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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

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「寄り添ってるって言うよりベタベタしてるだけだろ」
「そう言うことじゃないですっ」

 話を逸らそうとする蓮さんに蘭香ちゃんは頬を膨らませていたが、

「桜季さん」

 くるり、と唐突に桜季さんの方へ向き直った。

「ん~、なぁに?」
「お兄様といい感じの人とか知りませんか。お兄様に好意がありそうな人とか」
「おい、本人の前で勝手に詮索するな」
「だってお兄様が教えてくれないんですもの」

 ぷい、と可愛らしく蘭香ちゃんが顔を背けた。よっぽどお兄ちゃんの恋路が気になるようだ。

「そうだねぇ、年齢問わず女の子にはモテるけど浮いた話は聞いたことがないなぁ」
「じゃあ逆にお兄様が好きそうな人とか」
「レンコンが好きそうな……あ!」

 大事なことを思い出したように声を上げた。

「え! いるんですか!」

 心当たりがありそうな反応に、蘭香ちゃんの表情が明るくなった。僕も気になって思わず桜季さんの顔を振り仰ぐようにして見た。

 蓮さんの好きな人……! 気になる!

 ナンバーワンホストが果たしてどんな女性に惹かれるのが興味が湧いた。
 僕も蘭香ちゃんもわくわくと桜季さんの言葉を待つ。

「いるというかぁ、もしかして好きなのかなぁと思ったことがあるよぉ」
「おい勝手なこ……」
「実はおれが青りんごと付き合うことを報告した時なんだけどぉ」

 蓮さんの抗議を遮った言葉に、僕はえ? と目を丸くした。

「おれたち付き合うことになったからぁって言ったら、レンコン一瞬だけ傷ついたような悲しげな顔をしたんだよねぇ」
「それってまさか……!」

 口元を両手で覆う蘭香ちゃんに、桜季さんが神妙な表情で頷いた。

「うん、つまりレンコンはおれのことが好きだったんだと……」
「アホかーっ!」

 バン! とテーブルを両手で蓮さんが叩いた。その振動でお茶の水面が少し揺れた。

「ほら見て、ムキになっているのがその証拠ぉ」
「お兄様……っ!」

 蘭香ちゃんが痛ましそうに蓮さんを見詰める。
 桜季さんは憐憫を滲ませた表情を見せているけれど、その目元に悪戯好きな笑みが微かに浮かんでいたのを僕は見逃さなかった。

 ……桜季さん、絶対楽しんでますよね?

「蘭香、信じるな! こいつの言うことの九割は嘘だ!」
「いいんです、お兄様。無理はなさらないでください。辛いことを詮索してしまってすみませんでした」
「レンコン、おれもごめんねぇ。どうしてもおれはレンコンをそんな目ではみれなくてぇ」
「謝るな! つーか、胸糞悪くなる嘘吐くな! 嘘でも気分が悪い!」
「えぇ~、じゃあおれのこと別に好きじゃないってことぉ?」
「そうだよ!」
「なるほどぉ、じゃあ青りんごのことが好きだったんだねぇ」
「どうしてそうなる!」

 怒鳴る蓮さんに血管が何本か切れているんじゃないかと心配になる。
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