35歳からの楽しいホストクラブ

綺沙きさき(きさきさき)

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第5章 35歳にして、愛について知る

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思いもよらない言葉に目を瞬かせる。

「だ、大胆、ですか……?」
「そうだよぉ、だって一人で寝るのが寂しいなんて誘ってるとしか思えないよぉ」
「え!」

どうしてそんな解釈になるのか僕には理解できなかった。
それとも僕の言ったことは、実は桜季さんのような恋愛経験豊富な人たちの中では、秘密の合図みたいなものなのだろうか。
例えばクラクション五回で「ア・イ・シ・テ・ル」というような。
戸惑う僕を置いて桜季さんは続けた。

「じゃあ今夜は青りんごの家に泊まりに行って一緒に寝て上げようかぁ? それともうちに来るぅ? 家主のいない間に家に上がるのも間男みたいなシチュエーションで燃えるけど、自分の家の方が勝手も分かってるし、最初は自分のテリトリーの方がヤリやすいしねぇ」

桜季さんはひとりうんうんと頷きながら話を進めていくけれど、話があまりにあらぬ方向に飛びすぎて僕はついていけていなかった。

「え、えっと、家に招待してくれるのは有り難いんですが、留守を頼まれた身としては家を空けるのは悪いかなぁ、と……」

とりあえず家に招かれたことだけは理解できたのでやんわり断る。
しかし、さすが桜季さんと言うべきか、それで引き下がることはなかった。

「ってことは、青りんごの家におじゃましていいんだねぇ。あはは、何かすごい燃えてきあたぁ」

桜季さんは笑いながら、僕の腰をぐっと自分の方へ引き寄せた。
笑っているのに、その顔はいつものなんだか違う気がして僕は戸惑った。

「えっと、あの、そういうことじゃなくて……」

桜季さんの冗談を訂正しようとするが、笑顔からにじみ出る妙な圧力に気圧されて言葉は喉の奥に逃げかえってしまった。
ど、どうしよう……!
妙な雰囲気に動けないでいると、

「コウさーん! 三番テーブル、ヘルプにお願いしまーす!」

ホールの方から飛びこんできた声に、今まで体に絡みついていた妙な空気が一気に霧散した。
僕は天の助けだとばかりに、「は、はい! ただいま参ります!」と叫んで逃げるように厨房を去った。
厨房から出る時に背後をかすった舌打ちが、本気なのか冗談なのか、確かめる勇気は僕にはない……。
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