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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

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「蓮さんは自分のプライドとか見栄のために嘘をついたわけじゃありません。お兄さん想いの蘭香ちゃんに心配をかけさせまいと僕なんかに上司役を頼んでまで嘘をついたんです」

 蘭香ちゃんを安心させるためとはいえ、僕のような下っ端を頼るのはきっと嫌だったに違いない。それでも蘭香ちゃんを安心させることを優先した。

「……蓮さんは紛れもなく妹想いの優しいお兄さんです」

 言葉は凛太郎さんに向けつつ、目は真っ直ぐ蘭香ちゃんを見た。
 すると蘭香ちゃんは丸くした目をゆっくりと細めて微笑みを浮かべた。
 そして、蓮さんの前に歩み出ると、大きく肩で息を吐いた。

「まったく。そんな手の込んだ気遣いは無用です。私は蓮太郎兄様がホストでも全然構いませんのに」
「蘭香……」
「蓮太郎兄様が元気で、優しい人が傍に居ればそれだけで私は安心です」

 ぎゅっと両手で包むようにして蘭香ちゃんが蓮さんの手を握った。
 そして僕の方を見てにっこりと微笑んだ。

「青葉さんもお兄様と同じ職場で働いているんですか?」
「あ、う、うん、そうだよ。と言っても蓮さんのようにお客様を喜ばせることはできないヘルプだけどね」

 苦笑しながら頭を掻いて本当のことを言うと、蘭香ちゃんがくすりと笑った。

「そうですか。お兄様の職場に青葉さんみたいな方がいると知って安心しました。……これからも兄のことをよろしくお願いします」

 深々と頭を下げる蘭香ちゃんに僕は慌てた。

「い、いや、僕の方がお世話になっているくらいだから、あの、頭を上げて」
「ふふふ、本当に青葉さんっていい人ですね」

 顔を上げると蘭香ちゃんは優しく微笑んだ。僕もつられて笑っていると、
 
「蘭香」

 凛太郎さんが険しい表情で蘭香ちゃんを呼んでその手を掴んだ。

「これでもう用事は済んだな。帰るぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」

 無理矢理手を引かれ連れ帰られそうになり、蘭香ちゃんは凛太郎さんの手を振り払った。

「私はもう少し蓮太郎兄様とお話をして帰りますっ。帰るなら凛太郎兄様お一人で先に帰ってください」
「な、なんだその言い方はっ! 俺がどれだけお前を探すのに時間を割いたと思ってるんだ!」
「探してなんて言っていません! それに凛太郎兄様がいては蓮太郎兄様とゆっくりお話が出来ません」
「~~~っ、お前は口を開けばいつも蓮太郎兄様、蓮太郎兄様と……!」

 苦々しく吐き捨てると、凛太郎さんは蓮さんに向き直った。

「相変わらず女を誑し込むしか能のない奴だな。だが、誑し込むのは店に来る馬鹿な女共だけにしておけ。蘭香まで巻き込むな。……縁者を誑し込むところまで父親そっくりだ」

 心の底から蔑むように口の端を歪ませて凛太郎さんが言った。
 なのに蓮さんは少しも表情を変えない。何も感じていないかのような無表情からこういった言葉に慣れていることが窺えて、ひどく胸が苦しくなった。

「……ちょ、ちょっと待ってください!」
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