35歳からの楽しいホストクラブ

綺沙きさき(きさきさき)

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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!

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いつも通り、厨房の仕事や掃除のため早めに出勤すると、更衣室には意外な人物がいた。

「……あれ? 聖夜さん?」

僕の声に聖夜さんの肩がビクっと跳ねた。
聖夜さんは訝しげに僕の方を振り返った。

「……どうも」
「聖夜さんがこんな時間に珍しいですね」

人気ホストの人は同伴でくることが多いので、こんな時間に更衣室で会うことは滅多にない。

「いや……ちょっと探しものがあって……」

そう言うと聖夜さんは口をつぐんだ。
昨日と同じ無表情だったものの、その表情からは焦りの色が窺えた。

「大事なものですか?」
「まぁ……」
「よければ一緒に探しますよ!」
「……いや、自分で探すからいい」

よかれと思って申し出たのだけれど、聖夜さんはすげなく断った。
あまり干渉されるのは好きじゃないのかもしれない。
そう思った僕は「じゃあもし落とし物を見つけた時は声をかけますね」とだけ言って自分のロッカーに向かった。
トイレ掃除などもあるのでまだ着替えずに荷物だけ置いてロッカーを閉めようとした時、ハンガーにかけているスーツのポケットの小さな膨らみに気づいた。

あ、そういえば、昨日は桜季さんとの件で持ち主を探すのすっかり忘れてた!

ポケットの中から、昨日拾ったフラワーキュアーズのキーホルダーを取り出す。

あらためて考えると、子供向けのキーホルダーを持っている人が思い浮かばない。
もしかすると、桜季さんみたいに姪っ子さんが好きで買ったものかもしれない。
だとすると、持ち主は姪っ子さんに渡せず困っているかもしれない。

ふと、まだ更衣室を歩き回り捜し物をする聖夜さんの姿が目に留まった。

もしかして聖夜さんの?
分からないけれど聞いてみるだけ聞いてみよう。

「あの、聖夜さん。もしかして捜し物ってこれですか?」

聖夜さんが振り返る。
僕の手からぶら下がるキーホルダーを目にした瞬間、聖夜さんの目がカッと見開かれた。

あ、もしかして、人が真剣に捜し物をしてるのにって怒らせたかな……。

考えてみれば、成人男性に失礼な質問だったかもしれない。
慌てて謝罪と弁解を連ねようとした時、

「紅葉(くれは)たん!」
「え?」
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