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第4章 35歳にして、初のホストクラブ!!
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「テ、テメェ! 幸助さんに何しやがる!」
こちらの騒動に気づいてくれたテツ君が、さっきまで顔を覆って落ち込んでいた者とは思えないほどの激昂っぷりで立ち上がった。
「えぇ~、何って、舌ピアス前の舌チェックですよぉ」
「そんなことしなくていい! さっさと幸助さんから離れろ! この変態野郎がぁぁぁ!」
今にもはち切れてしまいそうなほど太い青筋を額に立てて怒鳴るテツ君に、僕は震え上がった。
しかし、さすがは桜季さんと言うべきか、彼は相変わらず表情を微動だに動かさない。
「オーナー怖いですよ~。そんなんじゃ、青りんごがさらに青くなっちゃいますよぉ。青りんごも何とかいってやってよぉ」
「ふひっ!」
舌の裏を爪の先で浅く引っかかれ思わず変な声が出てしまった。
その声にテツ君の顔がぴたりと固まった。
口の中にはくすぐったさに似た妙な感覚が充満していて、もう限界だった。
僕は助けを求め、テツ君を見上げた。
「え、えううん、あふひぇひぇ……!」
テツ君、助けて、と言ったつもりだったが、舌の自由が利かず、舌足らずな言い方になってしまった。
しかも、言葉と一緒に唾液まで口から出てしまい、顎に唾液が伝ってしまうという見苦しい状態。
一刻も早くまずはこの体勢から脱出させてほしいのだが、テツ君は固まったまま動かなかった。
「えううん……?」
首を傾げテツ君を呼びかけると、まるでそれが合図であったかのように、大きな音を立てその場に倒れてしまった。
「オ、オーナー!?」
それまで傍観に徹していた菱田さんと右京君がテツ君のそばに駆け寄る。
「しっかりしてください、オーナー!」
「やばいぞ、体中から発熱している! 右京、お前はそっちを支えろ。裏の部屋につれていくぞ」
二人はテツ君を両側から支え起きあがらせると、そのまま厨房を後にした。
「ふぅ、一件落着~」
緩くため息を吐きながら、ようやく桜季さんは僕の口から右手を抜いてくれた。
自由を取り戻した咥内に爽やかなほどの解放感が広がる。
口を何度かぱくぱくと開け閉めして、自由の感覚を噛みしめた。
「そ、それにしても、大丈夫ですかね、テツ君。一体どうしたんだろう……」
テツ君たちが消えていった方をおろろしながら見詰めていると、
「大丈夫でしょ、ただ妄想しすぎて脳味噌が茹であがちゃっただけだよぉ」
右手をぺろりと舐めて、桜季さんが答える。
……え? 右手を舐める?
もう一度、桜季さんの右手を見る。
彼の右手の甲には、僕の歯形が薄く残っており、それは間違いなくさっきまで僕の口の中にいたことの何よりの証拠だった。
ということは、つまりあの右手には僕の唾液がついているわけで……。
「ちょ、ちょっと、汚いですよ!」
思わず桜季さんの右手を掴んで、彼の口から引き離した。
けれど桜季さんは僕の言っていることがまるで分からないといった風にきょとんとして首を傾げる。
「汚いって何がぁ?」
「いや、だって、さっきその手を僕の口に入れてたじゃないですかっ。僕の唾液がついていて汚いですよっ」
こちらの騒動に気づいてくれたテツ君が、さっきまで顔を覆って落ち込んでいた者とは思えないほどの激昂っぷりで立ち上がった。
「えぇ~、何って、舌ピアス前の舌チェックですよぉ」
「そんなことしなくていい! さっさと幸助さんから離れろ! この変態野郎がぁぁぁ!」
今にもはち切れてしまいそうなほど太い青筋を額に立てて怒鳴るテツ君に、僕は震え上がった。
しかし、さすがは桜季さんと言うべきか、彼は相変わらず表情を微動だに動かさない。
「オーナー怖いですよ~。そんなんじゃ、青りんごがさらに青くなっちゃいますよぉ。青りんごも何とかいってやってよぉ」
「ふひっ!」
舌の裏を爪の先で浅く引っかかれ思わず変な声が出てしまった。
その声にテツ君の顔がぴたりと固まった。
口の中にはくすぐったさに似た妙な感覚が充満していて、もう限界だった。
僕は助けを求め、テツ君を見上げた。
「え、えううん、あふひぇひぇ……!」
テツ君、助けて、と言ったつもりだったが、舌の自由が利かず、舌足らずな言い方になってしまった。
しかも、言葉と一緒に唾液まで口から出てしまい、顎に唾液が伝ってしまうという見苦しい状態。
一刻も早くまずはこの体勢から脱出させてほしいのだが、テツ君は固まったまま動かなかった。
「えううん……?」
首を傾げテツ君を呼びかけると、まるでそれが合図であったかのように、大きな音を立てその場に倒れてしまった。
「オ、オーナー!?」
それまで傍観に徹していた菱田さんと右京君がテツ君のそばに駆け寄る。
「しっかりしてください、オーナー!」
「やばいぞ、体中から発熱している! 右京、お前はそっちを支えろ。裏の部屋につれていくぞ」
二人はテツ君を両側から支え起きあがらせると、そのまま厨房を後にした。
「ふぅ、一件落着~」
緩くため息を吐きながら、ようやく桜季さんは僕の口から右手を抜いてくれた。
自由を取り戻した咥内に爽やかなほどの解放感が広がる。
口を何度かぱくぱくと開け閉めして、自由の感覚を噛みしめた。
「そ、それにしても、大丈夫ですかね、テツ君。一体どうしたんだろう……」
テツ君たちが消えていった方をおろろしながら見詰めていると、
「大丈夫でしょ、ただ妄想しすぎて脳味噌が茹であがちゃっただけだよぉ」
右手をぺろりと舐めて、桜季さんが答える。
……え? 右手を舐める?
もう一度、桜季さんの右手を見る。
彼の右手の甲には、僕の歯形が薄く残っており、それは間違いなくさっきまで僕の口の中にいたことの何よりの証拠だった。
ということは、つまりあの右手には僕の唾液がついているわけで……。
「ちょ、ちょっと、汚いですよ!」
思わず桜季さんの右手を掴んで、彼の口から引き離した。
けれど桜季さんは僕の言っていることがまるで分からないといった風にきょとんとして首を傾げる。
「汚いって何がぁ?」
「いや、だって、さっきその手を僕の口に入れてたじゃないですかっ。僕の唾液がついていて汚いですよっ」
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