104 / 228
第5章 35歳にして、愛について知る
46
しおりを挟む
「ところで、君」
晴仁は桜季の目を見据えた。
「この間はりんご、ありがとう。とてもおいしかったよ。……特に青りんごのウサギがね」
晴仁の言葉に少し目を丸くした桜季だったが、すぐにニヤリと目元を緩ませた。
「いえいえ~、お気に召して頂いたようでよかったでぇす」
「なかなか趣向を凝らしていて面白かったよ」
「ふふ~、でしょう~」
「でも、これは危ないと思うよ」
晴仁はそう言うと財布から、ピアスを取り出し桜季に差し出した。
「わぁ、これずっと持ち歩いていたんですかぁ?」
大袈裟に驚く桜季だが、その目は嫌な笑いを湛えていた。
それが晴仁には心底不愉快だった。
「ああ。……どうしても直接渡したくてね。いつどこで会っても渡せるように持っていたんだ」
「ふぅ~ん……ふふ、ふふふ、あはははっ」
唐突に笑い始めたので、晴仁は内心顔を顰めた。
右京は、事情は知らないが二人の間の何とも言えない不穏な空気は察知しているようで、困惑した様子でおろおろと両者を交互に見遣っていた。
それは不愉快この上ないものだったが、ここで感情を露わにしてはこの男の思う壺のような気がして、なんとか口元には笑みを保たせた。
「……どうしたのかな?」
「あははっ。いやぁ、別にたいしたことじゃないですよぉ。ただ春雨さんはきっと誰かに何かを奪われるということとは無縁のいわゆる勝ち組さんなんだろうなぁって思っただけ~」
癪に障る言い方だ。
やはりこの男はいけ好かない。
あらためて桜季に対する嫌悪感を認識していると、
「……でも一つ忠告~」
そう言って桜季は晴仁の耳元に近づいた。
そして、囁き声より暗く低い声で言った。
「いつまでも自分のものと思うなよ……勝ち組さん」
耳元から離れると、桜季はにっこりと笑った。
「まぁ、そういうわけなんでぇ、これからもどうぞよろしくでぇす~」
そう言って晴仁の手を勝手に取りその手をブンブンと激しく揺らした。
晴仁は桜季の目を見据えた。
「この間はりんご、ありがとう。とてもおいしかったよ。……特に青りんごのウサギがね」
晴仁の言葉に少し目を丸くした桜季だったが、すぐにニヤリと目元を緩ませた。
「いえいえ~、お気に召して頂いたようでよかったでぇす」
「なかなか趣向を凝らしていて面白かったよ」
「ふふ~、でしょう~」
「でも、これは危ないと思うよ」
晴仁はそう言うと財布から、ピアスを取り出し桜季に差し出した。
「わぁ、これずっと持ち歩いていたんですかぁ?」
大袈裟に驚く桜季だが、その目は嫌な笑いを湛えていた。
それが晴仁には心底不愉快だった。
「ああ。……どうしても直接渡したくてね。いつどこで会っても渡せるように持っていたんだ」
「ふぅ~ん……ふふ、ふふふ、あはははっ」
唐突に笑い始めたので、晴仁は内心顔を顰めた。
右京は、事情は知らないが二人の間の何とも言えない不穏な空気は察知しているようで、困惑した様子でおろおろと両者を交互に見遣っていた。
それは不愉快この上ないものだったが、ここで感情を露わにしてはこの男の思う壺のような気がして、なんとか口元には笑みを保たせた。
「……どうしたのかな?」
「あははっ。いやぁ、別にたいしたことじゃないですよぉ。ただ春雨さんはきっと誰かに何かを奪われるということとは無縁のいわゆる勝ち組さんなんだろうなぁって思っただけ~」
癪に障る言い方だ。
やはりこの男はいけ好かない。
あらためて桜季に対する嫌悪感を認識していると、
「……でも一つ忠告~」
そう言って桜季は晴仁の耳元に近づいた。
そして、囁き声より暗く低い声で言った。
「いつまでも自分のものと思うなよ……勝ち組さん」
耳元から離れると、桜季はにっこりと笑った。
「まぁ、そういうわけなんでぇ、これからもどうぞよろしくでぇす~」
そう言って晴仁の手を勝手に取りその手をブンブンと激しく揺らした。
20
お気に入りに追加
738
あなたにおすすめの小説



もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果
はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。


多分前世から続いているふたりの追いかけっこ
雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け
《あらすじ》
高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。
桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。
蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。


平凡くんと【特別】だらけの王道学園
蜂蜜
BL
自分以外の家族全員が美形という家庭に生まれ育った平凡顔な主人公(ぼっち拗らせて表情筋死んでる)が【自分】を見てくれる人を求めて家族から逃げた先の男子校(全寮制)での話。
王道の転校生や生徒会、風紀委員、不良に振り回されながら愛されていきます。
※今のところは主人公総受予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる