44 / 228
第4章 35歳にして、初のホストクラブ!!
21
しおりを挟む
「レンコンじゃぁん! もう同伴から帰って来たんだぁ。今日は早いねぇ」
桜季さんが手を挙げながら青年に近付いていく。
レンコン!?
僕の頭の中には穴のあいたレンコンさんしか思いつかず、青年のあだ名と気付くまでに時間がかかった。
「その呼び方やめろって言ってるだろう! 俺にもっとふさわしい名前にしろ!」
「そんな口のきき方していいのかなぁ。そんなこと言ったらアレあげないんだからねぇ」
噛みつかん勢いで自分のあだ名に反応した青年だったが、桜季さんの言葉に不承不承と言った様子で言葉を飲み込んだ。
二人のやりとりを茫然と見ていると、桜季さんが僕の方を振り返った。
「そう言えば青りんごはまだ会ってないよねぇ。何を隠そう、彼こそ当ホストクラブのナンバーワンホスト蓮なのです~」
手をひらひらとはためかせ彼を紹介する桜季さんの言葉に、僕は目を丸くした。
ナンバーワンホスト!?
まだ二十歳前後にしか見えない彼がそんな地位を築いていることに驚きを隠せなかった。
でも、確かにそう言われればそんなオーラを感じるような……。
「すごいですね、この若さナンバーワンだなんて……」
感心しながら呟くと、青年――蓮さんは、鼻を鳴らした。
「当たり前だろう。俺が一番じゃなかったら誰が一番になれるっていうんだ。俺しかいないだろう」
す、すごい……!
なんて自信だろう。
自分が一番であるということが当然と言い切れるなんて、すごい自信だ。
僕なんて人生で何か一番になったことといえば、小学生の頃に行ったセミの抜け殻収集の数だけだ。
あれから後にも先にも何かで一番になった記憶はない。
「そしてこっちが今日からここで働くことになった青りんごだよぉ」
桜季さんが僕も紹介してくれ、ほっとする。
不審者疑惑もこれで少しは晴れるだろう。
「今日からお世話になります。青葉幸助です。よろしくおね……」
「こんな変態雇ったのか! この店は!」
……全然晴れなかった。
疑惑どころか、彼の中では僕が不審者ということは確定事項らしく、その鋭い瞳は警戒心を露わにしていた。
「え~、青りんごがヘンタイってどういうことぉ?」
「どういうことも何も、こいつ、寝ている俺にキスしてきやがったんだ!」
首をこてんと傾げる桜季さんに、蓮さんが息巻いた。
ど、どうしよう……。
これから新しい職場でがんばろうと思っていた矢先に、変態のレッテルが貼られてしまった……。
先手必勝とでもいううのか、事実と異なっていても先に言われてしまえば、いくら僕が真実を話しても、言い訳をしている風にしか聞こえず誤解は深まるばかりだ。
どう誤解を解くべきか思いあぐねていると、
「え~、青りんごがキスしたの? ずるい!」
「は?」
「え?」
思いもよらない言葉に、蓮さんと僕の口から間抜けな言葉が出た。
「ずるいって何だよ!」
「だってぇ、おれだってまだ青りんごとキスしてないんだよぉ? しかも青りんごからしてくれたなんてずるい!」
「知るか!」
「え、えっと、あの……」
誤解がさらに複雑を極めてた状況に戸惑っていると、桜季さんがくるりと僕に向き直った。
「青りんご、じゃあおれにもキスしてぇ? レンコンにしたんなら、もちろんおれにもしてくれるよねぇ? はい、どうぞぉ」
桜季さんが体を屈め瞳を閉じて僕に顔を近づける。
「えっと、あの」
「あ、舌も入れてねぇ。おれ、舌ピアスつける前の青りんごの舌も堪能したいからぁ」
ひとつの誤解が変な方向に向かってしまい、収束がつかない状態となってしまった。
もう問題のどこから手をつけていいのか分からなくなった上に、目の前に迫るきれいな桜季さんの顔に僕の頭は大混乱だった。
「あ、え、そ、その、えっと……お、お疲れ様でした!」
僕は自分の荷物を持って脱兎のごとくその場から逃げ出した。
桜季さんが手を挙げながら青年に近付いていく。
レンコン!?
