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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!
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ドスのきいた声と、獲物を射るような鋭い目に背筋に鳥肌が立つ。
これってまさか……、カツアゲ!?
学生時代に一回遭遇したことがあるけれど、その時と全く同じ空気だ。
唯一違う点と言えば、あの時はテツ君がすぐにやって来て相手を殴り飛ばしたおかげで事なきを得たことだ。
けれど今は味方は一人もいない。
たぶん大声で助けを呼んだとしても、騒音の巣窟であるゲームセンターには、僕の情けないSOSなど届かないだろう。
もちろん真っ正面から挑んで少年達に勝てるはずもない。
どうしよう、どうしよう……!
どうにかしてこの状況から脱することは出来ないか視線をあちこちに動かしていると、
「おい! 聞こえてんのか! さっさと持ち金全部出せって言ってるんだよ! どうせ気持ちわりぃフィギュアとか買うのに金おろしてんだろ!」
金髪の少年が胸ぐらを掴んで、鋭い目で詰め寄った。
「マジ、あんなのに金払うとかオタクキモいわ」
「金の無駄遣いだよなぁ」
「だから俺らがその金有効活用してやるよ」
「それな」
アハハハ、と嫌な笑いがわき上がる。
「……あの、僕の財布、三千円しか入ってないですよ」
恐る恐る申告すると、少年達は笑いから一転、顔を露骨に顰めた。
「はぁ? ウソつくんじゃねぇぞ!」
「ひ! ほ、本当です!」
「今どき中学生でももっと持ってるだろ!」
「いやぁ、今月は少し厳しくて……」
売れないホストはそんなに収入もよくない上、今月は結婚式など急な出費が相次いだのだ。
財布事情が今どきの中学生に劣るのも無理はない。
金髪の少年は舌打ちをすると、ドンと僕を突き放すように胸ぐらを掴んでいた手を離して立ち上がった。
よかった……、もしかすると僕の財布事情に呆れてカツアゲを諦めてくれたのかもしれない。
しかし、事はそう簡単にいかないようだ。
「じゃあカード出せよ。持ち金なくても口座にならあるだろ」
「……え? ええ!?」
まさか財布がダメなら口座となるとは思いも寄らず当惑していると、
「いいからサッサとしろよ! このクソオタクが!」
少年が吊り上げるようにして胸倉を掴んで僕を無理矢理立たせた。
ど、どうしよう……!
心臓がドクドクと胸を打つ。
とりあえずカードを渡して、そのまま店員さんを呼んだ方がいいのだろうか……。
そんなことを考えていると、突然、黄色い物体が猛スピードで飛んできて、それが少年の頭に見事直撃した。
少年はその場に倒れた。
その拍子に僕も彼の手から解放され、その場に尻餅をついた。
周りの仲間たちも突然飛んできたものに唖然として固まっていた。
少年に向かって飛んできたものは『清掃中』と書いた黄色い看板だった。
これってまさか……、カツアゲ!?
学生時代に一回遭遇したことがあるけれど、その時と全く同じ空気だ。
唯一違う点と言えば、あの時はテツ君がすぐにやって来て相手を殴り飛ばしたおかげで事なきを得たことだ。
けれど今は味方は一人もいない。
たぶん大声で助けを呼んだとしても、騒音の巣窟であるゲームセンターには、僕の情けないSOSなど届かないだろう。
もちろん真っ正面から挑んで少年達に勝てるはずもない。
どうしよう、どうしよう……!
どうにかしてこの状況から脱することは出来ないか視線をあちこちに動かしていると、
「おい! 聞こえてんのか! さっさと持ち金全部出せって言ってるんだよ! どうせ気持ちわりぃフィギュアとか買うのに金おろしてんだろ!」
金髪の少年が胸ぐらを掴んで、鋭い目で詰め寄った。
「マジ、あんなのに金払うとかオタクキモいわ」
「金の無駄遣いだよなぁ」
「だから俺らがその金有効活用してやるよ」
「それな」
アハハハ、と嫌な笑いがわき上がる。
「……あの、僕の財布、三千円しか入ってないですよ」
恐る恐る申告すると、少年達は笑いから一転、顔を露骨に顰めた。
「はぁ? ウソつくんじゃねぇぞ!」
「ひ! ほ、本当です!」
「今どき中学生でももっと持ってるだろ!」
「いやぁ、今月は少し厳しくて……」
売れないホストはそんなに収入もよくない上、今月は結婚式など急な出費が相次いだのだ。
財布事情が今どきの中学生に劣るのも無理はない。
金髪の少年は舌打ちをすると、ドンと僕を突き放すように胸ぐらを掴んでいた手を離して立ち上がった。
よかった……、もしかすると僕の財布事情に呆れてカツアゲを諦めてくれたのかもしれない。
しかし、事はそう簡単にいかないようだ。
「じゃあカード出せよ。持ち金なくても口座にならあるだろ」
「……え? ええ!?」
まさか財布がダメなら口座となるとは思いも寄らず当惑していると、
「いいからサッサとしろよ! このクソオタクが!」
少年が吊り上げるようにして胸倉を掴んで僕を無理矢理立たせた。
ど、どうしよう……!
心臓がドクドクと胸を打つ。
とりあえずカードを渡して、そのまま店員さんを呼んだ方がいいのだろうか……。
そんなことを考えていると、突然、黄色い物体が猛スピードで飛んできて、それが少年の頭に見事直撃した。
少年はその場に倒れた。
その拍子に僕も彼の手から解放され、その場に尻餅をついた。
周りの仲間たちも突然飛んできたものに唖然として固まっていた。
少年に向かって飛んできたものは『清掃中』と書いた黄色い看板だった。
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