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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!
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「おかえりなさいませ! ご主人様! ただいま『ドキドキ☆じゃんけん大会』の期間でございますので、ご主人様には私たちとじゃんけんしていただきますっ!」
「え? え? え?」
入り口で出迎えてくれたメイドの言葉に、幸助は彼女と聖夜の顔を交互に見ながら戸惑いの表情を浮かべた。
今回はそういったイベントがないと聞いていた幸助にとって寝耳に水といった状態なのだろう。
聖夜にとってもそれは同じだったが、またウサギ耳をつけたりという普段とは違う幸助を見られると思うと、密かにガッツポーズをしたい気持ちだった。
「ルールは簡単です! まず私とご主人様たちがじゃんけんします! ご主人様が勝ったらプチケーキをプレゼント! でももしご主人様が負けたら、くじを引いてその中に書いている罰ゲームをしてもらいますっ! ね? 簡単でしょ?」
メイドが可愛らしく首を傾げるが、プチケーキと罰ゲームが果たして対等なものなのか甚だ疑問だ。
「罰ゲームと言っても心配しなくていいですよ! 事前にご主人様たちにしたい罰ゲームをアンケートしたものですからいやなものはないはずです!」
「したい罰ゲームって、それって罰ゲームなんですか!?」
「……そういった嗜好の奴もいるんだよ。まぁ、とりあえず勝てばいいだけの話じゃねぇか」
もっともなツッコミを放つ幸助の肩を叩いてなだめる。
「そうですよ! 勝てばいいだけの話です! それに私、すごくじゃんけん弱いんですよ~。今日は一度もまだ勝てていません~」
メイドの言葉はいかにも嘘くさいが、幸助は「そうなんですか」とあからさまにほっとした顔をした。
その騙されやすさは心配にもなるが、今回は有り難い。
「それではいきますよー! じゃんけん~……」
勢いよくメイドが拳を振り上げたので、聖夜達も思わずじゃんけんの体勢に入る。
「ぽーん!」
メイドが出したのがパー。
聖夜がチョキ。
そして幸助がグー。
「あ……」
「わぁ! やったぁ! 今日初勝利ですぅ!」
メイドが嬉しそうにぴょんぴょんと跳ね上がる。
その横で幸助は自分の拳を呆然と見詰めていた。
「それじゃあ、この中から一枚だけ引いてください!」
可愛らしい字で『罰ゲーム』と書かれた箱を持って幸助の方へ差し出す。
幸助はごくりと唾を飲んでからその中に手を突っ込んだ。
「……じゃあ、これで」
「はい、かしこまりました! それでは確認させていただきますね!」
おずおずと箱から抜き取った幸助のくじをメイドがサッと受け取った。
そしてくじを開いて中身を確認すると、最初は目を丸くしていたが、すぐに満面の笑みを浮かべた。
「ご主人様おめでとうございますぅ! これは当たりくじです!」
「え!」
希望の光が差し込んだように幸助の顔が明るくなる。
「当たりくじってことは罰ゲーム免除ってことですか?」
「あははは、そんなわけないじゃなですか~! さぁ、準備があるのでこちらにどうぞ!」
「えぇ?」
嬉々としてメイドが困惑する幸助の腕を引いて奥へと連れて行く。
残された聖夜は唖然として立ち尽くしていたが、すぐに他のメイドがやって来た。
「ご主人様はこちらへどうぞ~!」
「あ、あの、アイツは……?」
幸助が連れ去られた方を指差しながら問うと、メイドはにっこりと笑って「すぐに戻って参ります」とだけ言って聖夜を席へ案内した。
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