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第4章 35歳にして、初のホストクラブ!!
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入口のコールが鳴りそちらへ向かうと、モデルのようにスタイルのいい女性と、そんな彼女と並んでも引けを取らない蓮さんがいた。
つ、ついに来た……!
心臓がバクバクと鼓動を荒げる。
「い、いらっしゃいませ!」
緊張と蓮さん達の迫力に声が裏返ってしまった。
そんな僕に蓮さんは眉根を寄せたが、すぐに女性の方に甘い笑みを向けた。
「いつものボトルでいい?」
「うんいいよぉ。蓮が好きなの飲んで!」
慣れた足取りでVIPルームへ向かう二人を慌てて追いかけて先回りしてドアを開ける。
VIPルームに入る時、一瞬蓮さんと目が合ったがまたすぐに逸らされてしまった。
****
「あのねぇ、それでね愛果がそれ欲しいなぁって言ったらね……」
お客様の愛果さんは、甘い声で蓮さんにしなだれながらとりとめのない話をお酒を挟みつつ続ける。
蓮さんはその話を、全てを受け入れる優しげな笑みでもって相槌を打ち訊いていた。
僕に話していないことは百も承知だが、僕も蓮さんにならって頷き相づちを打つ。
もちろん視界にも入っていないだろうけど。
蓮さんのヘルプは気構えていたほど大変なものではなかった。
確かに蓮さんから嫌悪混じりの威圧感が感じられ緊張はしたが、お客様の愛果さんは僕なんて視界の端にも置かず、ひたすら蓮さんを見つめているので言葉を交わすこともない。
僕にできることといえば、ひたすらお酒を作ったり、灰皿を代えたり、会話の邪魔にならない程度に相槌を打つくらいだ。
変に盛り上げないといけないなどと気を遣わなくてでいいので、他の人のヘルプに入るより僕としては楽だった。
「ところで、ずっと気になっていたんだけどぉ、この人もホストなの?」
ずっと蓮さんに注がれていた視線が、斜め前に座る僕にちらりと寄越された。
蚊帳の外で気が抜けていたところに、突然話題を振られあたふたする。
「一応、ホストらしい。信じられないけど」
一応の部分を強調して、僕が答えるより早く蓮さんが答えた。
「うっそぉ! こんなホストもいるんだ! マジウケる。どんな客層ターゲットにしてんのって話だよね」
ソファの上で笑い転げる愛果さんに、やっぱりこの華やかなホスト界で自分がいかに異質であるかを痛感した。
「あんた、何歳?」
目尻に滲んだ涙を指で拭いながら、今日初めて愛果さんが僕に対して言葉を向けた。
「さ、三十五です」
「三十五!?」
僕の答えに愛果さんは目を丸くしたが、またすぐに笑い始めた。
「あははは! マジで? めっちゃウケるんだけど! 三十五のホストとかマジありえない!」
ついにはバンバンとソファを叩きはじめた愛果さんに、僕は「ははは……」と口の端だけで力なく笑うしかできなかった。
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