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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!

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売れて金回りのいいホストなどほんの一握りだ。
売れないホストのために寮があるホストクラブも少なくない。
パラディゾも例に漏れずそういった売れないホストや新人ホストのために寮を準備しているはずだ。

「最初はそうしようと思ったんですけど……その、晴仁に引き留められて……」
「はぁ?」

金のない友人を住まわしてやるというのはまだ理解できる。
しかし、一人立ちの目途がついたのにそれを引き留めるというのは、果たして友情の範疇の行動なのだろうか。
晴仁という男に対して疑念が強まる。

「あ、いや、それにはちょっと事情がありまして。でも、一緒に住ませてもらって本当に助かってるので」

あからさまに慌てて弁解のように言葉を連ねる幸助に眉を顰める。

「……まさか、アンタ、その男に弱みでも握られてるんじゃないだろうな?」
「え?」

幸助が目を丸くした。
それが図星をつかれた戸惑いのように見えて、聖夜は思わず幸助の手を取った。

「そんな男のところ早く出ろよ。そんなんじゃいつまでもその男の元から逃げられないだろ」
「い、いや、逃げるもなにもそんな、晴仁にはお世話になっていますし……」

男を庇うような言葉に苛立ちが胸をかすめる。

「そんなんだから弱みを握られるんだよっ。……逃げるところがないなら俺の家に来てもいいし」
「え?」

勇気を振り絞って出した言葉は、店内に流れるアニメ的な音楽にかき消されてしまった。
特に最後の方は、言葉の裏に潜む期待にもにた下心が漏れてしまいそうでおもわず声が小さくなってしまったので、聞こえなかったのも無理はない。
聖夜は間の悪さと自分の意気地のなさに苛立ちながら、再び口を開こうとした。
しかし、

「あれれ~? もしかして青りんごと聖夜~?」

聞き覚えのある独特の間延びした声に、幸助と聖夜は声の方を振り向いた。
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