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第4章 35歳にして、初のホストクラブ!!
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「右京……」
地獄の底から這い上がってくるような声に、思わず僕はびくりと跳ね上がった。
「あ、いえ、こ、これは違うんですっ! 酔った勢いで倒れ込んだというか……っ、と、とにかく、や、やましいことは全くありません!」
右京君は顔を真っ青にしながら無実を言い募るが、テツ君には届いていないようだった。
「……選べ」
「へ?」
目を瞬かせて訊き返す右京君のネクタイを、ガッ! と締めあげるようにしてテツ君が掴んだ。
「コンクリート詰めとミンチ、どっちがいいか選ばしてやるって言ってるんだよ!」
「ひぃぃぃ! な、なんですか! その恐怖の二択はっ!」
テ、テツ君の職業って何だったけ?
思わず再確認せずにはいられないほど恐ろしい形相に震えが止まらない。
絶体絶命、と顔面蒼白になっている右京君から少し離れた所で、口元に手の甲を当て笑いを堪えている桜季さんの神経が分からない……。
若者はこういった修羅場には慣れっこなのだろうか。
「ちょ、ちょっと待ってください! 俺より桜季さんの方がもっと害がありますよ! さっきなんか青葉さんの耳にピアス空けようとしていたんですよ!」
桜季さんを指差し、怒りの矛先を他へ向けようとする右京君の作戦は見事に成功した。
「何だと! おいっ、桜季! どういうことだ!」
右京君から手を放し、今度は桜季さんの元へ向かうテツ君。
しかし、桜季さんは怯える様子はなく、むしろ面倒なことになったとでも言いたげな表情で、大儀そうな溜め息を零すだけだった。
「べつにぃ、ピアスしてなかったから初出勤祝いに空けてあげようとしただけですよぉ」
「なにふざけたこと言ってやがる! 幸助さんの純潔を汚すのは俺が許さねぇ!」
桜季さんの胸倉に掴み掛るテツ君は、今にも殴り掛りそうな勢いだ。
それにしても三十代半ばの男に純潔というのもどうだろう……。
「えぇ、でもぉ、地味な子が実はピアスしてるって、めっちゃ可愛くないですかぁ。おれ、昔付き合っていた子で、すっごく大人しい感じの子がいてぇ、その子に舌ピアスしてあげたんですよぉ。で、セックスしたら、その子が喘ぐ度にちらちらピアスが見えて、すっごく可愛かったんですよぉ」
あわわわわわ……!
な、なんて破廉恥な……!
生々しい話に顔が燃えるように熱くなる。
さ、最近の若者は、こういった話を職場でするものだろうか?
しかも相手は上司で、初対面の僕も聞いているというのに……。
恋愛話は、特にディープな話になればなるほど、親密な人間にしか打ち明かさないものだと思っていたが、最近は変わってきたのだろうか。
僕なんかキスをしたという話でさえ、晴仁にしか話せなかったというのに……。
最近の若者の性事情に赤面しながらわたわたとする僕の横で、テツ君がその場にくずおれた。
「テ、テツ君! 大丈夫?」
しゃがんでテツ君の顔を覗き込むと、彼は耳まで真っ赤にして口元を手で押さえていた。
僕と似たような反応に、ほっと安堵する。
そうだ、僕らは見た目や地位に格差はあれど同世代だ。
やっぱり今の若者の性事情は僕らには過激すぎるよね。
仲間を見つけた親近感から、彼の肩をぽんぽんと叩く。
「そうだよね、僕らにはやっぱり少し過激す……」
「幸助さん!」
突然、肩を叩いていた手を掴まれ目を丸くしていると、
「俺を殴ってください!」
「え?」
地獄の底から這い上がってくるような声に、思わず僕はびくりと跳ね上がった。
「あ、いえ、こ、これは違うんですっ! 酔った勢いで倒れ込んだというか……っ、と、とにかく、や、やましいことは全くありません!」
右京君は顔を真っ青にしながら無実を言い募るが、テツ君には届いていないようだった。
「……選べ」
「へ?」
目を瞬かせて訊き返す右京君のネクタイを、ガッ! と締めあげるようにしてテツ君が掴んだ。
「コンクリート詰めとミンチ、どっちがいいか選ばしてやるって言ってるんだよ!」
「ひぃぃぃ! な、なんですか! その恐怖の二択はっ!」
テ、テツ君の職業って何だったけ?
思わず再確認せずにはいられないほど恐ろしい形相に震えが止まらない。
絶体絶命、と顔面蒼白になっている右京君から少し離れた所で、口元に手の甲を当て笑いを堪えている桜季さんの神経が分からない……。
若者はこういった修羅場には慣れっこなのだろうか。
「ちょ、ちょっと待ってください! 俺より桜季さんの方がもっと害がありますよ! さっきなんか青葉さんの耳にピアス空けようとしていたんですよ!」
桜季さんを指差し、怒りの矛先を他へ向けようとする右京君の作戦は見事に成功した。
「何だと! おいっ、桜季! どういうことだ!」
右京君から手を放し、今度は桜季さんの元へ向かうテツ君。
しかし、桜季さんは怯える様子はなく、むしろ面倒なことになったとでも言いたげな表情で、大儀そうな溜め息を零すだけだった。
「べつにぃ、ピアスしてなかったから初出勤祝いに空けてあげようとしただけですよぉ」
「なにふざけたこと言ってやがる! 幸助さんの純潔を汚すのは俺が許さねぇ!」
桜季さんの胸倉に掴み掛るテツ君は、今にも殴り掛りそうな勢いだ。
それにしても三十代半ばの男に純潔というのもどうだろう……。
「えぇ、でもぉ、地味な子が実はピアスしてるって、めっちゃ可愛くないですかぁ。おれ、昔付き合っていた子で、すっごく大人しい感じの子がいてぇ、その子に舌ピアスしてあげたんですよぉ。で、セックスしたら、その子が喘ぐ度にちらちらピアスが見えて、すっごく可愛かったんですよぉ」
あわわわわわ……!
な、なんて破廉恥な……!
生々しい話に顔が燃えるように熱くなる。
さ、最近の若者は、こういった話を職場でするものだろうか?
しかも相手は上司で、初対面の僕も聞いているというのに……。
恋愛話は、特にディープな話になればなるほど、親密な人間にしか打ち明かさないものだと思っていたが、最近は変わってきたのだろうか。
僕なんかキスをしたという話でさえ、晴仁にしか話せなかったというのに……。
最近の若者の性事情に赤面しながらわたわたとする僕の横で、テツ君がその場にくずおれた。
「テ、テツ君! 大丈夫?」
しゃがんでテツ君の顔を覗き込むと、彼は耳まで真っ赤にして口元を手で押さえていた。
僕と似たような反応に、ほっと安堵する。
そうだ、僕らは見た目や地位に格差はあれど同世代だ。
やっぱり今の若者の性事情は僕らには過激すぎるよね。
仲間を見つけた親近感から、彼の肩をぽんぽんと叩く。
「そうだよね、僕らにはやっぱり少し過激す……」
「幸助さん!」
突然、肩を叩いていた手を掴まれ目を丸くしていると、
「俺を殴ってください!」
「え?」
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