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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!
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「三番テーブル、フルーツ盛り大ひとつ!」
「あ、はい!」
「五番テーブルに濡絞五枚くらい持って来て! 客が酒をこぼしたみたい」
「は、はい、ただいま!」
次々と厨房にやってくる注文にどうにかこうにか対応し終わり、ふぅと丸椅子に座って一息ついていると、
「青葉さん、お疲れ様です」
店長の菱田さんが厨房の出入り口から顔を覗かせた。
「店長! お疲れ様です!」
「あ、立たなくてもいいですよ。今日はいつもに増してお客さんが多いからお疲れでしょう」
丸椅子から立ち上がって頭を下げる僕に、菱田さんが優しく言った。
確かに今日は客入りがいつもよりさらに多く、中年の体には少し堪える。
でもこの忙しい中、大きな失敗が今のところないのが何よりの救いだ。
「お疲れのところ悪いんですが、今連絡があって、あと三十分くらいで聖夜(せいや)が同伴のお客様をお連れするので、すみませんが準備とヘルプをお願いしていいですか?」
「聖夜さん……」
顔と名前を覚えるのが苦手な僕は、慌てて厨房に常備している男本というホストの顔写真とプロフィールが載った本を開いた。
「……あ、この人ですね」
そこには少しウェーブのかかった金髪の青年が載っていた。
甘さと上品さを兼ね備えた微笑みを浮かべていて、まるでお伽噺の王子様のようだった。
「うわぁ……! なんというか、すごくきれいな人ですね」
「でしょう? 聖夜は王子系ホストとして売り出している我が店のナンバーツーのホストなんです」
菱田さんが誇らしげに頷いて言った。
「ナンバーツー……! それはすごいですね」
ナンバーツーという言葉に思わずプレッシャーを感じる。
これはどんな粗相も許されないぞ……!
「まぁ、蓮の客と同じで、聖夜の客も聖夜にメロメロなのでヘルプはある意味他のホストの客より楽ですよ」
「それは有り難い……」
菱田さんの言葉にほっと安心する。
担当のホストさんにメロメロなお客様はヘルプに一気飲みなどの無茶ぶりをしないので、僕としてはすごく助かる。
担当ホストさんと二人きりの世界を邪魔しないように気配を殺して用がある時だけ動けばいいので、緊張はするけれど、注文が殺到する厨房で走り回るよりは体を休めることが出来る。
「じゃあ一休みしたら、VIPルームの準備をしておいてください」
「はい!」
水を一気に飲んで、僕はVIPルームに向かった。
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