僕の頭の中には穴のあいたレンコンさんしか思いつかず、青年のあだ名と気付くまでに時間がかかった。
「その呼び方やめろって言ってるだろう! 俺にもっとふさわしい名前にしろ!」
「そんな口のきき方していいのかなぁ。そんなこと言ったらアレあげないんだからねぇ」
噛みつかん勢いで自分のあだ名に反応した青年だったが、桜季さんの言葉に不承不承と言った様子で言葉を飲み込んだ。
二人のやりとりを茫然と見ていると、桜季さんが僕の方を振り返った。
「そう言えば青りんごはまだ会ってないよねぇ。何を隠そう、彼こそ当ホストクラブのナンバーワンホスト蓮なのです~」
手をひらひらとはためかせ彼を紹介する桜季さんの言葉に、僕は目を丸くした。
ナンバーワンホスト!?
まだ二十歳前後にしか見えない彼がそんな地位を築いていることに驚きを隠せなかった。
でも、確かにそう言われればそんなオーラを感じるような……。
「すごいですね、この若さナンバーワンだなんて……」
感心しながら呟くと、青年――蓮さんは、鼻を鳴らした。
「当たり前だろう。俺が一番じゃなかったら誰が一番になれるっていうんだ。俺しかいないだろう」
す、すごい……!
なんて自信だろう。
自分が一番であるということが当然と言い切れるなんて、すごい自信だ。
僕なんて人生で何か一番になったことといえば、小学生の頃に行ったセミの抜け殻収集の数だけだ。
あれから後にも先にも何かで一番になった記憶はない。
「そしてこっちが今日からここで働くことになった青りんごだよぉ」
桜季さんが僕も紹介してくれ、ほっとする。
不審者疑惑もこれで少しは晴れるだろう。
「今日からお世話になります。青葉幸助です。よろしくおね……」
「こんな変態雇ったのか! この店は!」
……全然晴れなかった。
疑惑どころか、彼の中では僕が不審者ということは確定事項らしく、その鋭い瞳は警戒心を露わにしていた。
「え~、青りんごがヘンタイってどういうことぉ?」
「どういうことも何も、こいつ、寝ている俺にキスしてきやがったんだ!」
首をこてんと傾げる桜季さんに、蓮さんが息巻いた。
ど、どうしよう……。
これから新しい職場でがんばろうと思っていた矢先に、変態のレッテルが貼られてしまった……。
先手必勝とでもいううのか、事実と異なっていても先に言われてしまえば、いくら僕が真実を話しても、言い訳をしている風にしか聞こえず誤解は深まるばかりだ。
どう誤解を解くべきか思いあぐねていると、
「え~、青りんごがキスしたの? ずるい!」
「は?」
「え?」
思いもよらない言葉に、蓮さんと僕の口から間抜けな言葉が出た。
「ずるいって何だよ!」
「だってぇ、おれだってまだ青りんごとキスしてないんだよぉ? しかも青りんごからしてくれたなんてずるい!」
「知るか!」
「え、えっと、あの……」
誤解がさらに複雑を極めてた状況に戸惑っていると、桜季さんがくるりと僕に向き直った。
「青りんご、じゃあおれにもキスしてぇ? レンコンにしたんなら、もちろんおれにもしてくれるよねぇ? はい、どうぞぉ」
桜季さんが体を屈め瞳を閉じて僕に顔を近づける。
「えっと、あの」
「あ、舌も入れてねぇ。おれ、舌ピアスつける前の青りんごの舌も堪能したいからぁ」
ひとつの誤解が変な方向に向かってしまい、収束がつかない状態となってしまった。
もう問題のどこから手をつけていいのか分からなくなった上に、目の前に迫るきれいな桜季さんの顔に僕の頭は大混乱だった。
「あ、え、そ、その、えっと……お、お疲れ様でした!」
僕は自分の荷物を持って脱兎のごとくその場から逃げ出した。
10
お気に入りに追加
731
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果
はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。
【完結・短編】game
七瀬おむ
BL
仕事に忙殺される社会人がゲーム実況で救われる話。
美形×平凡/ヤンデレ感あり/社会人
<あらすじ>
社会人の高井 直樹(たかい なおき)は、仕事に忙殺され、疲れ切った日々を過ごしていた。そんなとき、ハイスペックイケメンの友人である篠原 大和(しのはら やまと)に2人組のゲーム実況者として一緒にやらないかと誘われる。直樹は仕事のかたわら、ゲーム実況を大和と共にやっていくことに楽しさを見出していくが……。
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
平凡くんと【特別】だらけの王道学園
蜂蜜
BL
自分以外の家族全員が美形という家庭に生まれ育った平凡顔な主人公(ぼっち拗らせて表情筋死んでる)が【自分】を見てくれる人を求めて家族から逃げた先の男子校(全寮制)での話。
王道の転校生や生徒会、風紀委員、不良に振り回されながら愛されていきます。
※今のところは主人公総受予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる