10 / 228
第3章 35歳にして、感動の再会
1
しおりを挟む寒風が街路樹を揺らす、平日の午後。
ビジネス街から少し離れた商店街は、買い物に来た主婦や暇を持て余すご老人ばかりで、働き盛りである三十代のスーツ姿の男というのは目を引く存在のようだ。
加えて、悲愴な表情で溜め息を吐いているのだ。
すれ違う人達が、訝しげに好奇の視線をこちらに送ってくるのも、無理はない。
僕も少しは表情を取り繕えばいいのだろうけれど、それができないほどに落ち込んでいた。
「また、落ちた……」
手に持った面接案内の紙に溜め息が滲む。
いや、落ちた、という表現は少し違うかもしれない。
そもそも面接にも漕ぎ着けないのだ。
このところ不運が続いており、履歴書などの紛失が相次いでいた。
最近になってようやく履歴書が紛失しなくなったと思ったら、今度は履歴書を送ることができても、なぜか面接前に「申し訳ございませんが、求人の募集は終了させて頂きました」との断りの連絡がくるのだった。
今日面接予定だった会社は、面接直前でいきなり断られてしまった。
訳が分からず受付の前で茫然と立ち尽くしていたのは、つい一時間ほど前の話だ。
まるで悪魔が裏で糸を引いているかのように、近頃は不運が連続していた。
就活に限った話ではない。
定価で買ったものが次の店に行くと安売りをされていたり、自分の買い物が終わった直後にタイムセールが始まったり、自転車かごに大量の荷物を何とか時間を掛けて入れたら突風が吹いて倒れてしまいドミノ倒しの様に他の自転車も倒れてしまったり……。
今日の朝なんか、テーブルの脚に小指をぶつけ、地味にダメージを受けた。
これはもしかして……――
「お兄さん、貴方、憑いていますよ」
10
お気に入りに追加
737
あなたにおすすめの小説
もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
病んでる愛はゲームの世界で充分です!
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。
幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。
席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。
田山の明日はどっちだ!!
ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。
BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。
11/21
本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる