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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!

おまけ 3-1

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更衣室のドアを開けると、珍しい人がいた。

「あ、蓮さん、お疲れ様です!」

僕の声に、ソファに寝転んで携帯をいじっていた蓮さんがゆっくりと起き上がった。

「ああ、お疲れ」
「早いですね。これから同伴ですか?」
「まぁ、そうだけど、お前にその……用事があって」
「僕に用事ですか?」

なぜか言い淀む蓮さんに首を傾げながらたずねると、蓮さんは僕の問い返しには答えず自分のロッカーに向かった。
そしてロッカーからビニール袋を取り出すと、それを持って僕の前まで来た。

「……ん、やるよ」

居心地が悪そうに顔を逸らしながら、蓮さんが袋をぶっきらぼうに差し出した。
突然のことで戸惑ったけれど、僕の胸に押しつけるように差し出されたので反射的に受け取った。

「あ、えっと、ありがとうございます」

袋の中を見ると、そこには親指サイズほどのフラキュアの人形がどっさり入っていた。

「桜季から聞いた。お前、それが好きなんだろ。俺がよく飲む『果ジュース』にオマケでついてたからやるよ」
「え……!」

僕は戸惑いながら蓮さんと袋の中の人形を交互に見た。
正直言うと、僕はグッズは集めていないのでこの量の人形をどうしようと少し困った。
でも、蓮さんがこのオマケを見た時に自分のことを思い出してくれたことが嬉しい。
僕はぎゅっと袋を抱きしめた。

「ありがとうございます! すごく嬉しいです」
「別に、捨てるのもったいないし。つーか、いい歳してこんなのにはまるなよ」

そう言うと踵を返して自分のロッカーを開けてコートを羽織った。

「あ、もう出るんですか?」
「もう用事は終わったしな」
「え! じゃあこれを渡すためだけに早く来てくれたんですか?」

驚いて訊くと、蓮さんの動きが止まった。

「蓮さん?」

呼び掛けると、蓮さんが勢いよく振り返った。

「か、勘違いすんな。こんなのがずっと家にあっても邪魔なんだよ。それに、こんなもの持って来てるの他の奴に見られたくないから仕方なくこの時間に来たんだよっ」

早口でそう言うと、ロッカーをバンッと勢いよく閉めた。
怒っているというより動揺しているという感じだったので、その乱暴な動作も怖いと思わなかった。
それどころか思わず笑みが零れた。

「……なに笑ってるんだよ」
「あ、いえ、すみません。色々と気を遣って頂いてありがとうございました」

慌てて頭を下げると、蓮さんはフンと鼻を鳴らした。

「まぁ、別にいいけど」

そう言って僕の横を通り、更衣室を出た。
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