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第4章 35歳にして、初のホストクラブ!!
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「む、無理しないでね?」
「無理しないとやっていけないですよ」
「じゃ、じゃあ、無理をする前に僕を呼んで! 僕が右京君の代わりをするから」
「俺の代わり?」
挙手する僕に、右京君が目を丸くして聞き返す。
気遣いのつもりだったが、彼の顔に自分がおこがましいことを言っていることに気付き、慌てて弁解した。
「あ、いや、別に、右京君の代わりができるとは思ってないからね! 右京君みたいな若いイケメン君と僕みたいな冴えないおっさんじゃ月とすっぽんなのは重々承知しているよ。でも、テーブルの片付けたりとか、料理を運んだりとかなら僕にもできるだろうから、その間に少しでも休んでよ。あ! あとライターの火もつけられるよ! 昨日、百均でライター買って練習したんだ」
ホストの仕事と言えば煙草の火つけは欠かせないだろうと思い、煙草を吸わない僕は昨日急いでライターを買いに行った。
そしてその夜、晴仁に付き合ってもらい練習したのだ。
右京君のように手慣れてはいないが、一応形にはなっているはずだ。
彼の代わりは務まらないだろうが、少しなら役に立てるはずだと言い募っていたら、なぜか右京君は瞳に涙を潤ませていた。
「ど、どうしたの? 何か不愉快なことでも言ったかな?」
「いや、その逆です。俺、この職場でこんなに優しいこと言われたの初めてで、思わず涙が」
そう言って右京君はすん、と鼻を啜った。
右京君には最初からお世話になったから少しでも恩返しできればと思っての提案だったのだが、彼の感極まった反応に恐縮してしまう。
「いや、そんな大袈裟だよ。僕はただ恩返ししたいだけで……」
「もうその考えがすでに優しいですよ! あ~、職場に癒しのパラダイスができた! 超うれしい!」
酔っているのだろう。
右京君は大袈裟に言って、唐突に僕の腰に抱きついてきた。
突然のことでびっくりしたが、ぎゅーっと顔を僕のお腹に押し付けてくる右京君は甘えているようにも見え、なんだか微笑ましい気持ちになった。
さっきは桜季さんの魔の手から守ってくれたりと男らしい面を見せてくれたが、彼は年下だ。
年齢は聞いていないが、二十歳前後くらいだろう。
その若さで夜の仕事をしているのだ、時には誰かに甘えたくなるのも分かる。
僕は彼の派手な金髪の頭をそっと撫でた。
「すごくがんばっているんだね、えらいなぁ。僕のところなんかでよかったらいつでも来てね」
そう言うと、右京君が僕の顔を見上げて目を丸くした。
そして、再び僕のお腹に顔を埋めた。
「……青葉さん、男でよかったですね」
「え?」
ぼそりと呟かれた言葉に、僕は首を傾げた。
「青葉さんが女だったら、今、完全に押し倒していますから。こんな風にね」
「無理しないとやっていけないですよ」
「じゃ、じゃあ、無理をする前に僕を呼んで! 僕が右京君の代わりをするから」
「俺の代わり?」
挙手する僕に、右京君が目を丸くして聞き返す。
気遣いのつもりだったが、彼の顔に自分がおこがましいことを言っていることに気付き、慌てて弁解した。
「あ、いや、別に、右京君の代わりができるとは思ってないからね! 右京君みたいな若いイケメン君と僕みたいな冴えないおっさんじゃ月とすっぽんなのは重々承知しているよ。でも、テーブルの片付けたりとか、料理を運んだりとかなら僕にもできるだろうから、その間に少しでも休んでよ。あ! あとライターの火もつけられるよ! 昨日、百均でライター買って練習したんだ」
ホストの仕事と言えば煙草の火つけは欠かせないだろうと思い、煙草を吸わない僕は昨日急いでライターを買いに行った。
そしてその夜、晴仁に付き合ってもらい練習したのだ。
右京君のように手慣れてはいないが、一応形にはなっているはずだ。
彼の代わりは務まらないだろうが、少しなら役に立てるはずだと言い募っていたら、なぜか右京君は瞳に涙を潤ませていた。
「ど、どうしたの? 何か不愉快なことでも言ったかな?」
「いや、その逆です。俺、この職場でこんなに優しいこと言われたの初めてで、思わず涙が」
そう言って右京君はすん、と鼻を啜った。
右京君には最初からお世話になったから少しでも恩返しできればと思っての提案だったのだが、彼の感極まった反応に恐縮してしまう。
「いや、そんな大袈裟だよ。僕はただ恩返ししたいだけで……」
「もうその考えがすでに優しいですよ! あ~、職場に癒しのパラダイスができた! 超うれしい!」
酔っているのだろう。
右京君は大袈裟に言って、唐突に僕の腰に抱きついてきた。
突然のことでびっくりしたが、ぎゅーっと顔を僕のお腹に押し付けてくる右京君は甘えているようにも見え、なんだか微笑ましい気持ちになった。
さっきは桜季さんの魔の手から守ってくれたりと男らしい面を見せてくれたが、彼は年下だ。
年齢は聞いていないが、二十歳前後くらいだろう。
その若さで夜の仕事をしているのだ、時には誰かに甘えたくなるのも分かる。
僕は彼の派手な金髪の頭をそっと撫でた。
「すごくがんばっているんだね、えらいなぁ。僕のところなんかでよかったらいつでも来てね」
そう言うと、右京君が僕の顔を見上げて目を丸くした。
そして、再び僕のお腹に顔を埋めた。
「……青葉さん、男でよかったですね」
「え?」
ぼそりと呟かれた言葉に、僕は首を傾げた。
「青葉さんが女だったら、今、完全に押し倒していますから。こんな風にね」
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