさせたじゃないですか」
「あれって仲直りしてるのかなぁ?」
イクラと蓮さんのことで言い争っている二人を見て僕は苦笑した。
「確かに仲直りとは違うかもしれないですけど、でも誤解は解けたと思います。僕なんか凛太郎さんの気持ちを察する余裕なんてなくて、ただ自分の気持ちを伝えることで頭がいっぱいで……」
僕は恥ずかしくなって頭を掻いた。
いつもそうだ。表面上のことしか見えず、根底にある問題に気づかない。確か会社勤めの時もそのことで叱られたなぁ……と苦い記憶を思い返していると、
「……おれは青りんごの方がすごいと思うけどなぁ」
「え?」
ぽつりと呟かれて僕は桜季さんの方を見た。すぐ真横にある桜季さんの目が優しくしなった。
「だってさっきもレンコンのすごいところを分かってもらおうとがんばって言葉を尽くしてたでしょぉ? おれは絶対そんなことしないもん。面倒だしぃ、そもそも人のことなんてどうでもいいしぃ」
「え、でも、助け船を出してくれたじゃないですか」
少し冷淡さを含んだ桜季さんの言葉に戸惑いつつ言葉を返すと、くすりと笑われた。
「それは青りんごががんばってたからだよぉ。正直青りんごがいなかったらおれずっと黙ってお菓子の塔をずっと積み上げてたよぉ。いかにも話が通じないプライドの高い奴の相手だなんて金を貰ってもしたくないもん~」
凛太郎さんを見ながらケラケラとひとしきり笑うと「ねぇ、青りんご」と呼び掛けてゆっくりとこちらを向いた。
「どんなにこっちが正しくても、誠意を尽くしても、伝わらない奴ってたくさんいるじゃん。というか世の中そんな奴ばっか。はっきり言ってそんな奴にどんだけ話しても無駄だし、労力の無駄」
いつものように語尾を伸ばさず、淡々と畳み掛けるように言われ僕は戸惑い言葉に詰まった。
そんな僕を見てくすりと笑った。
「なのに青りんごは諦めないんだよねぇ。……おれはさぁ、青りんごのそういうところすごいなと思うし、好きだよ」
「え」
いつもの犬猫に言うような軽いテンションではなく、どこか真面目な声音でそう告げられ目を丸くしていると、
「ふふ、本当に可愛いなぁ」
気づけば笑う吐息が唇をかすめるほど近くに桜季さんの顔が迫っていた。
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