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第3章 異世界で溺愛剣士の婚約者!?
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そもそも恋人でもないし、と言いたいところだが、言ったところで奴の鋼より固い妄想を今更どうこうすることはできないのであえてスルーする。
「……そうだな、ソウシの魅力は俺だけが分かっていればいいことだな。安心してくれ。俺はソウシの名前だけで十分魅力を感じるし欲情すらする」
「自分の名前に欲情する人間の存在のどこに安心ができると思うわけ!?」
安心どころか恐怖だよ!
「ご歓談中申し訳ございません。仲が良いのはよろしいのですが、旦那様たちが首を長くしてお待ちです」
エリンさんが微笑ましそうに目元を和らげて、俺たちの会話に入ってきた。
いや、全然微笑ましさなんて微塵もないけどね!?
というか、恐怖に震え上がる俺のどこに微笑ましさを感じた!?
「……そうだったな。すまない。ついソウシと話していると楽しくて二人だけの世界に入ってしまう」
「いや、その世界にいるのお前だけだから!」
ドゥーガルドの閉じられた妄想の世界に足を踏み込んだ覚えはない。
「ふふふ、ソウシ様はやはり照れ屋ですね」
「いや、照れ屋とかそんなんじゃ……ああっ、もういいや! それより早く中に入れてください!」
ツッコミ疲れがMAXになった俺は、自棄になって部屋に早く案内するよう言った。
「承知致しました。少々お待ちください」
エリンさんはそう言って扉に向き直ると、扉をノックした。
「はい」
姿を見なくとも姿勢のよさを感じるしっかりした男の声が中から返ってきた。
「エリンでございます。ドゥーガルド様とご婚約者のソウシ様をお連れしました」
「分かった。今、開ける」
返事と共に扉が開かれると、白髪のいかにも出来る執事といった感じの男が俺たちを出迎えた。
男は俺と目が合うとにこりと優しく微笑んだ。
「お初目にかかります。ソウシ様。私はこの家の執事のレイモンド・ノーマンと申します。ソウシ様のお噂はドゥーガルド様より伺っております」
「は、はは……」
噂の内容が気になるところだが、知ったところで修正は難しいだろうし、無駄に怒りを覚えるだけだ。だからあえて聞かない。
「それでは、こちらへどうぞ」
そう言ってレイモンドさんは部屋の中へ俺たちを招き入れた。
よしっ! さっさとこんな茶番を終わらせて、王都に帰るぞ!
そんな不謹慎な意気込みをして部屋の中を進むと、中央の豪奢なソファの前でレイモンドさんが足を止めた。
ソファには穏やかそうだが威厳のある笑みを浮かべた壮年の男と、彼の腕にもたれる金髪碧眼の美女が座っていた。
う、うわぁ……! すげぇ美人……!
俺のいた世界のどの女優より美人だと断言できるほどのその美貌に思わず見とれる。
すると、俺と目が合った美女はキラキラと目を輝かせて立ち上がった。
「やっと来た……! もうっ、待ちくたびれたんだから!」
嬉しそうに言いながらこちらに駆け寄ってくる美女に、俺は理解が追いつかずたじろいだ。
だがそんな俺など気にすることなく、美女はそのまま飛びつくようにギュッと勢いよく抱きしめてきた。
女の子と触れ合うどころか会話さえままならない非モテ男子の代表格とも言える俺には、美女からの抱擁はあまりにも刺激的で、半ばパニック状態になった。
「……そうだな、ソウシの魅力は俺だけが分かっていればいいことだな。安心してくれ。俺はソウシの名前だけで十分魅力を感じるし欲情すらする」
「自分の名前に欲情する人間の存在のどこに安心ができると思うわけ!?」
安心どころか恐怖だよ!
「ご歓談中申し訳ございません。仲が良いのはよろしいのですが、旦那様たちが首を長くしてお待ちです」
エリンさんが微笑ましそうに目元を和らげて、俺たちの会話に入ってきた。
いや、全然微笑ましさなんて微塵もないけどね!?
というか、恐怖に震え上がる俺のどこに微笑ましさを感じた!?
「……そうだったな。すまない。ついソウシと話していると楽しくて二人だけの世界に入ってしまう」
「いや、その世界にいるのお前だけだから!」
ドゥーガルドの閉じられた妄想の世界に足を踏み込んだ覚えはない。
「ふふふ、ソウシ様はやはり照れ屋ですね」
「いや、照れ屋とかそんなんじゃ……ああっ、もういいや! それより早く中に入れてください!」
ツッコミ疲れがMAXになった俺は、自棄になって部屋に早く案内するよう言った。
「承知致しました。少々お待ちください」
エリンさんはそう言って扉に向き直ると、扉をノックした。
「はい」
姿を見なくとも姿勢のよさを感じるしっかりした男の声が中から返ってきた。
「エリンでございます。ドゥーガルド様とご婚約者のソウシ様をお連れしました」
「分かった。今、開ける」
返事と共に扉が開かれると、白髪のいかにも出来る執事といった感じの男が俺たちを出迎えた。
男は俺と目が合うとにこりと優しく微笑んだ。
「お初目にかかります。ソウシ様。私はこの家の執事のレイモンド・ノーマンと申します。ソウシ様のお噂はドゥーガルド様より伺っております」
「は、はは……」
噂の内容が気になるところだが、知ったところで修正は難しいだろうし、無駄に怒りを覚えるだけだ。だからあえて聞かない。
「それでは、こちらへどうぞ」
そう言ってレイモンドさんは部屋の中へ俺たちを招き入れた。
よしっ! さっさとこんな茶番を終わらせて、王都に帰るぞ!
そんな不謹慎な意気込みをして部屋の中を進むと、中央の豪奢なソファの前でレイモンドさんが足を止めた。
ソファには穏やかそうだが威厳のある笑みを浮かべた壮年の男と、彼の腕にもたれる金髪碧眼の美女が座っていた。
う、うわぁ……! すげぇ美人……!
俺のいた世界のどの女優より美人だと断言できるほどのその美貌に思わず見とれる。
すると、俺と目が合った美女はキラキラと目を輝かせて立ち上がった。
「やっと来た……! もうっ、待ちくたびれたんだから!」
嬉しそうに言いながらこちらに駆け寄ってくる美女に、俺は理解が追いつかずたじろいだ。
だがそんな俺など気にすることなく、美女はそのまま飛びつくようにギュッと勢いよく抱きしめてきた。
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