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第3章 35歳にして、感動の再会

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「あ、う、うん。そうしたいのは山々なんだけど、仕事がなかなか見つからなくてね……」

情けない実情を話すと、テツ君は一度僕の手を放し「うーん、そうですよね……」と言いながら椅子の背にもたれて目をつぶった。
顎に手を当て真剣に思案するテツ君に、なぜここまで必死に考えてくれるのか不思議に思っていると、彼が薄く目を開けた。
そして、

「もし、幸助さんがよかったらなんですけど、俺の店で働きませんか?」
「え!」

話の流れが突然で僕は言葉の意味をなかなか飲み込めずにいた。

「テツ君のお店ってどういうこと?」
「いや、実は俺、店を三つくらい経営してるんですよ。それで、よかったらそのどこかで働いてもらえないかなぁと思って」

僕は驚きのあまり口を開けて固まっていた。
しかし、通りで羽振りがいいはずだ、と同時に納得もできた。

「す、すごいね。三十ちょっとでお店を経営するなんて……」
「い、いえ、店って言っても小さな店ですからっ」

驚嘆する僕に、テツ君は謙虚に手を振って否定した。
だが、自分より年下の彼が経営をしているとは、本当にすごいとしか言いようがない。

「店ってどういうお店? 飲食店?」

興味と、もしかしたら雇ってもらえるかもしれないという期待から、気付けば身を乗り出していた。

「あ、はい、まぁ、飲食店っていうか酒が主なんですけどね」
「じゃあ居酒屋さん?」
「あー、まぁ、働く時間帯としては似てますけど、それよりもっと客と距離が近いというか……」
「あ! じゃあバーとか?」
「んー、そうっすね、まぁ近いっちゃ、近いですね」

先ほどから歯切れの悪い返答が続く彼に首を傾げていると、意を決したようにテツ君が大きな息を吐いた。

「正直に言いますね。俺が経営しているのは、ホストクラブです」

ほすとくらぶ、ほすとクラブ、ホストクラブ……――。
あまりに非日常な単語に一瞬、頭の動きが止まったが、またすぐに動き始めた。

「ああ! ホストクラブか! 確かにテツ君かっこいいもんね、人気ありそう!」
「いや、俺は経営の方なんで今はもう引退しているんです」
「そっか、そういえばお店を経営していて、それで俺に仕事を紹介してくれるって言う話だったね……、って、えええ! ホストクラブ!? 僕が!?」

ガタンっと今度は僕が立ちあがって、絶叫に近い声で叫んだ。

「幸助さん声デカイです。目立ってますよ」

苦笑しながらテツ君に指摘され、僕は慌てて腰を下ろした。

「ホ、ホストクラブって、あれだよね。若くてかっこいい男の子たちが女の子を接客する仕事だよね?」

僕の知るホストクラブと、彼の言うホストクラブが同じものなのか一応確認する。

「はい、そうです」
「ど、どう考えても僕が働けそうな職場ではなさそうだけど……。あ! もしかして厨房の仕事?」
「いえ、厨房は専門のスタッフがいるので」
「じゃあ……、清掃スタッフ?」
「いえ、それは業者が入ります」

じゃあ他にホストクラブで何の仕事があるというのだろうか。
自分にできる仕事が思い当たらず首を傾げていると、

「幸助さんにはホストとして接客をしてもらいます」
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