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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?
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桜季さんの奇抜な外見に、男は顔を青くして一歩引き下がった。
「な、なんだお前はっ」
「おれはレンコンの友達だよぉ。おにーさんこそ急に現れて喚き散らすとかレンコンとどういう関係~?」
「お、お前に教える義理はないっ」
完全に拒否反応を示しながら男は答えた。
「あ~、分かったぁ、レンコンの昔の男でしょ~。だから女の靴ひとつでぎゃーぎゃー騒いでるんだねぇ」
「違うっ、気持ち悪いこと言うな!」
さっきまで蓮さんを冷たく挑発していた人とは思えないほど、桜季さんのペースに呑まれて語気を乱している。
さ、さすが桜季さん……!
何もできずに二人の険悪なやり取りにただ狼狽えることしかできなかった僕とは大違いだ。
「でも安心して元彼さん~、それはおれのだからぁ」
「はぁ?」
男が盛大に顔を顰めた。
桜季さん、それは無理があるのでは……。
蘭香ちゃんの靴は、リボンのついた小振りの靴で、デザイン的にもサイズ的にも桜季さんのものだと言い張るには無理がある。
しかし男が口を挟む余地を与えず桜季さんは続けた。
「正確にはおれの元カノの~。家に置きっぱなしで家を出て行ったんだよねぇ。それを今の彼女が見たら嫌な気持ちになるでしょぉ? かと言って勝手に捨てて元カノが取りに来ても困るしぃ、だから一時避難させてもらってるんだぁ」
な、なるほど……!
すらすらとまるで本当のことのように淀みなく連ねられる嘘に僕は心の中で思わず拍手をした。桜季さんは味方だと本当に心強い。
桜季さんの言葉に少し怯んだけれど、男はすぐに軽蔑の色を深めて頬を歪ませた。
「なるほど、類は友を呼ぶというやつだな。女にだらしない奴のところにはやはり似た奴が集まる」
「ははは~、そうだねぇ、モテる男はモテない男にひがまれるから必然的にモテる男同士で集まっちゃうよねぇ。おにーさんの周りはあれでしょ? 女に声かける度胸も風俗に行く勇気もない高学歴の童貞が傷口舐め合ってるんでしょ~? ふふ、類友だねぇ」
「な……っ!」
男がカァァと顔を赤くして言葉を失う。
さ、桜季さん、その言い方はちょっと……!
明らかに挑発の域を超えた言葉に僕の方があわてふためいた。
一方の蓮さんは肩を震わせて笑いを堪えている。
「っ、なにを笑ってるんだ! お前の仲間なんだろ! どうにかしろっ」
男は怒りの矛先を蓮さんに向けてキッと睨み付けた。
けれど蓮さんは余裕たっぷりに肩を竦めるだけだ。
「何で俺がアンタのためにどうにかしないといけないんだよ。図星をつかれたからってそう怒るなよ。そんなんだからモテねぇんじゃねぇの」
「……っ、うるさい! 不愉快だ、さっさと部屋の中を確認して帰らせてもらう!」
「どうぞ~」
肩をいからせて上がり込んだ男を、桜季さんが緩い態度で迎える。
男は桜季さんを押しのけ居間に足を踏み込んだ。
そこには――。
「……いない」
空の居間を見回して男は唖然と呟いた。
「な、なんだお前はっ」
「おれはレンコンの友達だよぉ。おにーさんこそ急に現れて喚き散らすとかレンコンとどういう関係~?」
「お、お前に教える義理はないっ」
完全に拒否反応を示しながら男は答えた。
「あ~、分かったぁ、レンコンの昔の男でしょ~。だから女の靴ひとつでぎゃーぎゃー騒いでるんだねぇ」
「違うっ、気持ち悪いこと言うな!」
さっきまで蓮さんを冷たく挑発していた人とは思えないほど、桜季さんのペースに呑まれて語気を乱している。
さ、さすが桜季さん……!
何もできずに二人の険悪なやり取りにただ狼狽えることしかできなかった僕とは大違いだ。
「でも安心して元彼さん~、それはおれのだからぁ」
「はぁ?」
男が盛大に顔を顰めた。
桜季さん、それは無理があるのでは……。
蘭香ちゃんの靴は、リボンのついた小振りの靴で、デザイン的にもサイズ的にも桜季さんのものだと言い張るには無理がある。
しかし男が口を挟む余地を与えず桜季さんは続けた。
「正確にはおれの元カノの~。家に置きっぱなしで家を出て行ったんだよねぇ。それを今の彼女が見たら嫌な気持ちになるでしょぉ? かと言って勝手に捨てて元カノが取りに来ても困るしぃ、だから一時避難させてもらってるんだぁ」
な、なるほど……!
すらすらとまるで本当のことのように淀みなく連ねられる嘘に僕は心の中で思わず拍手をした。桜季さんは味方だと本当に心強い。
桜季さんの言葉に少し怯んだけれど、男はすぐに軽蔑の色を深めて頬を歪ませた。
「なるほど、類は友を呼ぶというやつだな。女にだらしない奴のところにはやはり似た奴が集まる」
「ははは~、そうだねぇ、モテる男はモテない男にひがまれるから必然的にモテる男同士で集まっちゃうよねぇ。おにーさんの周りはあれでしょ? 女に声かける度胸も風俗に行く勇気もない高学歴の童貞が傷口舐め合ってるんでしょ~? ふふ、類友だねぇ」
「な……っ!」
男がカァァと顔を赤くして言葉を失う。
さ、桜季さん、その言い方はちょっと……!
明らかに挑発の域を超えた言葉に僕の方があわてふためいた。
一方の蓮さんは肩を震わせて笑いを堪えている。
「っ、なにを笑ってるんだ! お前の仲間なんだろ! どうにかしろっ」
男は怒りの矛先を蓮さんに向けてキッと睨み付けた。
けれど蓮さんは余裕たっぷりに肩を竦めるだけだ。
「何で俺がアンタのためにどうにかしないといけないんだよ。図星をつかれたからってそう怒るなよ。そんなんだからモテねぇんじゃねぇの」
「……っ、うるさい! 不愉快だ、さっさと部屋の中を確認して帰らせてもらう!」
「どうぞ~」
肩をいからせて上がり込んだ男を、桜季さんが緩い態度で迎える。
男は桜季さんを押しのけ居間に足を踏み込んだ。
そこには――。
「……いない」
空の居間を見回して男は唖然と呟いた。
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