35歳からの楽しいホストクラブ

綺沙きさき(きさきさき)

文字の大きさ
上 下
188 / 228
第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

20

しおりを挟む
「残念だけど青りんごはおれのものだから諦めてねぇ」

 桜季さんはそう言うと見せつけるように、ちゅ、ちゅ、と僕の額にキスをした。

「だから違うって言ってんだろうが! 俺を勝手にホモにすんな!」
「えぇ、でもぉ、青りんごのことよく褒めてるじゃん~。たまにヘマはするけど仕事は真面目だとか、掃除は完璧だとか、あと笑顔が可愛いとかぁ」
「可愛いとか一回も言ったことねぇ!」
「あれ~、否定するのはそこだけなんだぁ」
「……っ」

 桜季さんの指摘に蓮さんが失言してしまったかのように言葉を詰まらせた。

 ……ということは、可愛いというのは桜季さんの嘘だけど、その前の褒め言葉は本当だってこと?

 思わず嬉しくなって目を輝かせていると、

「ちょっとお兄様! 職場の先輩に対してヘマをするとか失礼じゃありませんかっ」

 目を尖らせてたしなめる蘭香ちゃんにハッとする。
 そうだった、僕は今蓮さんの上司役なのだ。蓮さんが陰で僕を褒めてくれていたという事実が嬉しすぎてその設定を忘れかけていた。
 危うくいつものように敬語で「ありがとうございます!」と言ってしまうところだった。

「あ、いや、蘭香ちゃん気にしないで。いつも蓮君には僕のミスをフォローしてもらったりしてるから。それに僕らの職場そういうの気兼ねなく言える環境だからそんなの日常茶飯事」
「青葉さんがそう言うなら……でもお兄様! 目上の方にはちゃんと敬意を持って接しないといけませんよ」
「分かってるよ」

 くどくどと注意する蘭香ちゃんを、心の溜め息が聞こえてきそうな顔をして蓮さんがあしらう。

「……さっきの本当ですか?」

 二人に聞こえないようこっそりと桜季さんに訊いてみた。

「さっきのってぇ?」
「さっき、その、蓮さんが僕のことを褒めてくれてたって」

 図々しい質問かと思ったけれど、訊かずにはいられなかった。
 いい答えを期待して待っている僕に、桜季さんがフッと小さく笑った。

「どうだろうねぇ、レンコン曰くおれの言うことは九割は嘘らしいよぉ」
「そうですか……」

 なんだ、やっぱり冗談だったのか……。

 厚かましくも期待してしまった僕は肩を落とした。

「でもぉ、九割嘘なら一割はホントってことだよねぇ」
「え?」

 桜季さんの言葉に顔を上げると、にっこりと意味深な笑みを向けられた。

「答えは今度レンコンに直接訊いてみるといいよぉ」
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果

はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!

toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」 「すいません……」 ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪ 一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。 作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

ごめん、他担

ぽぽ
BL
自分の感情に素直になれないアイドル×他担オタク ある日、人気アイドル様がバイト先に握手しに来た話。

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

処理中です...