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第5章 35歳にして、愛について知る

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この話のどこに他に誰の過失があるのか図りかね、思わず聞き返した。

「だってぇ、いつもおれが決めている塩と砂糖の位置が変わってたんだよぉ。あとで聞いたら店長がコーヒーに入れるシュガーが切れてたから厨房のお砂糖を借りたらしいんだぁ。きっとその時、置く場所が塩と入れ違ったんだよぉ。使ったら元の場所に戻すのが常識じゃんねぇ」

腕を組んで、桜季さんは頬を膨らませた。

「しかもねぇ、最近、今回入荷分のお砂糖、間違えて他のメーカーのお砂糖を入荷したらしくて、それがここで使ってる塩とそっくりなんだよねぇ」

まったく困ったもんだよぉ、と桜季さんは唇を尖らせた。
そこで僕は思わず笑ってしまった。

「え~、なんで青りんご笑うのぉ?」
「ははは、いや、すみません。責任がいろんなところに飛んでいくなと思って」

砂糖の置き場所を間違えた菱田さんから塩とそっくりな砂糖を作るメーカーさんにまで広がる責任追及は、桜季さんの緩い口調もあいまって、なんだか子供みたいで可愛くもあった。
笑う僕に、桜季さんがフッと目元を緩めた。

「それでいいんだよぉ。自分が苦しくなるくらいなら責任転嫁、責任転嫁~。自分を責めて心が苦しくなって動けなくなるくらいなら、責任を誰かに押し付けてでも動いて名誉挽回した方がずっといいと思うよぉ? あ、ちなみにおれはその後、おいしい料理作り直したよぉ」

桜季さんはニッと笑ってピースをこちらに向けて来た。
そんな彼を見て、不思議な人だなと思って笑みが零れる。
優しいのだけれど、普通の優しさとは少し違う。
飄々とした軽妙な言葉は、不思議と僕の鬱屈した気持ちを吹き飛ばしてくれる。
僕はスッと息を吸って、軽くなった心に厨房の温かな香りを運んだ。

「そうですね、自分のせいにしてうじうじするよりまずは自分ができることをしないといけないですよね!」

誰かのせいにはできないけれど、自分のせいだと自分で傷ついて反省した気になっている場合じゃない。
僕は立ち上がった。
そして冷凍庫から保冷剤を取り出した。

「どうしたのぉ? もう保冷剤溶けたぁ?」
「いえ、これは僕の分じゃなくて蓮さんに持って行こうと思って……」
「えぇ~、いいよぉ、レンコンのことは気にしなくてぇ。自業自得じゃん。それに今青りんごが行ったら火に油を注いじゃうよぉ?」
「うっ……、確かに……」

桜季さんのもっともな言葉に言い返す言葉もない。
どうしようかと思いあぐねていると、

「青葉さん大丈夫ですか!」

厨房に勢いよく右京君が駆け込んできた。
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