123 / 228
第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!
14
しおりを挟む****
いつも通り、厨房の仕事や掃除のため早めに出勤すると、更衣室には意外な人物がいた。
「……あれ? 聖夜さん?」
僕の声に聖夜さんの肩がビクっと跳ねた。
聖夜さんは訝しげに僕の方を振り返った。
「……どうも」
「聖夜さんがこんな時間に珍しいですね」
人気ホストの人は同伴でくることが多いので、こんな時間に更衣室で会うことは滅多にない。
「いや……ちょっと探しものがあって……」
そう言うと聖夜さんは口をつぐんだ。
昨日と同じ無表情だったものの、その表情からは焦りの色が窺えた。
「大事なものですか?」
「まぁ……」
「よければ一緒に探しますよ!」
「……いや、自分で探すからいい」
よかれと思って申し出たのだけれど、聖夜さんはすげなく断った。
あまり干渉されるのは好きじゃないのかもしれない。
そう思った僕は「じゃあもし落とし物を見つけた時は声をかけますね」とだけ言って自分のロッカーに向かった。
トイレ掃除などもあるのでまだ着替えずに荷物だけ置いてロッカーを閉めようとした時、ハンガーにかけているスーツのポケットの小さな膨らみに気づいた。
あ、そういえば、昨日は桜季さんとの件で持ち主を探すのすっかり忘れてた!
ポケットの中から、昨日拾ったフラワーキュアーズのキーホルダーを取り出す。
あらためて考えると、子供向けのキーホルダーを持っている人が思い浮かばない。
もしかすると、桜季さんみたいに姪っ子さんが好きで買ったものかもしれない。
だとすると、持ち主は姪っ子さんに渡せず困っているかもしれない。
ふと、まだ更衣室を歩き回り捜し物をする聖夜さんの姿が目に留まった。
もしかして聖夜さんの?
分からないけれど聞いてみるだけ聞いてみよう。
「あの、聖夜さん。もしかして捜し物ってこれですか?」
聖夜さんが振り返る。
僕の手からぶら下がるキーホルダーを目にした瞬間、聖夜さんの目がカッと見開かれた。
あ、もしかして、人が真剣に捜し物をしてるのにって怒らせたかな……。
考えてみれば、成人男性に失礼な質問だったかもしれない。
慌てて謝罪と弁解を連ねようとした時、
「紅葉(くれは)たん!」
「え?」
10
お気に入りに追加
739
あなたにおすすめの小説

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

病んでる愛はゲームの世界で充分です!
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。
幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。
席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。
田山の明日はどっちだ!!
ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。
BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。
11/21
本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる