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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!

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「そういえばさっきレンコンが珍しく早く来てたねぇ」

せっせとコップ磨きをしていると、桜季さんがカウンターに肘をついて話し掛けてきた。
恐らく料理の準備が一通り終わったのだろう。

「あ、はい。僕に用があるということで早く来てくださったんです」
「えぇ~、なになに~? レンコンが青りんごに用事って珍しいねぇ」

桜季さんが心持ち身を乗り出した。

「実は、僕がフラキュアが好きだって知って、ジュースのオマケについていたフラキュアの人形を持って来てくれたんです」

そう答えると、桜季さんは片眉を器用に持ち上げた。

「へぇ、レンコンがぁ?」
「はい、袋いっぱい持って来てくれました!」

手で袋の大きさをジェスチャーしながら、ふと疑問が過ぎった。
そういえばあれだけの量のジュースを飲んだのだろうか?
一日何本飲んでるんだろう。
相当好きなのかもしれない。
今度お礼に差し入れしようかなと思っていると、

「それってもしかして『果ジュース』のやつ~?」
「あ、はい。確かそう言っていました」

そう答えると、桜季さんは肩を震わせて笑い始めた。

「ど、どうしたんですか?」
「ふふふ、いやぁ、レンコンってあんまり甘ったるいジュース好きじゃないんだよねぇ」
「え?」

桜季さんの言葉に目を丸くする。
確か蓮さんはよく飲むって言っていたような……。

「この間、レンコンの家に遊びに行って冷蔵庫を開けたら『果ジュース』がいっぱい入っててさぁ。これどうしたの? って訊いても何も答えなかったんだけど……ふぅん、そういうわけかぁ」

桜季さんがクククと喉を震わせて笑った。

桜季さんの言葉に段々理解が追いつく。
つまり蓮さんは僕にあの人形をあげるために好きでもないジュースをいっぱい買い込んだということだ。

僕はジュースがいっぱい詰まった蓮さんの家の冷蔵庫を想像して思わず微笑みが漏れた。

意外と僕は蓮さんに嫌われていないようだ。

「ふふふ~、今度これをネタにいじってやろう~」

よからぬ笑みを浮かべて厨房に戻っていく桜季さん。
僕は心の中で蓮さんに謝った。


……数日後、蓮さんから怒られたのは言うまでもない。
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