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第3章 35歳にして、感動の再会
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しおりを挟む寒風が街路樹を揺らす、平日の午後。
ビジネス街から少し離れた商店街は、買い物に来た主婦や暇を持て余すご老人ばかりで、働き盛りである三十代のスーツ姿の男というのは目を引く存在のようだ。
加えて、悲愴な表情で溜め息を吐いているのだ。
すれ違う人達が、訝しげに好奇の視線をこちらに送ってくるのも、無理はない。
僕も少しは表情を取り繕えばいいのだろうけれど、それができないほどに落ち込んでいた。
「また、落ちた……」
手に持った面接案内の紙に溜め息が滲む。
いや、落ちた、という表現は少し違うかもしれない。
そもそも面接にも漕ぎ着けないのだ。
このところ不運が続いており、履歴書などの紛失が相次いでいた。
最近になってようやく履歴書が紛失しなくなったと思ったら、今度は履歴書を送ることができても、なぜか面接前に「申し訳ございませんが、求人の募集は終了させて頂きました」との断りの連絡がくるのだった。
今日面接予定だった会社は、面接直前でいきなり断られてしまった。
訳が分からず受付の前で茫然と立ち尽くしていたのは、つい一時間ほど前の話だ。
まるで悪魔が裏で糸を引いているかのように、近頃は不運が連続していた。
就活に限った話ではない。
定価で買ったものが次の店に行くと安売りをされていたり、自分の買い物が終わった直後にタイムセールが始まったり、自転車かごに大量の荷物を何とか時間を掛けて入れたら突風が吹いて倒れてしまいドミノ倒しの様に他の自転車も倒れてしまったり……。
今日の朝なんか、テーブルの脚に小指をぶつけ、地味にダメージを受けた。
これはもしかして……――
「お兄さん、貴方、憑いていますよ」
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