35歳からの楽しいホストクラブ

綺沙きさき(きさきさき)

文字の大きさ
上 下
168 / 228
第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!

2

しおりを挟む

****

「そういえばさっきレンコンが珍しく早く来てたねぇ」

せっせとコップ磨きをしていると、桜季さんがカウンターに肘をついて話し掛けてきた。
恐らく料理の準備が一通り終わったのだろう。

「あ、はい。僕に用があるということで早く来てくださったんです」
「えぇ~、なになに~? レンコンが青りんごに用事って珍しいねぇ」

桜季さんが心持ち身を乗り出した。

「実は、僕がフラキュアが好きだって知って、ジュースのオマケについていたフラキュアの人形を持って来てくれたんです」

そう答えると、桜季さんは片眉を器用に持ち上げた。

「へぇ、レンコンがぁ?」
「はい、袋いっぱい持って来てくれました!」

手で袋の大きさをジェスチャーしながら、ふと疑問が過ぎった。
そういえばあれだけの量のジュースを飲んだのだろうか?
一日何本飲んでるんだろう。
相当好きなのかもしれない。
今度お礼に差し入れしようかなと思っていると、

「それってもしかして『果ジュース』のやつ~?」
「あ、はい。確かそう言っていました」

そう答えると、桜季さんは肩を震わせて笑い始めた。

「ど、どうしたんですか?」
「ふふふ、いやぁ、レンコンってあんまり甘ったるいジュース好きじゃないんだよねぇ」
「え?」

桜季さんの言葉に目を丸くする。
確か蓮さんはよく飲むって言っていたような……。

「この間、レンコンの家に遊びに行って冷蔵庫を開けたら『果ジュース』がいっぱい入っててさぁ。これどうしたの? って訊いても何も答えなかったんだけど……ふぅん、そういうわけかぁ」

桜季さんがクククと喉を震わせて笑った。

桜季さんの言葉に段々理解が追いつく。
つまり蓮さんは僕にあの人形をあげるために好きでもないジュースをいっぱい買い込んだということだ。

僕はジュースがいっぱい詰まった蓮さんの家の冷蔵庫を想像して思わず微笑みが漏れた。

意外と僕は蓮さんに嫌われていないようだ。

「ふふふ~、今度これをネタにいじってやろう~」

よからぬ笑みを浮かべて厨房に戻っていく桜季さん。
僕は心の中で蓮さんに謝った。


……数日後、蓮さんから怒られたのは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果

はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。

多分前世から続いているふたりの追いかけっこ

雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け 《あらすじ》 高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。 桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。 蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。

ライバル視していた隣国の魔術師に、いつの間にか番認定されていた

地底湖 いずみ
BL
魔法ありの異世界に転生をした主人公、ライ・フォールは、魔法学園の成績トップに君臨していた。 だが、努力をして得た一位の座を、急に現れた転校生である隣国の男、ノアディア・サディーヌによって奪われてしまった。 主人公は彼をライバルと見なし、嫌がらせをしようとするが、前世の知識が邪魔をして上手くいかず、いつの間にか彼の番に認定され──── ────気づかぬうちに、俺はどうやら乙女ゲームの世界に巻き込まれていたみたいだ。 スパダリヤンデレ超人×好きを認めたくない主人公の物語。 ※更新速度 : 中

処理中です...