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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

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「えぇ~、見るとは言ったけどぉ、帰るとは言ってないよぉ」
「っ、てめぇ……」
「まぁ、でも兄妹水入らずなところいつまでもお邪魔するのは悪いしねぇ。おれと青りんごはサッサと退散してデートでもしてくるよぉ。ねぇ、青りんご」

 蓮さんの血管が切れそうな寸前で桜季さんが態度を翻して、僕の腰にするりと腕を巻いた。
 しめた!
 僕は心の中でガッツポーズした。蓮さんから時機を見て帰るよう言われていたのだ。正直なところ、タイミングを見て物事を切り出すのが苦手な僕にとって、桜季さんからの申し出は有り難いものだった。
 
「そ、そうだね! せっかくお兄さんの所に来たんだから二人でゆっくり話した方がいいね」
「うんうん、そうだよぉ。それじゃあおれたちはこの辺で……」
「お待ちくださいっ」

 グッと僕の腰を引き寄せて立ち去ろうとした桜季さんを蘭香ちゃんが呼び止めた。

「あの、もし嫌でなければお兄様の話をぜひ聞かせてください! 私、お兄様のお友達にお会いするの初めてなんです」
「うーん、おれたちは全然構わないけどぉ……」

 キラキラと瞳を輝かせる蘭香ちゃんから逃れるようにちらりと桜季さんが蓮さんに視線を遣った。
 蓮さんは大きくため息を吐いて「好きにしろ」と答えて、蘭香ちゃんの斜め横に腰を下ろした。

「ふふ、じゃあお兄様の許しも出たことだし、お言葉に甘えてもう少しお邪魔しようかぁ」
「え、あ、うん、そうだね……」

 正直なところ、ヘマをしてしまう前に立ち去りたかった僕は居留まる展開に内心がっくりした。
 すると、桜季さんがスッと唇を耳元に寄せてきた。

「大丈夫。おれ上手に演じるよぉ。……いい子にできたらご褒美ちょうだいねぇ」

 わざと熱い吐息を吹きかけるようにして囁かれて、反射的に顔が熱くなった。
 熱が集まった耳を押さえながら顔を上げると、桜季さんが口の端をにこりと緩めた。
 
「ふふふ~。ご褒美、楽しみだなぁ」

 そう言うと桜季さんは僕の手を引いて蘭香ちゃんの前に座った。その横に僕も腰を下ろす。

 ご、ご褒美って……、高い物じゃないといいんだけど……。

 財布の中身がいくらだったかを思い返しながら、僕は湯飲みを口に運んで妙な胸騒ぎをお茶と一緒に呑み込んだ。
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