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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!
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聖夜さんが凄まじいスピードで僕の元に駆け寄ってキーホルダーを取り上げた。
そして手の中のキーホルダーを凝視した後、体中の気が抜けるような大きなため息を吐いた
「よかったぁ。マジ見つからなかったらどうしようかと思った。あーマジ心臓に悪いわ。あー、やべぇ。二十四時間ぶりの紅葉たんマジかわいい」
「せ、聖夜さん……?」
恍惚とした表情でキーホルダーを見つめる聖夜さんに恐る恐る声を掛ける。
聖夜さんはそこでようやく僕の存在を思い出したようにハッと顔を上げた。
しん、と沈黙が舞い降りた。
しかしその沈黙はすぐに破られた。
聖夜さんの顔に張り付けられた王子様スマイルによって。
なぜだろう……。
無表情よりも笑顔の方が怖いと感じるのは。
「……コウさん、でしたっけ? いやぁ、ありがとうございます。僕の捜し物を見つけてくれて」
「い、いや、僕はたまたま見つけただけです。でもよかったです、持ち主が見つかって。安心しました」
「僕も安心しました。ふふ」
「あ、あははは」
「ふふふ……」
このまま和やかな笑い声でフェイドアウトしていくものだと思っていた。
けれど世の中はそんなに甘くなかった。
ダンッ!
僕の横をかすめて聖夜さんの拳が背後のロッカーに直撃した。
「……ところでコウさん。あなたは何か見ましたか?」
「え?」
目をしばたかせる僕に、聖夜さんはさらに威圧感がにじみ出る笑みで迫ってきた。
「見てないですよね? 僕の落とし物も、僕の言動もすべて。というか、そもそも僕はここに来ていなかった。そうですよね?」
「え、えっと……」
え? え? どういうこと?
聖夜さんは現にここにいるのに……え? どういうこと?
頭の中がはてなマークでいっぱいになって返事にまごついていると、聖夜さんがおもむろにロッカーにあてていた拳をずるずるとおろした。
そして、拳を自分のポケットにおさめた瞬間、長い脚でガン! とロッカーを蹴った。
「ひっ!」
「いいか? よく聞けよ。俺は今日ここには来てない、そうだよな?」
目が全く笑っていない笑顔で詰め寄られ、僕はただコクコクと頷くしかできなかった。
それを見て、聖夜さんは静かに脚を降ろした。
「……よし。口止め完了」
「口止めって……。そのキーホルダー持っていることそんなに知られたくないんですか?」
素朴な疑問を口にすると、聖夜さんはギロリと僕を睨んだ。
「あぁ? 当たり前だろ。こんなこと知れたらホスト生命絶たれるわ」
「別に恥ずかしいことじゃないですか。姪っ子さんとかへのプレゼントでしょう? むしろ子供好きな面が垣間見えていいんじゃないですか」
「……俺のだけど」
「え?」
そして手の中のキーホルダーを凝視した後、体中の気が抜けるような大きなため息を吐いた
「よかったぁ。マジ見つからなかったらどうしようかと思った。あーマジ心臓に悪いわ。あー、やべぇ。二十四時間ぶりの紅葉たんマジかわいい」
「せ、聖夜さん……?」
恍惚とした表情でキーホルダーを見つめる聖夜さんに恐る恐る声を掛ける。
聖夜さんはそこでようやく僕の存在を思い出したようにハッと顔を上げた。
しん、と沈黙が舞い降りた。
しかしその沈黙はすぐに破られた。
聖夜さんの顔に張り付けられた王子様スマイルによって。
なぜだろう……。
無表情よりも笑顔の方が怖いと感じるのは。
「……コウさん、でしたっけ? いやぁ、ありがとうございます。僕の捜し物を見つけてくれて」
「い、いや、僕はたまたま見つけただけです。でもよかったです、持ち主が見つかって。安心しました」
「僕も安心しました。ふふ」
「あ、あははは」
「ふふふ……」
このまま和やかな笑い声でフェイドアウトしていくものだと思っていた。
けれど世の中はそんなに甘くなかった。
ダンッ!
僕の横をかすめて聖夜さんの拳が背後のロッカーに直撃した。
「……ところでコウさん。あなたは何か見ましたか?」
「え?」
目をしばたかせる僕に、聖夜さんはさらに威圧感がにじみ出る笑みで迫ってきた。
「見てないですよね? 僕の落とし物も、僕の言動もすべて。というか、そもそも僕はここに来ていなかった。そうですよね?」
「え、えっと……」
え? え? どういうこと?
聖夜さんは現にここにいるのに……え? どういうこと?
頭の中がはてなマークでいっぱいになって返事にまごついていると、聖夜さんがおもむろにロッカーにあてていた拳をずるずるとおろした。
そして、拳を自分のポケットにおさめた瞬間、長い脚でガン! とロッカーを蹴った。
「ひっ!」
「いいか? よく聞けよ。俺は今日ここには来てない、そうだよな?」
目が全く笑っていない笑顔で詰め寄られ、僕はただコクコクと頷くしかできなかった。
それを見て、聖夜さんは静かに脚を降ろした。
「……よし。口止め完了」
「口止めって……。そのキーホルダー持っていることそんなに知られたくないんですか?」
素朴な疑問を口にすると、聖夜さんはギロリと僕を睨んだ。
「あぁ? 当たり前だろ。こんなこと知れたらホスト生命絶たれるわ」
「別に恥ずかしいことじゃないですか。姪っ子さんとかへのプレゼントでしょう? むしろ子供好きな面が垣間見えていいんじゃないですか」
「……俺のだけど」
「え?」
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