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第3章 35歳にして、感動の再会
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にっこりと笑顔で宣言され、僕の思考は固まった。
額に手を当てながら、もう片方の手の平をテツ君の前に向けた。
「……ちょっと待ってくれるかな。もう一度確認するよ」
「はい、どうぞ」
「ホストクラブって、若くて、かっこいい、男の子たちが、女の子を接客する仕事だよね?」
「はい、そうですよ」
大事なところは強調して確認したが、さきほどと同じく軽い調子で肯定が返ってきた。
「……どう考えても僕は“若い”にも“かっこいい”にも当てはまらないと思うんだけど」
どんなに好意的に僕の外見を評価しても、若くてかっこいいという言葉は出て来ないだろう。
そんな風に言う人がいたら、間違いなく詐欺師か歪んだ審美眼の持ち主だ。
「確かに、若くてかっこいいとは違いますけど、でも、幸助さんには人を惹きつける魅力があります!」
弾んだ声で力強く断言するテツ君に、さっきの発作の様なもので思考回路がやられたんじゃないかといよいよ心配になった。
「テツ君、どう考えても、三十五歳、無職、冴えないおっさんのホストなんて需要がないよ」
「大丈夫ですよ、ホスト始めたら無職じゃありませんよ」
「あ、そっか。……って、全く大丈夫じゃないよ! 三十五歳冴えないおっさんということには変わりないからね!? 無職がとれても焼け石に水状態だよ!?」
「……じゃあ、幸助さんはずっとあの男の家に住んで仕事探すつもりですか?」
じとり、と控えめな非難の視線を送られ、ハッとした。
そうだ、いつまでも晴仁に頼ってばかりではいけない!
人が一番くつろげる場所である我が家に、ずっと他人がいるのは、あの優しい晴仁でもさすがに煩わしいだろう。
言葉にはもちろん、顔にも出さないが、きっといつまでも仕事の決まる気配のない僕に、内心では辟易しているかもしれない。
僕はぐっと膝の上で拳を握った。
「……テツ君、本当に僕みたいなのでもいいの?」
「もちろんですよ! 幸助さんだからお願いしているんです」
力強く肯定され、僕は決心した。
「分かった。それなら、その話、ぜひお願いします」
頭を下げてそう言うと、テツ君が「よっしゃあぁぁ!!」と雄たけびにも近い声を上げ、ガッツポーズをしながら立ち上がった。
これには僕だけでなく、店中の人が驚き目を丸くしていたが、そんなことを気にする素振りも見せず、今にも鼻歌を歌出しそうな上機嫌で、ガシッ! と僕の手を取った。
「こちらこそよろしくお願いします! 絶対、あなたを魔王の城から連れ出しますから!」
まるで捕らわれのお姫様でも見るような目に、僕は曖昧に笑うしかできなかった。
額に手を当てながら、もう片方の手の平をテツ君の前に向けた。
「……ちょっと待ってくれるかな。もう一度確認するよ」
「はい、どうぞ」
「ホストクラブって、若くて、かっこいい、男の子たちが、女の子を接客する仕事だよね?」
「はい、そうですよ」
大事なところは強調して確認したが、さきほどと同じく軽い調子で肯定が返ってきた。
「……どう考えても僕は“若い”にも“かっこいい”にも当てはまらないと思うんだけど」
どんなに好意的に僕の外見を評価しても、若くてかっこいいという言葉は出て来ないだろう。
そんな風に言う人がいたら、間違いなく詐欺師か歪んだ審美眼の持ち主だ。
「確かに、若くてかっこいいとは違いますけど、でも、幸助さんには人を惹きつける魅力があります!」
弾んだ声で力強く断言するテツ君に、さっきの発作の様なもので思考回路がやられたんじゃないかといよいよ心配になった。
「テツ君、どう考えても、三十五歳、無職、冴えないおっさんのホストなんて需要がないよ」
「大丈夫ですよ、ホスト始めたら無職じゃありませんよ」
「あ、そっか。……って、全く大丈夫じゃないよ! 三十五歳冴えないおっさんということには変わりないからね!? 無職がとれても焼け石に水状態だよ!?」
「……じゃあ、幸助さんはずっとあの男の家に住んで仕事探すつもりですか?」
じとり、と控えめな非難の視線を送られ、ハッとした。
そうだ、いつまでも晴仁に頼ってばかりではいけない!
人が一番くつろげる場所である我が家に、ずっと他人がいるのは、あの優しい晴仁でもさすがに煩わしいだろう。
言葉にはもちろん、顔にも出さないが、きっといつまでも仕事の決まる気配のない僕に、内心では辟易しているかもしれない。
僕はぐっと膝の上で拳を握った。
「……テツ君、本当に僕みたいなのでもいいの?」
「もちろんですよ! 幸助さんだからお願いしているんです」
力強く肯定され、僕は決心した。
「分かった。それなら、その話、ぜひお願いします」
頭を下げてそう言うと、テツ君が「よっしゃあぁぁ!!」と雄たけびにも近い声を上げ、ガッツポーズをしながら立ち上がった。
これには僕だけでなく、店中の人が驚き目を丸くしていたが、そんなことを気にする素振りも見せず、今にも鼻歌を歌出しそうな上機嫌で、ガシッ! と僕の手を取った。
「こちらこそよろしくお願いします! 絶対、あなたを魔王の城から連れ出しますから!」
まるで捕らわれのお姫様でも見るような目に、僕は曖昧に笑うしかできなかった。
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