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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!
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「フリルが可愛くてお姫様みたいですね。王子様みたいな聖夜さんと一緒にいると本当のお姫様に見えます」
薄いピンクの生地に幾重にも連なるフリルのワンピース、そして甘い茶色の髪が縦に巻かれていて本当にお姫様みたいだ。
お姫様という言葉がよかったのか、愛良さんはさっきとは違う明るい表情で顔を上げた。
「えぇ、そうかなぁ。そう見える?」
「見えますよ。お伽噺みたいです!」
「えへへ、嬉しい~。あ、お酒、おかわり作ってくれる?」
「はい! 喜んで!」
愛良さんが差し出したグラスを受け取ってお酒を作る。
「あなた、名前は何て言ってったけ?」
「コウです」
「へぇ、コウね。覚えておくわ」
「ありがとうございます」
出来上がったお酒を愛良さんに差し出す。
「ありがと。コウはあれね、他のホストとは違って静かで影が薄いからいいわね。邪魔にならない」
「えへへ、ありがとうございます」
たぶん褒められているわけじゃないけど、それでも好印象ではあるようだ。
僕は嬉しくて頭を掻いて笑った。
「他のホストはチャラいから嫌なのよねぇ。愛良と聖夜の世界が台無しになっちゃうもん」
愛良さんは唇を尖らせて、グラスに浮かぶ氷を突いた。
「その点あなたはいいわ。謙虚で静かだし」
「ありがとうございます。お二人がお姫様と王子様なら僕はさしずめ執事といったところでしょうか」
「あはは、上手い! その設定いいわね!」
愛良さんは上機嫌でお酒を煽った。
「……でも真面目な話、本当に聖夜って王子様みたいよね。私、結構ホストクラブいろいろ行ってるんだけど、あんなに王子様みたいな人初めて会った」
うっとりとした溜め息を吐く愛良さんに僕は頷いた。
「僕もそう思います。なかなかあんな人はいないですよね」
「そう、なかなかいないのよ。確かにイケメンはたくさんいるけど、チャラい奴が多いのよね。あんな品のある王子様みたいなホストは聖夜だけよ! 唯一無二! 完全無欠の王子様!」
「僕がいない間に随分仲良くなってるみたいだね」
愛良さんが聖夜さんについて熱く語っていると、いつの間にか本人がソファの後ろに立って僕らの間から顔を挟んだ。
突然の本人の登場に、愛良さんも驚いていたが、聖夜さんとの顔の近さに顔を赤らめて満更でもない様子だ。
「せ、聖夜! もぉ、遅いよぉ。待ちくたびれたんだから」
「ふふふ、ごめんね」
聖夜さんはソファを回って愛良さんの元へ行くと、その場にひざまずいて彼女の手の甲にキスをした。
それは正しく王子様そのものだった。
「お待たせ、僕の愛しのお姫様」
そしてトドメの上目遣いでウィンク。
僕がやったらズッコケのギャグになるに違いないけれど、さすが聖夜さんと言うべきか、愛良さんはうっとりと瞳を潤ませている。
感激の震えがこちらまで伝わってきそうなくらいだ。
僕に出来ることといえば、気配を消して横に控える執事の役に徹するか、もしくは背景の一部に溶け込むくらいのものだった……。
薄いピンクの生地に幾重にも連なるフリルのワンピース、そして甘い茶色の髪が縦に巻かれていて本当にお姫様みたいだ。
お姫様という言葉がよかったのか、愛良さんはさっきとは違う明るい表情で顔を上げた。
「えぇ、そうかなぁ。そう見える?」
「見えますよ。お伽噺みたいです!」
「えへへ、嬉しい~。あ、お酒、おかわり作ってくれる?」
「はい! 喜んで!」
愛良さんが差し出したグラスを受け取ってお酒を作る。
「あなた、名前は何て言ってったけ?」
「コウです」
「へぇ、コウね。覚えておくわ」
「ありがとうございます」
出来上がったお酒を愛良さんに差し出す。
「ありがと。コウはあれね、他のホストとは違って静かで影が薄いからいいわね。邪魔にならない」
「えへへ、ありがとうございます」
たぶん褒められているわけじゃないけど、それでも好印象ではあるようだ。
僕は嬉しくて頭を掻いて笑った。
「他のホストはチャラいから嫌なのよねぇ。愛良と聖夜の世界が台無しになっちゃうもん」
愛良さんは唇を尖らせて、グラスに浮かぶ氷を突いた。
「その点あなたはいいわ。謙虚で静かだし」
「ありがとうございます。お二人がお姫様と王子様なら僕はさしずめ執事といったところでしょうか」
「あはは、上手い! その設定いいわね!」
愛良さんは上機嫌でお酒を煽った。
「……でも真面目な話、本当に聖夜って王子様みたいよね。私、結構ホストクラブいろいろ行ってるんだけど、あんなに王子様みたいな人初めて会った」
うっとりとした溜め息を吐く愛良さんに僕は頷いた。
「僕もそう思います。なかなかあんな人はいないですよね」
「そう、なかなかいないのよ。確かにイケメンはたくさんいるけど、チャラい奴が多いのよね。あんな品のある王子様みたいなホストは聖夜だけよ! 唯一無二! 完全無欠の王子様!」
「僕がいない間に随分仲良くなってるみたいだね」
愛良さんが聖夜さんについて熱く語っていると、いつの間にか本人がソファの後ろに立って僕らの間から顔を挟んだ。
突然の本人の登場に、愛良さんも驚いていたが、聖夜さんとの顔の近さに顔を赤らめて満更でもない様子だ。
「せ、聖夜! もぉ、遅いよぉ。待ちくたびれたんだから」
「ふふふ、ごめんね」
聖夜さんはソファを回って愛良さんの元へ行くと、その場にひざまずいて彼女の手の甲にキスをした。
それは正しく王子様そのものだった。
「お待たせ、僕の愛しのお姫様」
そしてトドメの上目遣いでウィンク。
僕がやったらズッコケのギャグになるに違いないけれど、さすが聖夜さんと言うべきか、愛良さんはうっとりと瞳を潤ませている。
感激の震えがこちらまで伝わってきそうなくらいだ。
僕に出来ることといえば、気配を消して横に控える執事の役に徹するか、もしくは背景の一部に溶け込むくらいのものだった……。
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