35歳からの楽しいホストクラブ

綺沙きさき(きさきさき)

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第4章 35歳にして、初のホストクラブ!!

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「青葉さん! ちょっと今いいですか?」

厨房で洗い物をしていると、店長の菱田さんがやってきた。

「お疲れ様です。大丈夫ですよ。どうかされました?」

エプロンで手を拭いながら、菱田さんに向き直ると、突然頭を下げられた。

「お願いがあります!」
「あ、あの、僕でよければ何でもしますので、とりあえず頭をあげてください」
「あ、ありがとうございます……っ! 実は今、どうしてもどのホストも指名が入っていて……、それでVIPルームにいる蓮のヘルプに入ってもらえませんか!」
「え!」

蓮さんの名前に思わず声を上げてしまう。

「だめですか?」

捨てられた子犬のような目で見つめられ言葉に詰まる。

「え、えっと、だめというわけじゃなくて、僕なんかがそんな大役務まるかなと思って……」
「大丈夫です! 客は蓮しか見ていませんから! ちょっと粗相があっても客は見向きもしません!」

それはそれで少し悲しいような……。
大丈夫だと力強く言ってくれるが、やっぱり少し不安だ。
けれどこれも僕の仕事だ。
僕は意を決して「分かりました」と答えた。

「急にも関わらずありがとうございます」
「へぇ、青りんごVIPルームデビューぅ? すごいねぇ。でももし不安だったら、おれがヘルプのヘルプとして出てあげるからいつでも呼んでねぇ」
「お前は客の前に姿を現すな!」

厨房の奥から顔を覗かせ励ましてくれる桜季さんに菱田さんはぴしゃりと言った。
桜季さんは「え~、なんでぇ」と唇を尖らせたが、確かに彼の奇抜な容姿と言動は初対面の女の子はびっくりするかもしれない。
頬を膨らませる桜季さんに苦笑する。

「桜季さん、大丈夫ですよ。僕、がんばりますから!」
「ふふ、がんばってねぇ。厨房から応援してるからぁ」

そう言って桜季さんは再び厨房の奥に戻った。

「あと十分ほどで着くということでうので、準備の方お願いしますね」

そう言い置くと、菱田さんは厨房を後にした。

「よ、よし!」

不安と、頭に過った蓮さんの嫌悪を露わにした顔を追い払うように、両頬をパチンと叩いて僕は気合を入れた。
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