35歳からの楽しいホストクラブ

綺沙きさき(きさきさき)

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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!

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「……おい、掃除全然できてねぇじゃねぇか」

コツコツと近づく靴音とともにトイレ内に響いた声に、その場にいるみんなが顔を向けた。

「あ……!」

現れた人物に僕は安堵の声を漏らした。

「聖夜さん!」
「清掃中っていうならもう一回やり直せよ。テメェらの舌で、っ!」

言うやいなや、聖夜さんは長い脚で手前の不良の顎を目がけて蹴り上げた。

「っぐぁ!」

顎を蹴られふらついた不良は脇腹をさらに横蹴りされあっけなく倒れてしまった。
残り二人の少年は、聖夜さんに睨まれると脱兎のごとく仲間を置いて逃げ出した。
立ち去った不良少年の背中を見送ってから聖夜さんはくるりと僕の方を振り返った。
そして、大きな溜め息を吐いた。

「アンタなにオタク狩りに合ってるんだよ」
「オ、オタク狩り……?」
「フィギュアとか買うために大金持って来ている弱そうなオタクを狙ったカツアゲだよ」

聖夜さんが忌々しげに吐き捨てた。

そ、そんな狩りがあるとは……!

親父狩りは前に話題になってニュースで聞いたことがあるけど、まさかそんな言葉まであるとは知らなかった。

「助けてくれてありがとうございました。でもどうしてここが分かったんですか?」
「さっきメイド喫茶で撮った写メ見せて聞き回ったんだよ。そしたら可愛い女子高生とトイレに向かって行ったって話を聞いたんだよ」
「え! さっきの写真を見せたんですか!」
「緊急事態だ、仕方ないだろ」
「う……」

仕方ないとはいえ、あの姿を他の人に見られたと思うと恥ずかしい。
さっきまでこの場を逃げ出したくてしょうがなかったのに、今はここを出るのが怖い……。

「ほら、さっさと立てよ。今度こそレアもん引いてくれんだろう?」

そう言って聖夜さんが手を差し伸べた。
不良少年とは違うあたたかさが溢れる手だ。

「……はい!」

僕は笑顔でその手を握って立ち上がった。

「ふふふ」
「なんだよ、急に笑って気持ちわりぃ」

つい笑いが零れてしまった僕に、聖夜さんが怪訝そうに眉を顰めた。

「あ、すみません。いやぁ、やっぱり聖夜さんは王子様だなぁと思って」
「はぁ!?」

聖夜さんが顔を顰めた。

「いや、ピンチの場面に颯爽と現れて救い出すなんて王子様みたいじゃないですか」

相手が可愛いお姫様じゃなく中年の僕という点を除けばの話だけれど。

「僕の立ち位置が愛良さんだったら完璧なお姫様と王子様の図でしたけどね。うーん、残念」

なんだか完璧な構図を汚したようで申し訳なくて苦笑すると、

「……俺はアンタでいい」
「え?」
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