35歳からの楽しいホストクラブ

綺沙きさき(きさきさき)

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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!

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右京君に漫画のようなげんこつを食らった桜季さんは唇を尖らせて退散していった。
そして残された僕は、漫画のようにソファの上に正座をさせられて説教を食らっている。

「いいですか、幸助さん。何度も言いますが、警戒心を持ってください。早急に」
「は、はい……」
「この間もそう言って返事してましたよね?」
「は、はい……」
「……幸助さん、警戒心って何か分かってますか」
「うぅ……、す、すみません……」

僕の向かいに正座する右京君が呆れ果てた溜め息を吐いた。
僕はひたすら項垂れるしかなかった。

「悪いのはもちろん桜季さんですから幸助さんが謝る必要はありません。ただ、隙があるからあんな変態につけ込まれるんです! 幸助さんも自分をちゃんと守らないと!」
「……ぼ、防犯ブザーを持つとか?」

自分で言いながらどんな職場だと心の中で突っ込む。
当然、右京君からも同じ突っ込みが入ると思ったけれど、右京君は真顔で「いえ、スタンガンにしましょう」と答えた。

「でも道具はあくまで最終手段です。それを使うことがないように、未然に防ぐ事が大事です。そのためにはしっかり警戒心を持ってください!」
「も、もちろん、持ってるよ! 今日も桜季さんの様子が少しおかしいなってああなる前に気づいたんだよ」
「じゃあその時に鳩尾でも蹴って逃げてください」
「そ、そんな、仕事の先輩に……」
「仕事の先輩である前に、あいつは幸助さんを狙う獣です、変態なんです。そのくらいして当然です」

ひどい言われようだ……。
確かに桜季さんは冗談の度が過ぎることがあるけど、それ以外では優しいし、基本的には陽気ないい人だ。
それに桜季さんにはいろいろとお世話になっている。
そんな仕事の先輩に、度の過ぎた冗談をかわすために、鳩尾を蹴るなんて恩を仇で返すようなことできない……。

「……今、いつもお世話になっている桜季さんにそんなことできない、って思ったでしょう」

心の中を言い当てられてドキッとする。
その反応に、右京君が一際大きな溜め息を吐いた。

「いいですか? その甘さが隙になんです! いつもお世話になっていようと、それとこれとは別問題です! だから……」
「おい、お前ら何してるんだ?」

声の方へ顔を向けると、蓮さんが眉根を寄せて立っていた。
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