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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!
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「ここですか?」
「そうです」
女の子に連れられて来たのは、ゲームセンターの奥にある男子トイレの前だった。
「もう三十分くらい出てこなくて……。携帯に連絡入れても返事がないし……」
女の子が不安げに言った。
彼女の話によると、一緒に来た彼氏さんがお腹が痛いと言ってトイレに入ってからずっと出てこないらしい。
心配だけれどまさかうら若き女の子が男子トイレに入るわけにもいかず、途方に暮れていたそうだ。
「それは心配ですよね。分かりました。じゃあ僕が中を見てきますね。ドアが閉まっていてもノックをすれば倒れたりしていなければ返事があるでしょうし」
「ありがとうございます!」
目を輝かせて女の子が頭を下げた。
若い女の子に感謝されるのは、やっぱり男として悪い気はしない。
というか、単純に嬉しい。
顔がにやける前に女の子に背を向け、トイレへ向かった。
トイレは無人だった。
洗面台を通り過ぎて、奥の個室トイレを覗く。
どの個室も空だったけれど、一番奥のトイレだけがドアが閉まっていた。
恐らく女の子の彼氏さんがここに入っているのだろう。
控えめにノックをして呼び掛けた。
「……あの、すみません。あなたの彼女さんが外で心配しています。もし体調悪ければ店員さん呼びましょうか?」
返事はない。
まさか倒れているのだろうか……。
心配になってもう一度大きめにノックをすると、ガチャ、とドアが開いた。
あ、よかった。
倒れてなかったみたい。
ほっとしたのも束の間、出てきた金髪の目つきの鋭い少年が、ニヤッと口の端を嫌な感じに吊り上げたと同時に、腹部に衝撃が走った。
その衝撃に吹き飛ばされるようにして、床に倒れた。
突き出された少年の足を見て、ようやく自分が蹴られたことに気づいた。
「やっぱりオタクちょろいわ~。女子高生の頼みとあればホイホイ来るもんな」
金髪の少年がニヤニヤと笑いながら言った。
すると、さらに三人、明らかに不良といった感じの少年がぞろぞろとやって来た。
「マジちょろいな」
「外はミホに見張りさせてるから大丈夫」
「一応、清掃中の看板も置いてきたし」
「サンキュ」
自分より圧倒的に若く、体格のいい少年達に取り囲まれゴクリと唾を飲み込む。
すると金髪の少年が僕の前にしゃがんで手を差し出した。
その手が救いの手でないことは明らかだ。
少年はニヤリと笑った。
「状況は分かってるよな? ケガしたくなければ有り金全部出せ、このクソオタク」
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