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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!
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「オーナー、そろそろ会議を始めてもいいですか?」
控えめなノックと菱田の声に、ハッと我に返った。
桜季が部屋を出てからずっと写真に見入っていたら、すでに会議の時間を過ぎていた。
いつまで経っても哲哉から会議開始の呼び出し電話がないので様子を見に来たのだろう。
「あ、ああ、すまない。大丈夫だ」
哲哉は買った写真を自分の机の引き出しにしまうと、ドアの鍵を開けた。
いつも通り、店の売り上げや困った客の件、新人ホストの件などの話をして、会議の時間はあっという間に過ぎていった。
「……それでは、新人ホストの教育については右京に一任することにしますね」
向かいに座る菱田が、書類をトントンとテーブルの上でまとめながら言った。
「ああ、それでいい。……ところで、ホストがコスプレをする企画があったな」
「ええ、お客様から多数要望があったので、執事喫茶のようなものを期間限定でしようという話が出ていますね」
まだ詳しくは決めていませんが、と付け足して菱田が答えた。
「そのコスプレだが……執事じゃなくてメイドにしたらどうだろう」
「一体どこに需要がありますか!?」
下心満載の提案は当然、菱田に却下された。
****
パラディゾの更衣室にて。
「青りんご~」
ロッカーの前で着替えをしている幸助の背中に桜季が後ろから抱きついた。
「おわっ!」
前につんのめりそうになったのを何とか両足で踏ん張って、幸助が後ろを振り返った。
「どうしたんですか、桜季さん。今日はすごく機嫌がいいですね」
「ふふふ~、ちょっと臨時収入があってねぇ」
「へぇ! よかったですね! 思わぬ臨時収入って嬉しいですよね。僕もこの間、使ってない鞄から五百円玉が出て来たんです」
にこにこと嬉しそうに話す幸助に、桜季もにっこりと笑みを返し、頭を撫でた。
「それはよかったねぇ。あ、それで話は戻るんだけど今度の休みにお出かけしようよぉ。何でも買ってあげるよぉ」
「ええ! いいですよ! 自分で得たお金はどうぞ自分のために使ってください!」
「いいのいいの~。この収入は青りんごのおかげだしぃ」
「僕のおかげ、ですか?」
何も思い当たることがないといった風に首を傾げる幸助に、桜季は笑うだけで何も言わなかった。
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