78 / 228
第5章 35歳にして、愛について知る
20
しおりを挟む
「んん……、うるせぇ……」
まだまどろみの絡んだ低い声で、眠りを妨げられて不機嫌なのが分かった。
蓮さんはゆっくりと体を起こし、辺りを見渡した。
そして自分を起こした僕らの姿を認めると、露骨に顔をしかめた。
「またテメェらかよ。人が寝てるのに大声だすんじゃねぇ」
舌打ちと共に寄越された地を這うような低い声に心臓が飛び跳ねた。
「は、はいっ、すみません!」
「えぇ~、なんでおれらが怒られなきゃいけないのぉ? ここは寝る場所じゃないじゃぁん。普通に考えてここで寝てるレンコンが悪くなぁい? 家に帰って寝なよぉ」
さ、さすが桜季さん……。
人を殺してしまいそうなほど鋭い目で睨む蓮さんに怯むことなく、唇を尖らせて反論する。
相変わらず怖いもの知らずだなぁと苦笑する。
桜季さんの言葉に、蓮さんはさらに眉根を寄せた。
「帰りたくても帰れないんだよ。こいつのせいで!」
蓮さんが僕をギロリと睨みつけた。
突然怒りの矛先が僕に一点集中になり、戸惑いを隠せなかった。
「ど、どういうことですか?」
彼が家に帰れないことと僕がどう関係するのか全く見当がつかなかった。
「どうもこうもねぇよ。……麻奈美が俺の家を捜し当てて待ち伏せしてるんだよ」
「え……!」
吐き捨てるようにして言った蓮さんの言葉に、ドクンと心臓が強く胸を打った。
「えぇ~、ほんとにぃ? うわぁストーカーじゃぁん」
怖いねぇ、とおよそ恐怖とはかけ離れたのんびりとした声で桜季さんが相槌を打った。
「なんでわざわざ家で待ち伏せするのかなぁ。店の前で待ってた方が確実にレンコンに会えるだろうにねぇ」
「数日前までは店の前で待ち伏せしてたらしいが、他のホストに見つけてすぐに追い返したらしい。それで家まで来たんだろう」
暗いため息を蓮さんが吐いた。
その表情は憔悴しきっていた。
「うわぁ、すごい執着だねぇ。警察にはもう連絡したの?」
「……警察を呼ぶほどじゃないだろう。相手は女で、俺は男だ。いざとなればどうとでもできる」
「なら今すればいいじゃん。こんなところでグズグズ寝たり、青りんごに八つ当たりするくらいならさぁ」
「……あ?」
蓮さんの低い声が発せられたと同時に、剣呑な空気が張りつめた。
ごくりと唾を飲み込む。
一触即発な空気に緊張する僕に反して、凶器のような鋭い視線に射刺されながら、桜季さんはなおにこにこと笑っている。
まだまどろみの絡んだ低い声で、眠りを妨げられて不機嫌なのが分かった。
蓮さんはゆっくりと体を起こし、辺りを見渡した。
そして自分を起こした僕らの姿を認めると、露骨に顔をしかめた。
「またテメェらかよ。人が寝てるのに大声だすんじゃねぇ」
舌打ちと共に寄越された地を這うような低い声に心臓が飛び跳ねた。
「は、はいっ、すみません!」
「えぇ~、なんでおれらが怒られなきゃいけないのぉ? ここは寝る場所じゃないじゃぁん。普通に考えてここで寝てるレンコンが悪くなぁい? 家に帰って寝なよぉ」
さ、さすが桜季さん……。
人を殺してしまいそうなほど鋭い目で睨む蓮さんに怯むことなく、唇を尖らせて反論する。
相変わらず怖いもの知らずだなぁと苦笑する。
桜季さんの言葉に、蓮さんはさらに眉根を寄せた。
「帰りたくても帰れないんだよ。こいつのせいで!」
蓮さんが僕をギロリと睨みつけた。
突然怒りの矛先が僕に一点集中になり、戸惑いを隠せなかった。
「ど、どういうことですか?」
彼が家に帰れないことと僕がどう関係するのか全く見当がつかなかった。
「どうもこうもねぇよ。……麻奈美が俺の家を捜し当てて待ち伏せしてるんだよ」
「え……!」
吐き捨てるようにして言った蓮さんの言葉に、ドクンと心臓が強く胸を打った。
「えぇ~、ほんとにぃ? うわぁストーカーじゃぁん」
怖いねぇ、とおよそ恐怖とはかけ離れたのんびりとした声で桜季さんが相槌を打った。
「なんでわざわざ家で待ち伏せするのかなぁ。店の前で待ってた方が確実にレンコンに会えるだろうにねぇ」
「数日前までは店の前で待ち伏せしてたらしいが、他のホストに見つけてすぐに追い返したらしい。それで家まで来たんだろう」
暗いため息を蓮さんが吐いた。
その表情は憔悴しきっていた。
「うわぁ、すごい執着だねぇ。警察にはもう連絡したの?」
「……警察を呼ぶほどじゃないだろう。相手は女で、俺は男だ。いざとなればどうとでもできる」
「なら今すればいいじゃん。こんなところでグズグズ寝たり、青りんごに八つ当たりするくらいならさぁ」
「……あ?」
蓮さんの低い声が発せられたと同時に、剣呑な空気が張りつめた。
ごくりと唾を飲み込む。
一触即発な空気に緊張する僕に反して、凶器のような鋭い視線に射刺されながら、桜季さんはなおにこにこと笑っている。
10
お気に入りに追加
722
あなたにおすすめの小説
目が覚めたらαのアイドルだった
アシタカ
BL
高校教師だった。
三十路も半ば、彼女はいなかったが平凡で良い人生を送っていた。
ある真夏の日、倒れてから俺の人生は平凡なんかじゃなくなった__
オメガバースの世界?!
俺がアイドル?!
しかもメンバーからめちゃくちゃ構われるんだけど、
俺ら全員αだよな?!
「大好きだよ♡」
「お前のコーディネートは、俺が一生してやるよ。」
「ずっと俺が守ってあげるよ。リーダーだもん。」
____
(※以下の内容は本編に関係あったりなかったり)
____
ドラマCD化もされた今話題のBL漫画!
『トップアイドル目指してます!』
主人公の成宮麟太郎(β)が所属するグループ"SCREAM(スクリーム)"。
そんな俺らの(社長が勝手に決めた)ライバルは、"2人組"のトップアイドルユニット"Opera(オペラ)"。
持ち前のポジティブで乗り切る麟太郎の前に、そんなトップアイドルの1人がレギュラーを務める番組に出させてもらい……?
「面白いね。本当にトップアイドルになれると思ってるの?」
憧れのトップアイドルからの厳しい言葉と現実……
だけどたまに優しくて?
「そんなに危なっかしくて…怪我でもしたらどうする。全く、ほっとけないな…」
先輩、その笑顔を俺に見せていいんですか?!
____
『続!トップアイドル目指してます!』
憧れの人との仲が深まり、最近仕事も増えてきた!
言葉にはしてないけど、俺たち恋人ってことなのかな?
なんて幸せ真っ只中!暗雲が立ち込める?!
「何で何で何で???何でお前らは笑ってられるの?あいつのこと忘れて?過去の話にして終わりってか?ふざけんじゃねぇぞ!!!こんなβなんかとつるんでるから!!」
誰?!え?先輩のグループの元メンバー?
いやいやいや変わり過ぎでしょ!!
ーーーーーーーーーー
亀更新中、頑張ります。
片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる