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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!
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「変な言いがかりするんじゃねぇよ! 俺がこんなことするわけないだろ! 大体、証拠はあるのかよ!」
「証拠ならあるよぉ~」
一触即発な空気にそぐわないのんびりした声が乱入して、竜鬼さんも聖夜さんも目を見開いて声の主の方へと振り向いた。
いつの間にかホールに厨房の主である桜季さんが立っていた。
その手には携帯電話が握られている。
「パスコードが自分の誕生日とか分かりやすすぎでしょ~」
そう言ってにやりと笑うと、桜季さんは携帯電話を前にかざした。
画面にはばらまかれた写真と同じものが写っていた。
「な……っ! なんでお前、俺の携帯を……!」
「俺からしたらロッカーの鍵なんてオモチャみたいなもんだよぉ」
自分の携帯を奪い返そうとする竜鬼さんを軽くかわして、桜季さんはさらに携帯をいじる。
「あ、ユキって子と連絡取り合ってるねぇ。これは完全な証拠でしょ~」
「お、お前……っ!」
竜鬼さんが桜季さんに目がけて拳を振り上げた。
しかし、その拳が桜季さんのところまで届くことはなかった。
「ストップです、竜鬼さん」
竜鬼さんの手首を掴んで右京君が諭すような声で言った。
「離せよ、右京!」
竜鬼さんが鋭い目で右京君を睨み付けた。
けれど右京君に怯む様子はなかった。
「もう証拠は揃ってるんですから、これ以上見苦しさを重ねない方がいいですよ」
「お~! らっきょうたまにはいいこと言うねぇ。惚れちゃう~」
「うるせーです。とりあえず、事務所の方に行きましょうか」
「……っ、クソ!」
「あ……!」
竜鬼さんは右京君の腕を振り払い、そのまま店の出入り口に向かって走り出した。
「大人しく行くわけねぇだろうが! このバーカ……っ、てっ!」
振り返りながら右京君たちに向かって悪態を吐き捨てる竜鬼さんは前に立つ人物に気づかず、出口を前にしてぶつかりその場に尻餅をついてしまった。
すぐに立ち上がって逃走を図ろうとした竜鬼さんの顔が、自分の目の前に立つ人物を見て固まった。
「……おい、人を陥れてまで自分がのし上がろうなんて、随分と野心家だな」
「オ、オーナー……!」
声だけで竜鬼さんの顔がどれだけ引き攣っているかが簡単に想像できた。
無理もない。
旧知の僕でさえ震えが止まらないほど、テツ君の顔は恐ろしい形相となっていた。
ほ、本当に僕の知ってるテツ君……?
思わず人違いの可能性を疑ってしまう凶悪な顔のまま、テツ君はしゃがみ込んで竜鬼さんの顔を覗いた。
「いやいや、その野心には感心する。ホストとして大切なものだ。……けどな、」
ガッ! と竜鬼さんの頭を上から片手で掴んだ。
「ひ!」
掴まれていない僕まで思わず声を上げてしまった。
「ルールはちゃんと守らねぇといけねぇ……、だろ?」
「は、はぃ……」
威勢をむしり取られたようなか細い竜鬼さんの声で、この騒ぎは幕が下りた。
「証拠ならあるよぉ~」
一触即発な空気にそぐわないのんびりした声が乱入して、竜鬼さんも聖夜さんも目を見開いて声の主の方へと振り向いた。
いつの間にかホールに厨房の主である桜季さんが立っていた。
その手には携帯電話が握られている。
「パスコードが自分の誕生日とか分かりやすすぎでしょ~」
そう言ってにやりと笑うと、桜季さんは携帯電話を前にかざした。
画面にはばらまかれた写真と同じものが写っていた。
「な……っ! なんでお前、俺の携帯を……!」
「俺からしたらロッカーの鍵なんてオモチャみたいなもんだよぉ」
自分の携帯を奪い返そうとする竜鬼さんを軽くかわして、桜季さんはさらに携帯をいじる。
「あ、ユキって子と連絡取り合ってるねぇ。これは完全な証拠でしょ~」
「お、お前……っ!」
竜鬼さんが桜季さんに目がけて拳を振り上げた。
しかし、その拳が桜季さんのところまで届くことはなかった。
「ストップです、竜鬼さん」
竜鬼さんの手首を掴んで右京君が諭すような声で言った。
「離せよ、右京!」
竜鬼さんが鋭い目で右京君を睨み付けた。
けれど右京君に怯む様子はなかった。
「もう証拠は揃ってるんですから、これ以上見苦しさを重ねない方がいいですよ」
「お~! らっきょうたまにはいいこと言うねぇ。惚れちゃう~」
「うるせーです。とりあえず、事務所の方に行きましょうか」
「……っ、クソ!」
「あ……!」
竜鬼さんは右京君の腕を振り払い、そのまま店の出入り口に向かって走り出した。
「大人しく行くわけねぇだろうが! このバーカ……っ、てっ!」
振り返りながら右京君たちに向かって悪態を吐き捨てる竜鬼さんは前に立つ人物に気づかず、出口を前にしてぶつかりその場に尻餅をついてしまった。
すぐに立ち上がって逃走を図ろうとした竜鬼さんの顔が、自分の目の前に立つ人物を見て固まった。
「……おい、人を陥れてまで自分がのし上がろうなんて、随分と野心家だな」
「オ、オーナー……!」
声だけで竜鬼さんの顔がどれだけ引き攣っているかが簡単に想像できた。
無理もない。
旧知の僕でさえ震えが止まらないほど、テツ君の顔は恐ろしい形相となっていた。
ほ、本当に僕の知ってるテツ君……?
思わず人違いの可能性を疑ってしまう凶悪な顔のまま、テツ君はしゃがみ込んで竜鬼さんの顔を覗いた。
「いやいや、その野心には感心する。ホストとして大切なものだ。……けどな、」
ガッ! と竜鬼さんの頭を上から片手で掴んだ。
「ひ!」
掴まれていない僕まで思わず声を上げてしまった。
「ルールはちゃんと守らねぇといけねぇ……、だろ?」
「は、はぃ……」
威勢をむしり取られたようなか細い竜鬼さんの声で、この騒ぎは幕が下りた。
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