35歳からの楽しいホストクラブ

綺沙きさき(きさきさき)

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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?

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 そして、
 
「……はははは! 相変わらず桜季君は面白いね! さすが蓮君の友達だ! そのあだ名、気に入っているよ」

 前の職場でみんなに尊敬されて慕われていた上司を参考に、豪快に笑って桜季さんの背中を叩いた。
 その上司は部下からの冗談も鷹揚に応じていて、そういう偉そうに上司ぶらないところも好かれていた。それを形だけでも真似ればそれらしくなるのではないかと思ったのだけれど、事情を知らない桜季さんはいつもとあまりに違う僕に目をパチクリとさせて驚いている。
 
 うぅ……、やっぱり失礼だったかな……。
 
 いつもお世話になっている桜季さんに無礼な態度をとっていることは重々承知だ。
 でも、この場面をどうしても切り抜けなければならないのだ。
 僕は桜季さんが口を開く前に、蘭香ちゃんに向き直って畳み掛けるようにして言った。

「桜季君は君のお兄さんの友達でね、前に居酒屋に蓮君と呑みに行った時、たまたま出会ってね。そこで意気投合してそれからたまに会うんだ。いやぁ、サラリーマンをしていると周りはおじさんばかりだから、本当に若い子と話すのは刺激になっていいよ」

 蘭香ちゃんに説明する体で、桜季さんにも僕らの設定と、嘘をつかないといけない現状を察してもらおうと必死に口を動かす。
 桜季さんは色々と聡い人だ。それに悪戯好きだけど本当に嫌がることはしない。
 だからこうして遠回しでも説明すれば何かしら感じ取って合わせてくれるに違いない。

「また呑みに行こうね、桜季君」

 祈るような気持ちで桜季さんの方を向く。
 するとそれまで呆気にとられていた桜季さんだったけれど、にっこりと笑みを浮かべた。

「当たり前だよぉ。青りんごとおれの仲じゃなぁい」

 さ、桜季さん! ありがとうございます……っ!

 話を合わせてくれた桜季さんに感謝の気持ちで胸がいっぱいになり、頭の中で何度も頭を下げる。
 けれど安心できたのは束の間だった。

「だからそんな他人行儀にならないでよぉ。おれたち付き合ってるんだからさぁ」

 ことさら甘い声でそう言うと、桜季さんはするりと腰に手を巻いて僕を引き寄せた。

「え? え? えぇっ!?」

 突然盛り込まれた設定に、焦りと驚きで頭がグルグルと回る。

 ど、どうしよう……!

 しかし動揺したのは僕だけではなかった。

「えっ、お二人はお付き合いされてるんですか?」

 大きな瞳をさらに大きく開いて蘭香ちゃんが戸惑いながら僕らを交互に見る。

 こ、これはどうにかして修正しなければ……!

 今ならまだ桜季さんの悪ふざけにできる。そう思って急いで口を開いたけれど、桜季さんの方が一枚上手で、僕の言葉を遮るように後頭部をぎゅーっと押さえ込んだ。桜季さんの胸元に顔が埋まって言葉を発することはおろか、呼吸すら難しい状態だ。

「うん、そうだよぉ。一緒に呑んだ時に意気投合してそのままホテルに行ったのが始まりだよねぇ」
「っふが!」
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