110 / 228
第6章 35歳にして、初めてのメイド喫茶!
1
しおりを挟む****
映画が終わった後、会場を出る時に漂う興奮が冷めやらないざわめきが好きだ。
「面白かったね!」
ロビーに向かいながら、隣を歩く晴仁に同意を求めて話し掛ける。
「うん、そうだね。面白かったね」
「特に所々入るジョージの台詞が面白くって何度も笑いそうになったよ」
「ふふ、そうだね。隣からこーすけの小さな笑い声が聞こえたよ」
「え! 声に出てた? ご、ごめん、声に出して笑ってないつもりだったんだけど……」
は、恥ずかしい……!
せめて映画鑑賞中だけでもクールになりたいのに……。
「ははは、謝ることじゃないよ。むしろ自分が面白いと思ったところでこーすけの笑い声が聞こえてむしろなんか安心した」
「晴仁……!」
さすが晴仁、フォロー上手だ。
いつも僕の失態を笑顔で肯定してくれる。
晴仁はもし女性だったとしてもモテていたに違いない。
「あ! あと、メアリーを助けるシーンだけど、そこでまさか……っうわ、す、すみませんっ」
話に夢中になって周りが見えなくなるのは昔からの悪い癖だ。
ついつい興奮して身振り手振りが大きくなって通り過ぎる人に手が当たってしまった。
相手が優しそうな女性で笑顔で許してくれたけれど、これがもしヤのつく自由業のような人だったらと思うと恐ろしい。
あり得る事態を想像してぞっとしていると、不意に晴仁が僕の腕を引いて、壁側に僕を置いた。
意図が分からずきょとんとしていると、晴仁がにっこりと微笑んだ。
「これなら周りを気にせず思う存分話せるでしょ?」
し、紳士すぎる……っ!
よくカップルが道を歩くときに彼氏が道路側を歩いてさり気なく彼女を守る、というのとよく似ている。
晴仁に新しい恋人がまだできないのが不思議でたまらない。
「晴仁、絶対モテるよね。今、恋人がいないのが不思議だよ。あ、もしかしてあれかな。よく『人は自分と似た人に惹かれる』っていうから、晴仁のようなできた人がなかなか周りにいないのかもしれないね」
「あはは、買い被りすぎだよ。僕はそんな上等な人間じゃないし、モテもしないよ」
「いやいや、絶対晴仁を好きっていう女の子はいっぱいいると思うよ! 僕が女の子だったらとっくの昔に惚れて、とっくの昔に振られてたよ」
そう思うと、僕らが男同士で本当によかった。
男同士でなければこうして長く友人関係を続けることができなかったに違いない。
「あはは、ありがとう。でも僕はこーすけが女の子だったら絶対付き合っていたよ」
さすが晴仁。
褒められてもさらりと嫌みなく受け流せるところが彼がモテる所以だろう。
しかもさり気なく僕のくだらない妄想にフォローしてくれるなんて、いつも晴仁の言動はパーフェクトだ。
「へへへ、嬉しいなぁ。あ、でも少し惜しいかも。もし僕が女の子だったら将来安泰だっただろうになぁ」
「ふふ、一生大切にするよ」
僕らがふざけていると、
「あれ? もしかして、青葉?」
20
お気に入りに追加
737
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果
はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
多分前世から続いているふたりの追いかけっこ
雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け
《あらすじ》
高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。
桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。
蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
噂の補佐君
さっすん
BL
超王道男子校[私立坂坂学園]に通う「佐野晴」は高校二年生ながらも生徒会の補佐。
[私立坂坂学園]は言わずと知れた同性愛者の溢れる中高一貫校。
個性強過ぎな先輩後輩同級生に囲まれ、なんだかんだ楽しい日々。
そんな折、転校生が来て平和が崩れる___!?
無自覚美少年な補佐が総受け
*
この作品はBのLな作品ですので、閲覧にはご注意ください。
とりあえず、まだそれらしい過激表現はありませんが、もしかしたら今後入るかもしれません。
その場合はもちろん年齢制限をかけますが、もし、これは過激表現では?と思った方はぜひ、教えてください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
眺めるほうが好きなんだ
チョコキラー
BL
何事も見るからこそおもしろい。がモットーの主人公は、常におもしろいことの傍観者でありたいと願う。でも、彼からは周りを虜にする謎の色気がムンムンです!w
顔はクマがあり、前髪が長くて顔は見えにくいが、中々美形…!
そんな彼は王道をみて楽しむ側だったのに、気づけば自分が中心に!?
てな感じの巻き込まれくんでーす♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる