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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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ひとしきりイチャつくと、男が俺の方に向き直った。
そしてまるで今まで目の前で繰り広げられていたこちらが恥ずかしくなるほどのイチャつきなどなかったかのように、穏やかな笑みを向けてきた。
「すまない、紹介が遅れたね。私はオリヴァー・ベレスフォード、この家の当主だ。ソウシ君のことはいろいろと息子から聞いているよ」
言いながらオリヴァーさんが俺へ手を差し出す。
重度の妄想癖の息子から聞いたその内容について詳しく聞きたいところだが、聞けば怒りのツッコミと修正は避けられないだろう。
それよりもこの場は穏便にことを進めて、いち早くご両親への挨拶というふざけた茶番を切り上げることが先決だ。
俺は差し出されたオリヴァーさんの手を取った。
「ど、どうも……、よろしくお願いします」
「ははは、そんなに緊張しなくていい。我が家だと思ってゆっくり寛いでくれ」
いや、この豪邸に微塵も我が家と思える要素がないんですけど!
だが、善意しか感じられない微笑みを浮かべて俺の手をしっかりと握り返すオリヴァーさんにそんなこと、もちろん言えるはずがなかった。
穏やかで優しい物腰だが、しっかりと威厳を感じられるその風格は、本人は無自覚なのだろうが相手に有無を言わせない圧を感じさせる。
「そうそう、ここはもうソウちゃんのお家なんだからね! 気遣いなんて無用なんだから」
「異世界に戻る方法が見つかるまでここを我が家だと思ってくれていいよ」
「あらやだ、異世界に戻る方法が見つかってもここはソウちゃんのお家よ!」
「ははは、そうだな」
う……! ま、眩しい……!
優しさと善意で満ちた二人の言葉と笑顔に、俺は思わず目をつむりそうになった。
彼らの言葉が軽い社交辞令などではなく本心からだということは、見て明らかだった。
この豪邸ほどの広さの心の余裕を感じる言葉や態度。これはあれだ……。この人たち、陽キャの人種、しかも卑小な心を持たない上流陽キャだ……!
超レアだがたまにいるのだ、こういう陽キャが。
恐らく俺のように人生の中で人に対して死ねとか思ったこともなく、むしろ嫌いという感情すら抱いたことすらないんじゃないかと思わせるほど清廉潔白な人間。
しかも普通の陽キャと違って俺のような陰キャを見下さない、いやそもそも陰キャ、陽キャなんて概念すらなく誰とでも分け隔て無く接する陽キャ中の陽キャ……、それが上流陽キャだ。
厄介なのは、普通の陽キャと違って性格がすこぶるにいいことだ。
陰キャを見下す普通の陽キャであれば、俺もケッとつばを吐いて背を向けられるのだが、上流陽キャだとそうもいかない。
そしてまるで今まで目の前で繰り広げられていたこちらが恥ずかしくなるほどのイチャつきなどなかったかのように、穏やかな笑みを向けてきた。
「すまない、紹介が遅れたね。私はオリヴァー・ベレスフォード、この家の当主だ。ソウシ君のことはいろいろと息子から聞いているよ」
言いながらオリヴァーさんが俺へ手を差し出す。
重度の妄想癖の息子から聞いたその内容について詳しく聞きたいところだが、聞けば怒りのツッコミと修正は避けられないだろう。
それよりもこの場は穏便にことを進めて、いち早くご両親への挨拶というふざけた茶番を切り上げることが先決だ。
俺は差し出されたオリヴァーさんの手を取った。
「ど、どうも……、よろしくお願いします」
「ははは、そんなに緊張しなくていい。我が家だと思ってゆっくり寛いでくれ」
いや、この豪邸に微塵も我が家と思える要素がないんですけど!
だが、善意しか感じられない微笑みを浮かべて俺の手をしっかりと握り返すオリヴァーさんにそんなこと、もちろん言えるはずがなかった。
穏やかで優しい物腰だが、しっかりと威厳を感じられるその風格は、本人は無自覚なのだろうが相手に有無を言わせない圧を感じさせる。
「そうそう、ここはもうソウちゃんのお家なんだからね! 気遣いなんて無用なんだから」
「異世界に戻る方法が見つかるまでここを我が家だと思ってくれていいよ」
「あらやだ、異世界に戻る方法が見つかってもここはソウちゃんのお家よ!」
「ははは、そうだな」
う……! ま、眩しい……!
優しさと善意で満ちた二人の言葉と笑顔に、俺は思わず目をつむりそうになった。
彼らの言葉が軽い社交辞令などではなく本心からだということは、見て明らかだった。
この豪邸ほどの広さの心の余裕を感じる言葉や態度。これはあれだ……。この人たち、陽キャの人種、しかも卑小な心を持たない上流陽キャだ……!
超レアだがたまにいるのだ、こういう陽キャが。
恐らく俺のように人生の中で人に対して死ねとか思ったこともなく、むしろ嫌いという感情すら抱いたことすらないんじゃないかと思わせるほど清廉潔白な人間。
しかも普通の陽キャと違って俺のような陰キャを見下さない、いやそもそも陰キャ、陽キャなんて概念すらなく誰とでも分け隔て無く接する陽キャ中の陽キャ……、それが上流陽キャだ。
厄介なのは、普通の陽キャと違って性格がすこぶるにいいことだ。
陰キャを見下す普通の陽キャであれば、俺もケッとつばを吐いて背を向けられるのだが、上流陽キャだとそうもいかない。
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