183 / 228
第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?
15
しおりを挟む
そして、
「……はははは! 相変わらず桜季君は面白いね! さすが蓮君の友達だ! そのあだ名、気に入っているよ」
前の職場でみんなに尊敬されて慕われていた上司を参考に、豪快に笑って桜季さんの背中を叩いた。
その上司は部下からの冗談も鷹揚に応じていて、そういう偉そうに上司ぶらないところも好かれていた。それを形だけでも真似ればそれらしくなるのではないかと思ったのだけれど、事情を知らない桜季さんはいつもとあまりに違う僕に目をパチクリとさせて驚いている。
うぅ……、やっぱり失礼だったかな……。
いつもお世話になっている桜季さんに無礼な態度をとっていることは重々承知だ。
でも、この場面をどうしても切り抜けなければならないのだ。
僕は桜季さんが口を開く前に、蘭香ちゃんに向き直って畳み掛けるようにして言った。
「桜季君は君のお兄さんの友達でね、前に居酒屋に蓮君と呑みに行った時、たまたま出会ってね。そこで意気投合してそれからたまに会うんだ。いやぁ、サラリーマンをしていると周りはおじさんばかりだから、本当に若い子と話すのは刺激になっていいよ」
蘭香ちゃんに説明する体で、桜季さんにも僕らの設定と、嘘をつかないといけない現状を察してもらおうと必死に口を動かす。
桜季さんは色々と聡い人だ。それに悪戯好きだけど本当に嫌がることはしない。
だからこうして遠回しでも説明すれば何かしら感じ取って合わせてくれるに違いない。
「また呑みに行こうね、桜季君」
祈るような気持ちで桜季さんの方を向く。
するとそれまで呆気にとられていた桜季さんだったけれど、にっこりと笑みを浮かべた。
「当たり前だよぉ。青りんごとおれの仲じゃなぁい」
さ、桜季さん! ありがとうございます……っ!
話を合わせてくれた桜季さんに感謝の気持ちで胸がいっぱいになり、頭の中で何度も頭を下げる。
けれど安心できたのは束の間だった。
「だからそんな他人行儀にならないでよぉ。おれたち付き合ってるんだからさぁ」
ことさら甘い声でそう言うと、桜季さんはするりと腰に手を巻いて僕を引き寄せた。
「え? え? えぇっ!?」
突然盛り込まれた設定に、焦りと驚きで頭がグルグルと回る。
ど、どうしよう……!
しかし動揺したのは僕だけではなかった。
「えっ、お二人はお付き合いされてるんですか?」
大きな瞳をさらに大きく開いて蘭香ちゃんが戸惑いながら僕らを交互に見る。
こ、これはどうにかして修正しなければ……!
今ならまだ桜季さんの悪ふざけにできる。そう思って急いで口を開いたけれど、桜季さんの方が一枚上手で、僕の言葉を遮るように後頭部をぎゅーっと押さえ込んだ。桜季さんの胸元に顔が埋まって言葉を発することはおろか、呼吸すら難しい状態だ。
「うん、そうだよぉ。一緒に呑んだ時に意気投合してそのままホテルに行ったのが始まりだよねぇ」
「っふが!」
「……はははは! 相変わらず桜季君は面白いね! さすが蓮君の友達だ! そのあだ名、気に入っているよ」
前の職場でみんなに尊敬されて慕われていた上司を参考に、豪快に笑って桜季さんの背中を叩いた。
その上司は部下からの冗談も鷹揚に応じていて、そういう偉そうに上司ぶらないところも好かれていた。それを形だけでも真似ればそれらしくなるのではないかと思ったのだけれど、事情を知らない桜季さんはいつもとあまりに違う僕に目をパチクリとさせて驚いている。
うぅ……、やっぱり失礼だったかな……。
いつもお世話になっている桜季さんに無礼な態度をとっていることは重々承知だ。
でも、この場面をどうしても切り抜けなければならないのだ。
僕は桜季さんが口を開く前に、蘭香ちゃんに向き直って畳み掛けるようにして言った。
「桜季君は君のお兄さんの友達でね、前に居酒屋に蓮君と呑みに行った時、たまたま出会ってね。そこで意気投合してそれからたまに会うんだ。いやぁ、サラリーマンをしていると周りはおじさんばかりだから、本当に若い子と話すのは刺激になっていいよ」
蘭香ちゃんに説明する体で、桜季さんにも僕らの設定と、嘘をつかないといけない現状を察してもらおうと必死に口を動かす。
桜季さんは色々と聡い人だ。それに悪戯好きだけど本当に嫌がることはしない。
だからこうして遠回しでも説明すれば何かしら感じ取って合わせてくれるに違いない。
「また呑みに行こうね、桜季君」
祈るような気持ちで桜季さんの方を向く。
するとそれまで呆気にとられていた桜季さんだったけれど、にっこりと笑みを浮かべた。
「当たり前だよぉ。青りんごとおれの仲じゃなぁい」
さ、桜季さん! ありがとうございます……っ!
話を合わせてくれた桜季さんに感謝の気持ちで胸がいっぱいになり、頭の中で何度も頭を下げる。
けれど安心できたのは束の間だった。
「だからそんな他人行儀にならないでよぉ。おれたち付き合ってるんだからさぁ」
ことさら甘い声でそう言うと、桜季さんはするりと腰に手を巻いて僕を引き寄せた。
「え? え? えぇっ!?」
突然盛り込まれた設定に、焦りと驚きで頭がグルグルと回る。
ど、どうしよう……!
しかし動揺したのは僕だけではなかった。
「えっ、お二人はお付き合いされてるんですか?」
大きな瞳をさらに大きく開いて蘭香ちゃんが戸惑いながら僕らを交互に見る。
こ、これはどうにかして修正しなければ……!
今ならまだ桜季さんの悪ふざけにできる。そう思って急いで口を開いたけれど、桜季さんの方が一枚上手で、僕の言葉を遮るように後頭部をぎゅーっと押さえ込んだ。桜季さんの胸元に顔が埋まって言葉を発することはおろか、呼吸すら難しい状態だ。
「うん、そうだよぉ。一緒に呑んだ時に意気投合してそのままホテルに行ったのが始まりだよねぇ」
「っふが!」
20
お気に入りに追加
739
あなたにおすすめの小説

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。


初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。


Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました!
※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

病んでる愛はゲームの世界で充分です!
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。
幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。
席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。
田山の明日はどっちだ!!
ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。
BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。
11/21
本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる