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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

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「よくも蘭香をこんな汚い所に隠してくれたな」
「違いますっ、私から隠れたんです!」
「そうそう~、おにーさんからどうしても隠れたかったみたいだよぉ。おにーさんがよっぽど嫌だったんだねぇ」

 ケラケラと笑う桜季さんの言葉に、凛太郎さんがキッと目尻を吊り上げた。

「うるさい、部外者は黙ってろ!」
「お~こわいこわい~。じゃあお口チャックしとこぉ」

 肩を竦めてそう言うと、桜季さんは腰を下ろしてテーブルの上のお菓子をぼりぼりと食べ始めた。

 ……桜季さん、心臓が強すぎます!

 凛太郎さんは何か言いたげに口を開いたけれど、石を呑み込むように顔を顰めてから再び蓮さんの方へ向き直った。

「お前が家を出る時、藤ヶ谷家とは一切関わらないと約束したはずだが。それを条件に金を出してやったことを忘れたのか」
「凛太郎兄様、違います! 私が無理矢理会いに来たんですっ」

 蘭香ちゃんがスーツの袖を引っ張って言い募ると、凛太郎さんの眉間の皺がますます深まった。

「……だとしても家に上げずに追い返すことだってできたはずだ。藤ヶ谷家に関わらないという約束を覚えていればな。全くこれだから馬鹿は困る」
「お兄様……っ!」
「蘭香、お前もお前だ」

 蘭香ちゃんの非難を低く冷たい声が遮った。

「一之宮さんとの会食を抜け出てこいつに会いに行くなんて言語道断」

 凛太郎さんに睨み据えられ蘭香ちゃんは口を噤んだ。
 ハァ、と凛太郎さんが大きく溜め息を吐く。

「フォローするのに俺がどれだけ大変だったと思ってるんだ。その上こいつに会いに行っていただなんて疲れと怒りでどうにかなりそうだ」
「……っ、私は最初から嫌と言いました! なにが会食ですか! あんなのお見合いじゃないですか!」

 蘭香ちゃんが目尻を吊り上げて声を荒らげた。反論が思いも寄らなかったのか、少しだけ凛太郎さんは怯んだ。

「そんなに怒らなくていいだろう。それにお見合いじゃない。ただの親睦を深めるための食事会だ」
「別に私は一之宮さんと親睦を深めたくありません」

 ぷいっ、と蘭香ちゃんが顔を背けた。凛太郎さんが目に見えて狼狽えた。

「お前は一之宮さんのことを勘違いしている。確かに決して格好いいわけではないがとても温和で……」
「温和だろうと十も年下の女の子と食事をしたいって思っているところが気持ち悪いです! それにあんなに太っていて……私、蓮兄様のように格好良くて優しい男性としかお付き合いしたくありませんっ」
「……っ!」

 蘭香ちゃんの言葉に、蓮太郎さんのこめかみにピキリと青筋が立った。しかし、その怒りは蘭香ちゃんではなく蓮さんに向けられた。

「お前は本当に……どこまで藤ヶ谷家の輪を乱すんだ……っ」

 憎々しげに吐き捨てる凛太郎さんの目は怒りに満ちていた。
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