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第7章 35歳にして、ご家族にご挨拶!?
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「え、えっと……ここはどこ?」
僕は駅構内をぐるりと見回した。しかし店や看板、行き交う人々の波で雑然とした視界の中にヒントは見つからなかった。
あらゆる路線が集まっている上に、新幹線も停まる駅と言うこともあり、蓮さんと待ち合わせをしている駅構内はまるで迷路のように複雑な構造だった。
日曜日ということもあり、どこもかこも人がひしめいている。
蓮さんの妹さんが新幹線で来るということなので、新幹線の改札近くのコンビニで待ち合わせという約束だったのだが、僕は完全に駅構内の繁雑さをあなどっていた。
コンビニなら分かりやすいと思っていたのだけれど、構内にはコンビニが想像以上に多かった。そもそも新幹線の改札口まで辿り着けていなかった。
地図を見ても、階段が複雑に交差して結局この階段がどこに繋がるのかが全く分からない。
恥を忍んで駅員さんに聞いてみたものの、その時は分かった気がしても、数歩進むとまたすぐに分からなくなる、といったまさにお手上げ状態だった。
蓮さんに電話してみようかな……。
巨大な迷路を前に弱気になった僕はそうも考えたけれど、今日は彼の上司役をするのだ、こんな情けない相談をしたら呆れられてしまうかもしれないし、不安にさせてしまうかもしれない。
どうしようかと頭を悩ませていると、
「そこ、どいて頂けません?」
「あ、え? す、すみませんっ」
冷たい少女の声が背後からして、反射的に謝って振り返った。
しかし、その言葉は僕に向けたものではなかった。
「そんな怖い顔しないでよ~」
「てか重くない? 荷物持ってあげるよ」
あまり柄の良くない二十歳前後の若い男二人が、黒髪の少女を取り囲んで言い寄っている。
少女はアイドル顔負けの可憐な顔立ちを顰めて男たちを冷たく睨み付けていた。
「結構です」
お土産が入っているらしい紙袋を男たちから守るようにしてギュッと抱えながら、毅然とした口調で少女が答えた。
迷惑です、どこか行ってください、と声や表情から心の声が滲み出ているというのに、男たちはにやにやと笑って引き下がる気配がない。
「遠慮しなくていいし」
「そうそう、俺たち力持ちだし」
「勝手に触らないでください」
無理矢理紙袋を持とうと伸びてきた男の手を少女が振り払った。
男の眉が苛立たしげにピクリと動いた。
「はぁ? 人がせっかく持ってやろうって言ってんのに失礼じゃね?」
「誰も持ってなんて言ってません」
「うわ、超生意気。可愛いからって調子乗ってんじゃね?」
「貴方たちも相手が女だからって調子に乗ってるんじゃないですか」
「は?」
ピリピリと一触即発といった不穏な空気が立ちこめてきた。
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