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第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!
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「あはは、僕はまだ結婚していないよ。それに男の憧れは君の方だろう? 隣の可愛い子供が何よりの証拠だ」
そう言って武田君と手をつないでいる少女ににこりと笑いかけた。
少女は顔を赤くして武田君の影に隠れた。
「ははは! さすが吉井だな! 俺の娘まで惚れさせるとは。だが、娘はやらんぞ!」
「あはは、武田君、すっかりいいお父さんだね」
「こんにちは、お名前なんて言うの?」
僕がしゃがんで話し掛けるとびくりと小動物みたいに体が震えたけれど、小さな声で「……もも」と答えてくれた。
イケメンの晴仁の後に平凡な僕を見て少しほっとしたのかもしれない。
「へぇ、ももちゃんか。僕は青葉幸助。ももちゃんも今日は映画を観に来たの?」
ももちゃんは小さく頷いた。
「そっか、なんていう映画?」
「……あれ」
小さな手で壁に貼られているポスターを指差す。
それは『フラワー戦士フラワーキュア-ズ』と書かれた女の子向けのアニメ映画のものだった。
紙面にはカラフルな髪の色の少女達がポーズを決めて並んでいる。
「へぇ、フラワーキュア-ズかぁ。僕はよく知らないんだけど、どんなお話?」
「……フ、フラキュアが、お花をからしていくわるいインドールはくしゃくから、せかいとお花をまもるの」
口調はたどたどしいけれど、目はキラキラと輝いていて本当にフラキュアが大好きなことが十分に伝わってきた。
好きなことを話すとき、人は年齢や性別に関わらず素敵な表情になるなぁとあらためて思った。
「そっか、すごく楽しそうだね。映画、楽しんでね、ももちゃん」
「……うんっ」
ももちゃんは最初の人見知りもどこかに飛んでいったように明るい笑顔で元気よく頷いた。
「お、さすが、青葉だな。人見知りのももがすぐに心開くとは」
「あはは、僕が晴仁みたいにイケメンじゃないから緊張しないんじゃないかな」
「あはは、それもありそうだな!」
快活な笑い声を上げる武田君をももちゃんはきょとんと見上げていた。
「あ、そろそろ上映時間じゃない?」
晴仁が腕時計を見る。
「あ、やべっ! もうそんな時間か。また今度同窓会でもやろうぜ! それじゃあな!」
そう言うと、武田君はももちゃんを抱きかかえて走り出した。
肩越しにももちゃんが笑顔で手を振ってくれたので、僕も手を振り返した。
「あはは。武田君、本当にいいお父さんだね」
「そうだね」
「それにしてもやっぱり子供は可愛いね」
「こーすけは子供欲しいの?」
「いつかは欲しいよ。でも、まずは恋人から探さないと……」
僕は苦笑した。
子供や結婚云々の前の話だ。
「こーすけの子供ならきっと可愛いだろうね。その時は三人で映画を観に来ようよ」
「あはは、いいねそれ」
果たしてそんな明るい未来が来るのか、不安もあるけれど、しばらくは晴仁と気ままな映画鑑賞を楽しもう。
僕らはまた映画の話に戻って、映画館を後にした。
そう言って武田君と手をつないでいる少女ににこりと笑いかけた。
少女は顔を赤くして武田君の影に隠れた。
「ははは! さすが吉井だな! 俺の娘まで惚れさせるとは。だが、娘はやらんぞ!」
「あはは、武田君、すっかりいいお父さんだね」
「こんにちは、お名前なんて言うの?」
僕がしゃがんで話し掛けるとびくりと小動物みたいに体が震えたけれど、小さな声で「……もも」と答えてくれた。
イケメンの晴仁の後に平凡な僕を見て少しほっとしたのかもしれない。
「へぇ、ももちゃんか。僕は青葉幸助。ももちゃんも今日は映画を観に来たの?」
ももちゃんは小さく頷いた。
「そっか、なんていう映画?」
「……あれ」
小さな手で壁に貼られているポスターを指差す。
それは『フラワー戦士フラワーキュア-ズ』と書かれた女の子向けのアニメ映画のものだった。
紙面にはカラフルな髪の色の少女達がポーズを決めて並んでいる。
「へぇ、フラワーキュア-ズかぁ。僕はよく知らないんだけど、どんなお話?」
「……フ、フラキュアが、お花をからしていくわるいインドールはくしゃくから、せかいとお花をまもるの」
口調はたどたどしいけれど、目はキラキラと輝いていて本当にフラキュアが大好きなことが十分に伝わってきた。
好きなことを話すとき、人は年齢や性別に関わらず素敵な表情になるなぁとあらためて思った。
「そっか、すごく楽しそうだね。映画、楽しんでね、ももちゃん」
「……うんっ」
ももちゃんは最初の人見知りもどこかに飛んでいったように明るい笑顔で元気よく頷いた。
「お、さすが、青葉だな。人見知りのももがすぐに心開くとは」
「あはは、僕が晴仁みたいにイケメンじゃないから緊張しないんじゃないかな」
「あはは、それもありそうだな!」
快活な笑い声を上げる武田君をももちゃんはきょとんと見上げていた。
「あ、そろそろ上映時間じゃない?」
晴仁が腕時計を見る。
「あ、やべっ! もうそんな時間か。また今度同窓会でもやろうぜ! それじゃあな!」
そう言うと、武田君はももちゃんを抱きかかえて走り出した。
肩越しにももちゃんが笑顔で手を振ってくれたので、僕も手を振り返した。
「あはは。武田君、本当にいいお父さんだね」
「そうだね」
「それにしてもやっぱり子供は可愛いね」
「こーすけは子供欲しいの?」
「いつかは欲しいよ。でも、まずは恋人から探さないと……」
僕は苦笑した。
子供や結婚云々の前の話だ。
「こーすけの子供ならきっと可愛いだろうね。その時は三人で映画を観に来ようよ」
「あはは、いいねそれ」
果たしてそんな明るい未来が来るのか、不安もあるけれど、しばらくは晴仁と気ままな映画鑑賞を楽しもう。
僕らはまた映画の話に戻って、映画館を後にした。
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