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第4章 35歳にして、初のホストクラブ!!
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「ここならちょうどアイスピックがあるしぃ」
「いやいや、待ってください! アイスピックってあの氷を砕くやつですよね!?」
「うん、そうだよぉ。あれなら先が尖ってるから空けやすいんだよぉ」
「絶対使い方間違ってますよ!」
「えー、でも普通にピアッサーでとかつまんないじゃぁん。せっかく初めてなんだから、普通じゃもったいないよぉ?」
「いやいや、普通でいいです。というかピアスは空けません!」
「大丈夫。先に耳たぶを氷で冷やせば全然痛くないからさぁ。あ、ピアスはおれのまだ使ってないのあげる。これからよろしくのプレゼントだよぉ」
少し荒くなった熱い吐息を、揉まれすぎてじんじんする耳たぶにふぅと吹きかけられる。
ひぃぃ! 全く話が通じない!
このままでは確実に穴をあけられてしまう!
骨の髄まで震わせる恐怖におののいていると、そこに天の助けが割って入ってきた。
「こら、ダメでしょ。身体改造趣味は自分の体だけにしてください」
右京君がべりっと僕らを引き離す。
「なんだよぉ。せっかくあと少しで交渉成立だったのにぃ」
「交渉じゃない、あれは恐喝ですよ」
唇を尖らせる桜季さんに、右京君が盛大な溜め息を吐く。
「すいません、この人すげぇ身体改造フリークで、自分の体だけじゃ飽きたらず、人の体まで改造させようとするんですよ」
迷惑な奴ですよね、と言いながら右京君は桜季さんに向き直った。
「桜季さん、どうしてもしたいなら、俺の耳に空けさせてやりますよ。ちょうど新しい穴空けようと思ってたし。だから、青葉さんには手を出さないでください」
「う、右京君……っ!」
自分の身を挺してまで、僕の耳たぶを守ってくれようとする右京君に感動すら覚える。
しかし、右京君の親切な提案に、桜季さんはぷいとそっぽ向いた。
「君みたいに穴だらけのあばずれな耳穴になんか興味ないよぉ。おれは処女みたいな誰にも汚されてない耳たぶに穴をぶち空けたいのぉ」
「じゃあテメェのケツ穴にでも空けてろ、このゲス野郎」
立ちこめる険悪な雰囲気に僕は慌てて話題を変えた。
「あ、あの! 僕、今日から厨房で働くんですよね? 菱田さんからスーツで来るよう言われたんですけど、厨房なら動きやすい服の方がいいと思うんですけど、ここってエプロンの貸し出しとかないんですか?」
「えぇ? 会社から支給されなかったのぉ?」
目を丸くして驚く桜季さん。
アイスピックで人の耳たぶに穴をあけようなどという物騒な提案は平然としておきながら、会社から仕事着が支給されていないことに驚くなんて、最近の若者の驚きの基準は分からない……。
「は、はい。なので、もし余りものとかあれば貸してもらえると助かります」
「じゃあ、おれの予備の服を貸してあげるよぉ。その代りぃ、ピアスの穴をあけさせ……」
「それ以上言ったら、また新人が辞めてしまいますよ。厨房の仕事が大変になってもいいなら別にいいですけど」
冷たい忠告に、桜季さんは不承不承といった風に言葉を飲み込んだ。
「いやいや、待ってください! アイスピックってあの氷を砕くやつですよね!?」
「うん、そうだよぉ。あれなら先が尖ってるから空けやすいんだよぉ」
「絶対使い方間違ってますよ!」
「えー、でも普通にピアッサーでとかつまんないじゃぁん。せっかく初めてなんだから、普通じゃもったいないよぉ?」
「いやいや、普通でいいです。というかピアスは空けません!」
「大丈夫。先に耳たぶを氷で冷やせば全然痛くないからさぁ。あ、ピアスはおれのまだ使ってないのあげる。これからよろしくのプレゼントだよぉ」
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ひぃぃ! 全く話が通じない!
このままでは確実に穴をあけられてしまう!
骨の髄まで震わせる恐怖におののいていると、そこに天の助けが割って入ってきた。
「こら、ダメでしょ。身体改造趣味は自分の体だけにしてください」
右京君がべりっと僕らを引き離す。
「なんだよぉ。せっかくあと少しで交渉成立だったのにぃ」
「交渉じゃない、あれは恐喝ですよ」
唇を尖らせる桜季さんに、右京君が盛大な溜め息を吐く。
「すいません、この人すげぇ身体改造フリークで、自分の体だけじゃ飽きたらず、人の体まで改造させようとするんですよ」
迷惑な奴ですよね、と言いながら右京君は桜季さんに向き直った。
「桜季さん、どうしてもしたいなら、俺の耳に空けさせてやりますよ。ちょうど新しい穴空けようと思ってたし。だから、青葉さんには手を出さないでください」
「う、右京君……っ!」
自分の身を挺してまで、僕の耳たぶを守ってくれようとする右京君に感動すら覚える。
しかし、右京君の親切な提案に、桜季さんはぷいとそっぽ向いた。
「君みたいに穴だらけのあばずれな耳穴になんか興味ないよぉ。おれは処女みたいな誰にも汚されてない耳たぶに穴をぶち空けたいのぉ」
「じゃあテメェのケツ穴にでも空けてろ、このゲス野郎」
立ちこめる険悪な雰囲気に僕は慌てて話題を変えた。
「あ、あの! 僕、今日から厨房で働くんですよね? 菱田さんからスーツで来るよう言われたんですけど、厨房なら動きやすい服の方がいいと思うんですけど、ここってエプロンの貸し出しとかないんですか?」
「えぇ? 会社から支給されなかったのぉ?」
目を丸くして驚く桜季さん。
アイスピックで人の耳たぶに穴をあけようなどという物騒な提案は平然としておきながら、会社から仕事着が支給されていないことに驚くなんて、最近の若者の驚きの基準は分からない……。
「は、はい。なので、もし余りものとかあれば貸してもらえると助かります」
「じゃあ、おれの予備の服を貸してあげるよぉ。その代りぃ、ピアスの穴をあけさせ……」
「それ以上言ったら、また新人が辞めてしまいますよ。厨房の仕事が大変になってもいいなら別にいいですけど」
冷たい忠告に、桜季さんは不承不承といった風に言葉を飲み込んだ。
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